天を破りて・後B08
『なんだそのことか。なぁんも問題ないぜ副隊長ぉ! 副隊長の事情は知れたし、そこには納得できる理由もあった! それに、副隊長は普段から挨拶してくれたり、嫌味や嫌がらせもせず、優しく接してくれたじゃねぇか! ドイツ支部で嫌がらせしてきたクソ野郎どもとは違う。そんなグラディオスが、エース副隊長がいる空間が大好きだった! んで今、エース副隊長が戻ってきて、宇宙で最高なトリガーハッピーができるなら、もうなにも言うこたぁねぇ! ッシャア、オラァッ! ミサイル撃つ度に興奮してくるぜぇ! 楽しくて仕方ねぇ! きっと副隊長がいるからだろうなぁあああああああ!!』
相変わらずやかましいトリガーハッピー野郎だこと。
でも、これでいい。エキサイトしているアレンの無双は続く。ミサイルも後衛のガリウスHが継続して届けてくれる算段だ。数が揃っているから、クスドのダイレクトサポートがここでも光る。
『俺がいるから楽しいか。そりゃ俺のセリフだよ。お前がまだ生きててくれて、よかった』
『ならお互いにハッピーじゃねぇか! ほら副隊長! 前が空いた! 行けぇえええ!』
『よし、ここは任せる。遠慮なくミサイルを浴びせてやりな』
『言われるまでもねぇぜぇええええええええええ!!』
アレンはまた強くなった。それは俺が認めている。
確かにミサイルの集中砲火で進路が拓かれた。ならば、ここはアレンに任せる。
アンノウンの布陣は、前衛にBやCという小型を展開し、EやKという大型を後衛に控えさせていた。アレンなら小型を潰せるだろう。グラディランド・フルブラスターも前進し、直掩のガリウスHとともに援護射撃を繰り出している。すぐにではないが、いずれ敵陣に旗艦ごと食い込む。
リヴァイヴが推進する。そこでソータとアークは己が敵を見定めて俺から離れた。それでいい。これは展開した友軍のフォローをしつつ、俺たち主力が前進する作戦だ。いつまでも団子になっていては、少数で奮闘している仲間が危険だ。ひとりに固執している余裕はない。
しばらく進むと、次の戦場が見えた。
そこには───とんでもないことをしている3機がいた。
キルカの十号機、ナリヤの十一号機、マイアの四号機だ。
可変機となった彼女たちのガリウスGは、常にファイターモードで狭い敵陣のなかをギリギリを見極めて飛翔するという、実にテクニカルなもので、しかもかなりの速度を出しながら───原作序盤でヒナを殺した悪魔の名を冠するDタイプと追いかけっこをしていたのだ。
Dタイプはドリルの形状をした、外見どおり貫通力に優れた厄介なアンノウンだ。高速で飛翔するが旋回力には劣る。それが戦闘機のパイロットからガリウスに鞍替えした彼女たちのテクニックにより、なんと見事に翻弄されていたのだ。
『よう、すげぇ愉快なことしてんな。………俺も混ぜろよ!』
リヴァイヴがドッグファイトのなかに潜り込む。
ショートライフルの下のブレードを、Dタイプの螺旋のラインに沿って滑り込ませると、まるでリンゴの皮むきのように表皮が剥がれて、コアが露出する。2発の発砲でコアを撃ち抜いた。
『あら副隊長。私たちのマニューバについて行けるのかしらねぇ』
『混ぜろと豪語するのはいいけど、本番前に本気出すことになるかもねぇ』
『辛くなったら途中で離れてもらってもいいわ。私たち、これでもこの道長いしねぇ』
相変わらずの「ねぇねぇ3姉妹」だ。最初はサキュバスみたいな印象だったけど、今はそれにも慣れて、むしろ耳にすることで安心さえ覚える。
『たまにはいいだろ。リードしてくれよ。合わせる』
確かにキルカたちは長年の経験が活かされて、可変機となったガリウスGを、ファイターモードに至ってはシドウよりも使いこなしている。実績だけではない。パラメータの数値がそれを物語る。
