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天を破りて・後B01

 みんな、ここにいる。


 俺に追いついて、俺とともに戦ってくれている。


 その事実に、どれだけ俺の心が救われたことか。


 クランドに言うつもりもなかった、原作にあったソータの発言を愚痴のように語ってしまったのは失態だし、恥ずべきことだ。みんなを裏切ってしまった俺に、そんな甘えは許されない。


 ところが、俺の発言が全員に伝播すると、まるで着火剤のような役割を果たすのだった。


『エー先輩はもうひとりじゃない! 私が絶対にさせない! 私だけじゃなくて、みんなを助けてくれたエー先輩だけに痛い思いはさせない!』


『ひとりだけ死ぬのなんて許さない………みんな助けてくれたんだから、最後に自分ひとりだけ死んで大団円なんて、出来すぎた物語の最終話みたいな展開になんてさせない!』


『エー先輩の罪は私たちを欺いたことじゃないわぁ。そんなの慣れたもの。重大なのは、残されるひとの絶望を知っているはずなのに、私たちにそれを押し付けようとしたことよぉ。………本当、エー先輩はなにもわかっちゃいないんだから。エー先輩がいない世界なんて、本当に無意味なのに。それもわからない悪いワンちゃんは、この戦いが終わったら徹底的に躾けてあげるわぁああああああっ!!』


 こんな感じで、ヒナ、シェリー、ユリンがさっきからエキサイトしている。脳内チップ越しに、ガンガンと頭を揺らすほどのシャウトが響く。それが彼女たちの強さだ。ここまで強くなった。生き残ったことで、より高次元の成長を遂げた。


 生きても死んでも地獄ってのは変わらない………いや違うな。罰を受けて当然のことをした。その自覚はある。特にユリンの言葉は身に染みた。


 でも、俺が生き残ることを彼女たちは強く望んでいる。これ以上となく。


 許さないことをしたのに、受け入れて許そうとしてくれているのだ。


 一緒にいたい。俺だって死にたくない。生きたい。


 どんな罰だって受ける。そして、生きる。


「───っ」


「彼女たちの愛は重いな」


 金属化が和らいだ双眸から、涙が流れる。


 横目で見ていたクランドが苦笑を浮かべた。クランドがヒナたちの発言を聞いているかは不明だが、きっと俺のリアクションを見て察しやがった。


「前方、Lタイプ出現───これは、増援を送った直後に、五号機に狙撃されて消滅しました!」


「流石だな。………ガリウスH部隊に伝令! 五号機のフォローを! 以後、五号機の狙撃を優先! ガリウスH部隊は五号機を守らせろ! これ以上の敵の増援を許すな!」


「了解! ………前方、さらに10体のEタイプ出現! 内蔵しているCタイプを射出! さらに数が増えます!」


「特殊弾発射! 新たなEタイプへ向け、あの射出機を兼ねている顎に、新開発された硬化剤を撃ち込め!」


 クランドの指示は冴えている。クスドが考案したフェイズも、より数字を増して敵の首魁にチェックメイトをかけようとしていた。


 増援の到着により数で再び劣勢に陥るも、硬化剤を詰めた弾頭の誘導弾を放ち、Eタイプの口に撃ち込む。すると樹脂のような泡が広がり、数秒で塊となってEタイプの口腔を塞いだ。驚くべきはアンノウンが発する高温に耐える素材であること。研究に研究を重ねなければ、あんなものは作れない。


 口を塞がれたEタイプは内蔵しているアンノウンや火炎を吐けず、たまらずワープに切り替える。


「サーモグラフィー起動! Eタイプ周辺の空間が高温化しているはずだ! 特殊弾の弾頭を焼夷弾に変更! シーナが言っていた掟(・)破(・)り(・)だ! アンノウンのワープを阻止せよ!」


 なるほど。それが狙いか。


 シーナもいい仕事をする。前世で見た考察と、俺の実験で実証した結果を伝えたところ、自らも転生者であることを明かした現状、勝利するためならと掟破りだろうが構わずに実用するべくクランドやクスドに伝授したのだろう。


