天を破りて・後A06
『おやっさん。俺と一緒に戦ってくれませんか? 気の滅入りそうな声を聞いてちゃ、こっちまでテンションが下がってしまいます。やっぱり、おやっさんはいつもの大声でないとね』
『はっ………言ってくれるじゃねぇかクソガキが。ああ、そうかい。いつもの馬鹿みたいにドでけぇ声がお望みかい。ならやってやるよ。そのせいでテメェの脳みそぶっ壊れても知らねえからなぁ!!』
『お、いい感じですよ。おやっさん。そう来なくちゃ』
『怒鳴られてんのに喜ぶとか、テメェはとんだド変態だなぁ。いつからそうなった?』
『最初からですよ』
『ガッハハハハ! そういやそうだったなぁ! じゃあ断言しておいてやるぜ。おいエース。その小さく開いた目が、これからとんでもなく大きく開くことになるだろうぜ。ちなみに俺は、製造している時にゃ、めっちゃ心躍ったからなぁ!』
なんだか、これだけでブリッジの空気が和み始める。
カイドウの大声を聞いた途端、トーマスは「うひぃ」と肩をすくめていたが、途中から周りのオペレーターとともにクスクスと笑っていた。しかも「ド変態だって。まぁ肉欲に負けて女の子3人と関係を持っちゃうカスだしね」とか言いやがった。それがツボに入ったのか、オペレーターの女性たちが爆笑する。あとで覚えていやがれ。
「コホン! カイドウ。そこら辺にしておけ。もうパイロットたちも到着するだろう。彼らが搭乗し次第、こちらも動く。コーネリア少将の艦隊に通達。グラディランドならびアスティオール、数分で戦闘に加勢する!」
咳払いしたクランドによって、無駄話になりかけた通信が切れる。
いよいよだ。俺が全力で練り上げたプランと、ビーツの改良プランが動き出す。
脳内チップでパイロットチームの所在を探る。来た時と同じ道を戻るだけだが、やはりこのサイズと無重力空間ゆえに、ドイツ支部出身の数名が移動に苦労していた。特にシーナ。思えば、彼女にとってもこれが初めてとなる宇宙空間の体験だ。ここまで来るのに期間があり、訓練はしたのだろうが、それでも苦戦している。ライラは割と平気なようだ。アンノウンだしな。「ウギー!」と叫んで宙を平泳ぎしているシーナをよくフォローしている。
なんとかグラディランドを抜けて、アスティオールとの間まで接続されているチューブまでたどり着くと、ベルトコンベヤー状の移動補助器を掴んで高速で駆け抜ける。
16人が30秒ほどでアスティオールに戻ると、チューブの接続が解除。アスティオールに回収されていく。
「パイロットチーム、全員アスティオールに到着。チューブも回収完了。グラディランド、いつでも発進できます」
「ダブルリアクターシステム、出力10パーセントまで低下。現状、主砲側のレイライトリアクターを使用するしかありません」
「ブリッジ内の生命維持装置は確保。しかしグラディランドの戦力は30パーセントまで低下」
「よし。すべて想定内だ。微速前進。アスティオールにも伝達。グラディランドの動きをトレース開始。また、戦線に突入する前に艦載機の発進命令。計画の実行中の発進はできないからな。コーネリア少将が維持している最前線に到達する前に、アスティオールとコネクトする!」
感動、再び。
クランドの指揮を隣で聞ける日が来るとは思わなかった。
俺はもう動けないので艦長席に居座るしかない。副艦長席に座るクランド。副艦長席に座っていたクスドは参謀として座っていた、ブリッジの奥にあるシートまで移動し、作戦のフェイズを伝達している。
「さぁ行くぞ! 我々の最終決戦だ! この戦いを制し、世界を守れ!」
もう誰も止められないと思われた、原作の敵総数の25倍という馬鹿げた数値に、一度は心が折れたが、クランドがいて、クスドがいて、ソータたちパイロットがいる。なんて心強い。
折れた心が、少しずつではあるが、修復を始めている。感動と興奮。この気持ちは、もう誰にも止められない。
「全艦、トランスフォーメーション! フルリアクターシステム始動!」
