天を破りて・後A10
「ヂッ!!」
『わぁ、しーな。おおきなしたうちだねぇ』
これが舌打ちをせずにいられるかってんだ。
腕の端末からは絶えず仲間たちの声が聞こえる。
すると私の理想郷から遠ざかるような展開となっていく。
「ソータきゅんは………ソータきゅんは、シドウ隊長とイチャイチャして………攻めのシドウ隊長、受けのソータきゅんって感じで、多い被さったシドウ隊長に顔を赤らめて快楽に溺れていく顔がぁ………大好きだったのにぃ!」
『ごめんねしーな。なにいってるのかわからない』
「チクショウ! この世界はとことん私の敵ばかり増えていく! ひとつくらい受け入れろよ! ………なに見てんだテメェェェエエエエエエ!!」
ついにライラからも見放され、孤立無援となったストレスを、たまたま正面にいたIタイプと視線が合った───気がしたので、八つ当たりすることにした。
本来Jタイプと同様の最終決戦仕様のIタイプ。そんなものに八つ当たりできるのは、私くらいだろう。
右腕を伸ばして尖鋭化すると、Iタイプと7合ほど打ち合い、ライラの優れた動体視力が動きを見切るとフェイントを交えて背後に回る。そこからは私の仕事だ。
「私に追いつけ多様性の時代!! ガチホモが世界を征服してなにが悪い!! 同性愛上等!! 人間が受け入れられないなら、せめてテメェらが私を理解しろアンノウンどもぉぉおおおおお!!」
背後からIタイプの臀部を、ライラの下半身で、突く。接触部から注入する、同性愛の素晴らしき性の営みのイメージ。Iタイプはビクンと大きく体を跳ねるも、なんと耐えやがった。
「素晴らしいなこの固体! 私のイメージに追いつこうとしやがった! ならもういっぱぁああああつッ!!」
『とうこんちゅうにゅぅうううう!!』
1発で砕けぬのなら、何度でも突くまで。
3発ほどぶち込むと、Iタイプはせっかく見せた根性虚しく、尽き果てるように崩壊してしまった。
「チッ。せっかく私の理想郷を理解できる固体だと期待したのに。とんだ根性無しめ。どこかにいないのか? 私を楽しませ、興奮させるような敵はよぉぉぉぉおおおお!!」
『しーな! あのおおきいの、こんじょーありそう!』
「ッシャア! 今度はKタイプに教育的指導の時間だぜぇええええええ!!」
ある意味、私は暴走しているのかもしれない。
だって、私の周囲には誰もいないんだもん。
世界最強のパイロットと称されたソータだって、アイリというメスがパートナーとして組んでいるし。
それに比べて私は、出撃前からシドウからなにも言われていない。「好きに動け。お前はそれが一番だろう」だってさ。失礼しちゃうよな。別に、シドウが私と組むことになったって、邪魔はしないし、なんならIタイプにしたように背後から尻を突こうとは考えないし。ロボット相手にそれをやってもつまらないし。
けれど、不服をいつまでも根に持つ私ではない。誰と組まなくても平気なのはわかっていたし、仮に誰かと組んでも、私の戦闘スタイルに同調できるとは思わなかった。ソータであろうと、アークであろうと。
誰もが手数で攻めるなか、私は触れさえすれば勝てる一撃必殺の切り札を多用している。それを踏まえるとハーモンやコウと組んでもよかったのだが、アンノウン化したライラと、タイタンジャケットを装備したガリウスGでは、相性が悪いのだ。
だから、シドウの判断は最終的に正しかった。
「うぉぉおおおおおおお!! 私を受け入れないもの、すべてが敵だぁああああああ!!」
『ぶちおかすぞてめぇ!!』
私のテンションに合わせるライラ。
Eタイプをも上回る超弩級サイズのKタイプの背後から強襲し、尻───まあ人間と同じ仕組みではないのは知っているけど、とにかく背後の両足の付け根辺りに狙いを定め、剣のように尖らせた右腕で刺突した。
「肛門処女いただきぃぃぃいいいいいいい!!」
『ふぁんふぁーれぇ!!』
