天を破りて・後B03
宇宙に散りばめられた星々のように輝く銀色の光を、照射されたビームが駆け抜けて滅ぼしていく。ミルキーウェイなんて甘いものではない。異次元に等しいダブルリアクターシステムを4基揃えたことで火力を増し、4門の主砲に直結させた頭のおかしい機構によって実現したのだ。
人類が望んで生み出したテクニック、そしてタクティクスを嘲笑うかのような、原作にはないイカれた砲撃。
減らしたところでまた増えたアンノウンだが、4門のレイライトブラスターによって、また多くの数が減る。
このためにコーネリアの艦隊は密集して後退した。レイライトブラスターは左右に分断したアンノウンの陣形を撃ち抜く。グラディランドの腹部に備えたレイライトブラスター2門も、砲口の角度調整を行うことができるので、左右に撃ちわけられたのだ。
ゆえに唯一の逃げ場はグラディランド・フルブラスターの正面となる。またより後退することで逃げ道を確保できる。コーネリアはクランドを信用していた。短いやり取りですべてを理解できる優秀な頭脳がある。向かい合って主砲を使うという、尋常ではない戦術を選択したとしても、コーネリアは躊躇いも疑いもせずに従う。
「アンノウン、半減しました!」
「主砲を使っても半分か。レイライトブラスター、再チャージ急げ! 半減した戦力が勢いを取り戻す前に、より数を減らしXタイプを炙り出す!」
ここで一気に畳み込むつもりだ。
数では未だ劣るが趨勢はややこちらに傾いた。偶然のような曖昧なものではなく、意図して作り出したこの好機を逃す馬鹿はいない。
「主砲、ダブルリアクターシステムでエネルギー再供給完了まで60!」
「ならば、ミチザネ隊を前に出せ! 1分後に退却させろ!」
グラディランド・フルブラスターは、主砲の再チャージまで1分は動けなくなる。レイライトリアクターから供給される膨大なエネルギーのほぼすべてを主砲のために収束しているようなものだ。
それを防衛するために各宙域に展開していたガリウスG部隊が、号令がかかりグラディランド・フルブラスターの前方に集合する。激しい撃ち合いとなった。
1分という短いようで長く感じる時間。コンマ秒単位で判断しなければならないパイロットからすれば、なおのことストレスが蓄積するだろう。
「ダブルリアクターシステム、フル稼働。エネルギー充填まで、あと20」
やっと40秒が経過した。見ているこちらまで冷静さを欠くところだ。
いや、まだ別の目的があるのでは───
「あと10」
間違えるな。主砲が重要ではない。
迫る必要なタイミングで、俺のすべてをぶつける。それが先決だ。
「あと5───」
《小此木ッ!!》
《おうッ!!》
来た。ビーツが脳内チップで伝達する。
タイミングはバッチリだ。脳内チップなら0.01秒単位で思考と実行が可能になる。
次の瞬間、主砲を撃とうとしていたクランドが息を吸い込んで───目の前が暗転した。俺も例外なくその症状に陥る。
絶望を与えるXタイプの感応現象だ。
この宙域にいる人間の意識を暗転させ、肉体から剥離させてひとつにさせる。
それのなにが問題かと言えば、意識が肉体を放棄することで、パイロットやクルーは一切の操作ができなくなるのだ。ある意味で睡眠、いや催眠に近いか。
心理学的に例えれば、集合的無意識に集められたとでも言えばいいのだろうか。全人類が意識して到達することはない領域に強引に引き寄せられた。
原作ではグラディオスクルーとアリスランドクルーが集められ、混乱に陥ったなかで、アリスランドのクルーがごっそりと消える。被弾して死亡したと誰かが喚くと恐怖の坩堝に叩き落とされた。さらにグラディオスクルーも少しずつ消えていく。
嫌だ。出して。と喚くなかで、エースの近くにいたアレン、キルカ、ナリヤ、マイアが消える。あっさりと。なんの前触れもなく。
それにブチギレたソータが覚醒を駆使してなんとか打ち破るのだが、犠牲が大きすぎた。グラディオスも無事ではなかった。
「な、なんだここ───」
ソータの声がする。
目が見えるわけではない。暗闇のなかにいるみたいだ。でもすべての存在を認知できる。パイロット、アスティオールクルー、コーネリアの艦隊。ビーツとシーナとライラ。
さて、そろそろやりますか。
アンノウンが反撃に転じようと、Xタイプがほくそ笑みながら指揮を執ろうとして───
《させるかッ!! テンションぶち上げろおおおおおおおおッッッ!! 感応現象には、感応現象だぁああああああああああああッッッ!!》
そう。これが俺が用意した奇策。感応現象に対抗するために、こちらも感応現象を用意した。
脳内チップは作用する。そもそも、俺とビーツは脳内チップ持ちだ。己の内側に潜り他人と繋がることなど、互いが近くにいれば茶飯事なのだ。
その感覚は誰よりも優れていた。ビーツが報せたタイミングで、俺がトリガーを引く。
なにをしたかって?