 クランドもクスドも信用するには、それなりの度胸が必要だっただろうに。いや、半年もあったのだから、ドイツ支部に襲撃を仕掛けたアンノウンで実験したのかもしれない。


「懐かしいな、エース。プロトタイプガリウスGでサフラビオロスを脱出したお前は、非武装の状態でアンノウンを迎撃するため、この方法を用いた。肩部の姿勢制御用のスラスターを使って、ワープ直前のアンノウンを阻止した。当時はカイドウ含め、私もとても悩まされたぞ。プロトタイプガリウスGの損傷と、お前の途切れ途切れの発言の謎。だが今ならわかる。これはとても有効だな。そして転生者であるお前は、私たちにこの現象の理由を問われても、うまく答えられなかった」


『………ええ、まぁ。実際にそれを言ったら絶対に正気を疑われますし。精神がぶっ壊れてると診断されて、メディカルルームから外に出されずペンタリブルで降ろされてたでしょうし』


『前世で見たなどとは、とてもではないが言えないものな。………あの時はお前のことが、とても奇妙で、どこか恐ろしかった。17歳の小僧とは思えぬ言動とメンタル。意味不明な行動に比例して挙げる功績と信頼。毎秒人望を厚くしていく生き様。………覚えているか? 私が決起する学徒兵に差別的な発言をしたことを。あれもきみの知る世界でもあったそうだな」


『そうですね。ありましたよ。そのせいで大人と子供の間に、さらに軋轢が生まれた。俺はそれもどうにかしたかった』


「結果的に、どうにかされてしまったな。………それだけではない。私は意図して子供たちに差別的な言動をして、自分を悪者にしてでも浮かれる彼らに、今一度自分と、自分の置かれている環境を再考して欲しかった。それで被害や悲劇が量産されては意味がなかったが。………お前がいてくれたお陰で、被害も悲劇も出なかった。そればかりか、傷付こうとする私の心も救済してくれたな。………お前には感謝している。これ以上となくだ。万の感謝の言葉でも足りないくらいだ。だから………死ぬな。ここにいろ。エース」


『………はい』


 泣かせようとしてくれてんのか? このツンデレ艦長!!


 泣くぞ? ええんか? 泣くぞ俺は。あ、泣いてたわ。


「ふっ。………よし、グラディランド、前進! 最前線にて注目を集める! コーネリア少将の艦隊はどうだ!」


「後退したことにより戦線復帰可能との旨を受けています!」


「ならば後詰めを依頼! 敵増援を含め、全体を両断! 挟撃されることになるが、同士討ちを誘発させろ! しかし全体の速度は微塵も緩めるな!」


 大胆不敵な作戦だ。クスドめ。また腕を上げたな。多勢に無勢という敵を相手に、敵陣を縦断するなんて集中砲火を浴びそうで普通馬鹿げているけど、速度を上げることで回避率を向上させ、左右の敵に同軍を撃たせるなんて考えつくはずもない。


 そしてそれを実現してしまうのがグラディランド。ビーツの事前情報があったからこそ、クスドも半年間を無駄にせずに済んだのか。


 原作ではクスドがいないから、より消極的に攻めるしかなかった。参謀がいるとやはり違う。敵の数と質が高次元になろうとも、クスドがいれば臆さずに飛び込んでいける。クランドを筆頭に、全員がクスドを信用しているから可能にしているのだ。


「奥にいるというXタイプの位置は!」


「増援が到着した影響で、レーダーでも追いきれません! もっと数を減らさなければ」


「ならば敵勢力を分断後、主砲にて勢力図を書き換える! アーレスに通達! いつでも主砲を使えるよう、コントロールをアスティオールの火器管制室に繋げろ!」


 こりゃすげぇや。グラディランドは腹部のグラディオスとアリスランドの接合部に主砲を組み込んだが、アスティオールが合体して、より破壊力を高めた主砲が使えるというわけだ。


 これに興奮しないファンはいない。


 だがこの時、あの悪魔も着々と手段を講じている。


 だから俺は、その時を見逃さないためにも、戦闘を仲間たちに任せて、反撃手段を講じるのだった。


たくさんのブクマ、リアクションありがとうございます!

PVも久々に高くなっていてテンションマックス!

こりゃあ………最終話近くになったら、一気にブッパするしかないですかねぇ!

今から準備します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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