本当にそこが肛門なはずがないのだが、人間でいう尻の穴がある場所に右腕を突き立て、私がこれまで描いてきたBL聖書を10枚ほどぶち込む。
400メートル級の巨体のくせに、なんて耐久力の無さなのだろう。私は目の前で崩壊していくKタイプを見ながら、ほとほと呆れ果てた。
「弱い………弱すぎる!! クソが! どいつもこいつも見掛け倒しだな! もっとかかって来いやぁあああああああ!!」
『とは言うがな、それはお前が規格外だからだ。誰しもお前のようにやれると思うな。あと言葉が下品すぎる。コーネリア少将は、先程からお前の発言を聞いて驚いていたが、爆笑して指揮にならんと、向こうの副艦長が来ている。そろそろ自重しろよシーナ』
この抱えた鬱憤をどう晴らすべきかと悩み、アンノウンを挑発してみた。ライラを通せば、アンノウンの言語で通訳してくれるらしい。
するとアンノウンからリアクションが返るよりも先に、シドウから通信が入って釘を刺されてしまった。
「………すみません」
『まったく。気を付けろよ』
「はーい」
と、まぁこんな感じで、一応反省している素振りをして、説教を躱す。こんな非常時だ。全体を見なければならないシドウも長々とした説教をしている暇はないが、私とてそんなものを聞くつもりもない。
前世で学んだ心理学のようなものだ。上司から叱られたら、とにかく謝る。悪いと思っていなくても反省をアピールする。激務なら注意で終わる。とりあえずこのスタンスを一貫すれば、最短で不愉快な時間をやり過ごすことができる。
「さーて。次の獲物を探すぞぉ」
『しーな。さけばないの?』
「馬鹿言え。あの程度の注意で私の手綱を握れると思うなよ? もちろんシャウトするに決まってるだろ! 私はもう誰にも止められはしないんだ! ふははははははは!」
『じゃあ、俺が止めてやるよ。このド腐れ淫乱ハムスターめ』
「ぁあ゛ん?」
また誰かから通信が入った。右腕を見る。ミチザネ隊の副隊長のアイコンが表示されていた。
本人の声に似せた電子音声ではあるが、久々に耳にする懐かしい声だった。
「おやおやぁ………これはこれは。性欲に勝てなかった、我らがカス副隊長サマであらせますかぁ? 私のお陰で延命できたくせに、随分な言いようですなぁ? ぇえ? おい。テメェ恩人に向かって言うべき言葉か? それは」
不思議と、今日の私はかなり上機嫌だった。
半年振りだからかな。エースとこうして罵り合うのも。
『黙って聞いてたけど、さっきから汚ぇ言葉をオンパレードしやがって。ある意味、声優の無法地帯より酷いワードチョイスだったぞ。なにが、私に追いつけ多様性の時代、だよ。そんなのがあってたまるか』
「あっ、テメェ今、多様性を重視する世界を冒涜しやがったな! そういうのって叩かれやすいんだからな! 差別すんじゃねぇぞテメェ!」
『無制限な多様性があってたまるか。差別じゃなくて区別だよ。とにかくだ。いくらお前が汚い言葉で強くなるつったって、それでライラが汚染されちまったら元も子もねぇんだよ。それくらい理解しやがれ』
まったく。死に体になっても口だけは減らないんだから。
でも不思議だな。エースの声を聞いていたら、不思議と昂っていた精神が、少しだけ落ち着いて冷静に戻ることができた。
『それはさておき、相談がある。あと数分でXタイプが動くだろう。対策を講じる。さもなくば犠牲者が出ることになる。俺は、どうしてもそれを止めたいんだ』
「………わーってんよ。お前の犠牲者ゼロの狂人プランに私も賛成したんだ。で、なにをすればいい?」
更新遅れて申し訳ありません。たくさんのブクマ、評価、たくさんのリアクションありがとうございます!
気付けば総合評価が2100を突破していました! ありがとうございます!
次回よりついに後半戦です。完結まで、あと少し………でもやることたくさん!
作者からのお願いです。
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