簡単だよ。
ロボットアニメだけではない。バトルを題材にしたアニメ、あるいは終盤でなにか目標に向かってラストスパートに突入する展開があるアニメ。
その多くで、主人公と仲間たちの奮闘の最中、なにが流れる?
そう。オープニングテーマ曲!
まず第1クールのイントロを流す。
すると、たまらずザワッ───と命の輝きが、動き出す。
《こ、これは………ッ!!》
「すげぇなお前………このタイミングで………「天破のグラディオス」のオープニングテーマ流すか!! すっげぇテンションぶち上げられるじゃねぇかよ!!」
ソータたち、クランドたち、コーネリアたちには理解できなかっただろう。
けれども俺とビーツとシーナにはわかる。この曲の偉大さを。「天破のグラディオス」のオープニング曲といえば第1クールと第2クールも用意されており、どちらも実力と評判を兼ね備えた大物アーティストが手掛けた。しかも第2クールのはそこに同格の別アーティストが参入し、デュエットする。ファンなら必ずカラオケで熱唱する。
どちらもオリコンランキングの上位にランクイン。アニメを知らない者もカラオケで歌うくらい人気となった。
第1クールのオープニングテーマ曲は軽快なリズムから始まり、徐々に熱を帯びていく。俺好みの重低音が増えていき、しっかりとしたベースと激しいギターが重なる。サビのメロディと歌詞は印象に残りやすく、また映像も素晴らしい。まさに「天破のグラディオス」の顔である。一度聞けば何回でも聴きたくなる曲なのだ。事実、俺は何回も聞いた。通学時なんて大音量にして。
《馬鹿な………なぜこの曲を持っている………いや、作ったのか? そうか………AIに作らせたのか!》
《俺に作曲する能力なんてないからな。でも何十万回と聞いた曲だぜ? 最初はハミングする程度で骨を作り、各パートで肉付けし補正。最後に歌詞を歌わせる。俺のイメージどおりにな!》
《こんなことを口にすることなど俺の痴態に等しいが、あえて述べてやる。小此木………お前は天才だ!!》
ビーツがはしゃぎながら称賛してきた。普段なら、なんか変なものでも食ったのかと疑うところだけど、ビーツ───楠木美壱もまた、生粋の「天破のグラディオス」のファンである。オープニングテーマを聞いて興奮しないわけではない。
風前の灯みたいな弱々しかった火が、ガソリンを注がれた直後のように燃え盛る。
ビーツは俺のようにあと数秒で命が尽きるところで強制蘇生されたわけではないが、苦痛を押し殺して限界まで脳内チップを駆使した結果、衰弱していた。それがオープニングテーマ曲を聴いた途端に元気になる。
劣勢のなかで希望を見出した瞬間に流れるオープニングテーマこそ燃えるものはない。
それがわかっていたからこそ、二度と聞けないと諦めていたからこそ、これほどまでに俺たちの心を揺さぶり、3人の感情が爆発したのだ。
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最終回とかで流れるOPって神展開だと思うんです。
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