↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

621/651

天を破りて・後A05

 攻勢に出るとはいえ、グラディランドを前に出してどうするというのだろう。


 クランドが着席すると、駆けつけたクルーが所定のポジションに座る。グラディオスのブリッジが、いつもの光景に戻った。


「クランド艦長。お言葉ですが、グラディランドは損傷が激しく、今すぐに戦線に復帰できるとは思えません」


 トーマスが述べる。


 意識がはっきりとしてきた俺も、グラディランドの損傷具合を調査する。ビーツの無茶でしかなかった突撃の影響で、内部が不安定になっていた。


『エース考案のダブルリアクターシステムと、シーナ考案のツインリアクターシステムにより、グラディランドはこの巨体を維持し、そして激しく動く動力源を確保することができた。しかし今、ふたつのシステムに決して無視できぬダメージが入っている。不安定なエネルギー供給であることに違いない。無理に動かそうとすれば、暴発………これは私がなんとしても制御して防ぐが、さりとて供給の制限をかけてしまえばコンデンサー内のエネルギーも枯渇し、いつ緊急停止するかもわからない。クランド艦長とやら。それでもこのグラディランドを動かすのかね?』


「当然だ。エースが命を懸け、そして奇抜な案により完成したグラディオスとアリスランドの合体艦だ。その戦力たるや、特殊強襲特装艦の設計者であっても、決してたどり着かなかった結論だろう。しかしな、ケイスマン。我々がなにも手段を持たず、こうしてグラディランドのブリッジに居座っているとでも考えているのか?」


『どういうことだ?』


 うわぁ。なんかクランドが平然とケイスマンの意志と会話してる。


 ハルモニの代わりにグラディランドを制御している高性能な人工知能として認知し、その存在をモーリスにより教えられていたのだろうが、これはこれで違和感がある。


 作戦についてはいつものように強気なクランドの説得により、ケイスマンの意志が圧されていた。これは珍しい。


 そうだとしても、クランドの言う手段というのが気掛かりだ。


 まるで、あたかも事前に俺のダブルリアクターシステムを知っていたような言動だった。


 いや、これは多分、事前に知らされていたのか。思い出してみれば、クランドたちがアスティオールに搭乗し、合同のクルーとなったのも、奇跡と言えば奇跡だが、それは決して偶然などではない。


 仕組まれていたのだ。


 すべては俺を驚かせるためとかいう、ふざけた理由にすべてを注いだクズでカスで下衆なライバルによって。


《おい………ビーツ。お前、もしかしてこの計画のことまで》


《なんだ。やっと気付いたか。俺の第3のプランを》


 脳内チップの会話に切り替える。


 カメラはアリスランドのブリッジにリンク。そのブリッジにも、大勢がいた。確かエマという副艦長が泣きながらビーツに縋っている。それでいて周囲にいる女全員がビーツの愛人。今さらだけど、よくあんな人数を相手にして死なないもんだ。


 クズでカスで下衆だけど、アリスランドでは艦長として信頼されてたってことか。アークは別として。


「エース。トーマス。そしてケイスマン。お前たちを驚かせてやろう。お前たちがグラディオスを改造している間に、南極支部でもそうした動きがあった。それはアリスランドだけではない。我々がここまで来るために乗ってきた、アスティオールとて例(・)外(・)で(・)は(・)な(・)い(・)!」


『なんと………これは』


 クランドが俺宛てに送ったメッセージに、大容量のファイルがあった。ケイスマンによって解凍され、概要を一瞬で読み取ると、重要な部分のみを俺とトーマスに送信する。


 ついに明かされる魔改造計画の最後の全貌。


 それはまさか、アスティオールは巨大化された程度では済まなかったということ。


 超弩級の艦には謎の分割線があり、脳内で立体感したイメージを作ってみると、なんとも心躍るような図が完成する。


 同時にビーツが無茶をした理由も判明した。このシステムの発案者はビーツだ。俺の原案を改良し、大規模な計画にしていやがった。


 アスティオールが到着する時間を計算し、ついでにコーネリアの艦隊も引き連れていると予想し、グラディランドのダメージコントロールをしながらアンノウンの群れの注目を集めた。ビーツが発案したプロジェクトに支障を出さずしてすべてを実行するために。