現に今、Dタイプという悪魔が7体もいるというのに、周囲の他のアンノウンを回避しながらもDタイプを翻弄しているのだから。実に恐ろしいハイマニューバである。俺もそのなかに混じってDタイプをいなしてみてわかる。これまでキルカたちはグラディオスの甲板で支援射撃や艦の防衛くらいしかできなかったが、やはり間違いだ。アニメでも出番はそこまで多くなかったが、こうして彼女たちの得意分野を与えてやることで、確かな実績を出せる実力者であったと後悔している。
地上専用のジャケットは使えない。ゆえに宇宙専用のジャケットに換装。イーグルジャケットから、ファルコンジャケットとなっていた。重力圏や空力抵抗も、なにもかも違う環境だというのに、キルカたちはきっと数秒で適応したに違いない。
『やるじゃねぇか。この俺が、リヴァイヴが出遅れるなんて』
経験の差がものを言う。キルカたちのガリウスGを追尾しようとしても、どうしてもコンマ秒単位で遅れてしまい、もう3秒ほどの差が開いていた。それは次の動きを予想してショートカットすることで辛うじて埋めているも、いずれ限界が訪れる。ナリヤの言うように本番前に本気を出す結果となりかねない。
『気にしなくていいわ。これが私たちの得意分野だもの』
キルカが笑いながら述べる。戦闘機から人型へと変形し、失速するとリヴァイヴを避けながら反転。追尾していたDタイプにロングソードを異なる角度から突き立てる。1体倒すとすぐに変形。
翻弄しつつも確実に撃破し、ヒットアンドアウェーで数を減らす。そのなかでもDタイプという悪魔を相手取る実力者。
もうここに、俺が支援できる場所はないだろう。踏み入る隙もない。
『行っていいわよ副隊長。あのドリル全部倒したら、次の宙域でチマチマと数を減らしていくわ』
『私たちのやることは、いつもと変わらないもの』
『副隊長は、もっとヤバイ敵を相手にしなくちゃならないし。温存するべきよ』
この俺がこのザマじゃな。マイアたちにはすぐに見抜かれる。
『じゃ、ここは任せる。死ぬなよ』
『了解!』
Dタイプをまた串刺しにしていくキルカたちを尻目に、俺は次の宙域へと進む。
敵陣の3割ほどの宙域。GタイプとFタイプがいた。遠距離と近距離。後衛と前衛。その複合部隊は100体と揃っている。
そのなかをキャノンの砲弾みたく推進する3機がいた。
ハーモンの九号機。コウの十二号機。ハナの三号機だ。
いよいよナンバーズのなかでも一桁台となる。年齢も若く、しかしシドウから一人前のパイロットとして認められ、長く修羅場を潜った猛者たちが、機体とジャケットの性能にものを言わせた強引な戦術で敵陣を突破しようとしている。
『退けやゴミクズどもがぁああああああああ!!』
『副隊長の血路を開く!!』
『その噂の副隊長を後方に視認した! どんぴしゃで来たじゃないか、エース! 私の前に入れ!』
タイタンジャケットという重厚な装甲を纏い、Fタイプの照射も、Gタイプの拳も跳ね返すハーモンとコウ。九号機と十二号機が揃って突撃し、ハナはその後ろにいた。
重厚な装甲で敵の攻撃を跳ね返すのは昔から行っていたフォーメーションである。盾となって味方を守るのだが、それを反転させて自らを弾丸とする戦術は、やはりクスドならではのものだ。しかしハナも負けていない。ハーモンとコウの後ろを守っている。反転し、常に僚機の速度に合わせて前進ではなく、後退している。背後から来るGタイプを狙撃していたのだ。
『なかなかお目にかかれない組み合わせじゃないか。それなら、乗せてもらおうかな』
ハナから言われたように、俺は3機の間に挟まるように割り込む。
前はハーモンとコウ、後ろはハナに守られて、敵陣を4割りほど進んだ。恐るべき速度だった。
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