「了解! フルリアクターシステム始動します。フェイズ開始!」
「グラディランドの速度を維持。アスティオール、グラディランドと相対速度合わせ!」
「グラディランド、腰部コネクター出現! アスティオール、グラディランドとの設置、5秒前!」
クランドの指示でオペレーターたちが報告する。
そうそう、俺はこれを聞きたかった。いつも戦いになると、別のことに集中していたから、発進シークエンスで聞ける専門用語などを聞き逃してガッカリしていたのだ。
「艦長! やはりグラディオス側のコネクターがありません!」
「構わん! 強引にでも取り付け!」
『そのコネクターとやらの場所は───なるほど。背部か。ならばメンテナンス用のブースがある。そこに捻じ込め。現在、グラディオス改には極限の人員削減で、自動メンテナンスマシーンが飛び交っている。内部でのケーブルの接続なら私が請け負う。システム側も任せておけ。そちらのハルモニという高性能AIともすでに同期は完了している』
ケイスマンの意志も猛威を発揮する。元々、魔改造したこの艦は俺だけしか乗らない予定だったから、トーマスとふたりになっても人員が足りないので、故障すれば人員不足が原因で動けなくなってしまう。それを解消するために導入されたのが、自動メンテナンスマシーンだ。1メートルほどの様々なマシーンが飛び交い、艦内だろうが外だろうが、ケイスマンの意志が操縦して整備と修理を行う仕組みとなっている。
そこでハッチや壁を突き破ってでも接続したアスティオール側のコネクターが現れれば、隙間が空いた装甲の修理と固定、艦内から引っ張ってきた延長ケーブルで強引に接続するつもりだろう。浪漫の欠片もない合体だが、今はこうするしかない。
コネクターのないグラディオス側にアスティオールが強引に接続すると、ゴゴン! と物凄い音が鳴る。敵の砲撃が直撃したような振動も伝わり、ブリッジにいたクルーは「わあっ!」と悲鳴を上げた。
『無茶しますねぇ。まったく』
「こうでもしなければ勝てんだろう! 愛着のある古巣に穴を空けるのは忍びないが、勝たなければ我々の存続も危うい! ならば手段は選んでなどいられるはずがない。………フェイズ進行そのまま!」
そう。クランドの言うとおり。勝たなければ意味がない。
それからアスティオールはグラディランドの背中に取り付くと、そこを中心にいくつかのパーツに分裂していく。微速前進しながらも変形・分離・合体をしていくロボットもの好きの男の子が大好きなシークエンスを実行していく。
グラディランドに、まだ先の合体した姿があるとは俺も思っていなかった。2隻を合体させることだって驚愕する展開なのに、3隻合体を実現させるとは。
グラディランドの艦内の状況を分析していく。元のダブルリアクターシステムには自動メンテナンスマシーンが応急修理を実行していたが、とあるフェイズに入ると、瞬時に飛び退いてしまう。
確かそこは腹部と腰部の境、つまりグラディオス改とアリスランドが接続した場所に近い。アリスランド側のハッチが開くと、新たな冷却装置が挿入されたあと、さらに大型レイライトリアクターが挿入され、比較的まだまともに動く2基のシングルだったレイライトリアクターと接続。新たなダブルリアクターシステムを実現させた。
『新たに2基の大型レイライトリアクターを挿入………けどこれじゃ、さらに質量と重量が増したこの艦を動かすには………』
「それなら心配ない。このアスティオールには、大型レイライトリアクターが6基積まれている。アスティオール側のレイライトリアクター4基も、このフェイズでダブルリアクターシステム化が完了した。つまり計4基のダブルリアクターシステムで運用が可能ということだ!」
グラディランドの倍以上のパワーゲインだと?
なんだそりゃ………ぶっ飛んでいるにもほどがある。
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