 さもなくば、大型レイライトリアクターに大きな負荷をかける必要はない。堅実に砲撃戦を行い、数を減らしていく定石を完全無視したくらいだ。癪なことに、今のところすべてビーツの思惑どおりに運んでいると言ってもいいのだろう。


「パイロットチームはすぐにアスティオールに戻れ。補給も済んでいるだろう。我々とともに出撃を」


「了解しました。すぐに出ます。………エース。ここで休んでいろ。大丈夫だ。俺たちもすぐに帰るからな」


 クランドに敬礼するシドウを筆頭に、パイロットたちがブリッジから走り去る。全員、俺の肩に触れてから「またな」と挨拶していった。


『では艦長。特等席で見物させていただきますよ』


「ああ。堪能するといい。きっと気に入る───おっと。なんだ。あっちのハンガーから………ああ、カイドウか。メインモニターに出すぞ」


 駆けつけた増援の頼もしい言葉と、発進の号令を待つ。だがそれは、もうしばらくかかるだろう。オペレーターたちがグラディランドの管制を務めるため、どういった仕組みなのかを理解するため、キーボードを叩いてパネルに表示されている詳細を熟読している。


 それにパイロットチームの移動も考慮すれば、あと数分は必要だ。


 その間に、クランド宛てに届いた通信を、メインモニターに繋げて応答する。


「どうしたカイドウ」


『どうしたもこうしたもねぇよ! そろそろ行動に移す時だってのに、いつまで経ってもこっちに連絡のひとつも寄越さねえ! ハルモニが言うにゃ、エースは一命をとりとめたとか? なら、俺にも一言くらい言わせろよ』


「ああ、すまん。そうだったな。配慮に欠けていた。今、そちらにパイロットたちが戻っている。それまでエースと確認を取るといい」


『ったく………ハァ。エースよぉ………お前、マジで地獄を歩いちまったんだな』


 グラディランドのハンガーは、はっきり言ってもう正常に機能しないし、アスティオールの大きさからして相当な規模のハンガーを有しているのだろう。ゆえにクランドはクスドと数人のオペレーターをアスティオールからグラディランドに戻したのだ。グラディランドはかなり狭くなった通路の他、変形後はもうブリッジしかまともに機能しないこともある。


 よってカイドウはアスティオールに待機、補給のために戻った艦載機の整備と補給に専念した。その仕事こそカイドウの本領だからでもある。


 メインモニター越しに見たカイドウは、なんともいえない表情をしながら、変わり果てた俺を見て、また泣きそうになっていた。


『………例え、ここが地獄だったとしても、救うために蜘蛛の糸のようなエスケープゲートを差し伸べてくれたじゃないですか。おやっさんがそこまで気にする必要はない………って言うのも酷ですかね。でもまぁ、これだけは言えます。これは俺が選んだことです。後悔はしていませんよ。明日を生きれるだけの命をもらったし、延命措置だってこれから可能だって言うし』


 目は動かせても、喉まで回復はしていない。電子音声で応えを返す。


『馬鹿ヤロ………それは結果論だ。無理矢理にでもペンタリブルに置いてくればよかったって、何度後悔したと思ってやがる』


『そうだとしても、です。シーナが言っていた原作の第7話でレイライトブラスターの暴発事故を、俺の体ひとつで受け止めていた時が、確かに始まりの日のひとつになったのかもしれない。あるいはターニングポイント。俺はあの日からこうなるかもしれないって覚悟をしてました。でも実際は、みんなの協力があって、もっと良い未来になったけど。だからおやっさん。その愚痴と説教はあとで、俺がまた目を覚ましたらいくらでも聞きますから。今は勝つことだけに集中しましょうや』


 カイドウはどうしても、気にするなと励ましても気にしてしまう、責任感の強いひとだ。いやそれはアーレスもクランドも同じなのだが。


 けれども、これから始まる戦いの前に、それは余計な感情と言える。


 カイドウには元気な声をしてもらいたい。叱責されていたとしても。その声を聞くだけで俺は嬉しくなるのだ。


ブクマ、リアクションありがとうございます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。