天を破りて・後A02
この最終決戦は原作にないイベントが盛り沢山だった。
敵陣営がそうだった。強くなった人類に適応し、急激に進化を遂げたような印象だ。
俺とビーツといえば、グラディオスとアリスランドを魔改造して、全男子が一度は憧れたであろう「分離」と「変形」と「合体」を体現させたグラディランドを投入した。
しかし、残念ながらそれだけでは勝てなかった。完全に俺の力不足である。強すぎる新しい能力を前に、俺の体と寿命が保てなかった。
が、そんな俺を嘲笑うビーツの策で、新たな勝機が舞い込んだ。
クランド率いる三番艦を筆頭に、コーネリアの艦隊まで助太刀に参上した。
それだけでも鳥肌が立ち、胸が熱くなる展開だと思う。
けど───それだけではなかった。
これは多分、俺を驚かせるためにクランドたちをここまで導いたビーツ自身でさえ、予想外だったと思うくらいに。
だって、これは………
『エー先輩をボコッたクソ野郎ども! ここからは俺たちが相手だぜぇっ!』
『そのひとを、俺の兄のように見殺しにしてたまるかっ!!』
まずはハーモンとコウ。ハーモンは青。コウは緑。瞳が淡く輝いてエフェクトを放っていた。
『んはははあ! 愛が、愛が止まらないわぁあああああ!!』
狂愛を迸らせるユリン。紫の瞳がエフェクトを纏う。
『俺はもう迷わない。そのためにここに来た。今行くぞエースッ!!』
シドウまでもがそうだった。オレンジ色の瞳が輝く。
なんてことだ。ゾクゾクする。
これはつまり、ナンバーズ前半、第1クールから登場した主要パイロット、そしてアークを加えた、9人が原作にない同時覚醒を使用したのである。
これは、なんていう奇跡だろう。
俺の肌を粟立たせる強烈なプレッシャーたちがグラディランドを追い抜き、アンノウンの群れに突撃を開始。
覚醒は個々のパイロットの集中力、あるいは特性を高める。
作中最強の名を手にしたソータがそうであったように。
覚醒とは、まぁロボットアニメによくある特殊能力で、原因や仕組みは解明されていないが、とにかく限られた者しか使えないはず。それが、なにがいったいどうなってか、9人も使えるようになってしまったのか。俺にはまったくわからない。
『ミチザネ隊がアンノウンを撃破している内に、グラディオスとアリスランドを後退させる! 減速しながらアンカー射出! 接続し次第、スラスターを逆噴射! 牽引しろ!』
『コーネリア少将! 前線はしばらくお願いします! こちらも第2陣を放ちます。そちらの指揮下に加えてください!』
『承知した。そのデカブツを制御し、戻って来い。まぁ………再会の時間くらいは稼いでやるさ』
到着する艦隊までもがグラディランドを追い抜く。その頃にはアスティオールが放ったアンカーが接続されていて、より後方に牽引されていた。
そうか。俺はまたみんなに会えるのか。という安心が心に浸透する。その一方で、こんな姿を見られたくないという不安もあった。俺はもう、まともな人間とは呼べないだろうから。
だがそんな俺の不安を他所に、すぐ左をエメラルドグリーンの色をした見慣れないアンノウンが、鬼畜な文言を叫んで通過した。
『オラァ、クソアンノウンども! テメェらに、高校生の頃自宅でエロいBL本を描いていた時、親父が入ってきてなんとも言えない顔をして去った、私の心境がわかるかぁあああああああ!!』
『ぶちおかすぞてめぇ!!』
いや………え?
なに、あれ………え?
なんか知った声が、ふたつ聞こえたんだけど?
でもなんか、おかしくね?
なんでライラがアンノウン化して、しかもそのなかからあの頭のおかしいハムスターの声が聞こえるんだ?
ライラがアンノウン化したまでなら、ギリギリ理解できる。エメラルドグリーンの細身の女性然としたシルエットと言う、原作にない姿こそ、ライラの本当の姿というか、ライラが望んだ姿なのかもしれない。
突撃したライラがKタイプに触れる。体格差があり過ぎるのに『私のBL聖書109項目に触れて、イチャラブ男子の美しさを知れ!』とシーナが狂ったように叫ぶと、消えた。
いや頭おかしいだろ。
と愕然としていると、今度は手近のEタイプに触れて『10ページ分流し込んでやるけど、簡単に死んでくれるなよぉぉおおおお!』と叫ぶと、龍の顔面が発狂したみたいに歪んで弾けて消えた。
目視はもちろん、レーダーからも消失する。
《ハルモニ。あの緑色のアンノウンは、なんだ? 本当にアンノウンなのか?》
『イェス。シビリアン・ライラは正式にパイロット科に配属され、度し難いことですがアンノウンに変貌しております。そしてアンノウン・ライラのなかに搭乗するのは、同じくパイロット科に転属となったパイロット・シーナです』
《ふたりが………パイロット? 艦長が許したのか。人間とアンノウンの共存のモデルケースにするつもりってか。いやでも、なんでライラは………アンノウンを瞬殺できるんだ?》
『詳細は不明。私でも原因を理解できません。しかしパイロット・シーナの証言においては、自らのイメージをアンノウンに注入することで自己崩壊を招き、消滅させるとのこと』
《妄想………》
シーナの妄想といったら、ひとつしかない。
ボーイズラブをこよなく愛するシーナの趣味だ。言動にもあるとおり。もし俺が転生していなかったら、グラディオスの名前のある男性陣すべてをその道に突き落とすという願望を持っていたくらいだ。だから当初、俺は酷く恨まれたものだ。
その同性愛のイメージをアンノウンに注入する? それで自己崩壊を招く?
イカレているとしか、表現ができない。
もし、まだ会話できるようなら、詰問したい。いったいどういう原理なのかと。
『ミチザネ隊は後退し、アスティオールに合流してください。また、アスティオールよりアリスランド隊出撃。コーネリア少将の指揮下に入り、戦線を維持しアンノウンの進撃を阻止してください』
この声はクスドだ。
これだけの大部隊の参謀を務められるんだもんな。やっぱり、今回で一番成長したのはクスドだ。
グラディランドがアスティオールに牽引され下げられると、コーネリアの艦隊が前に出て展開する。
またアスティオールからガリウスHが出撃。なるほど。500メートルを超える超弩級の艦だ。グラディオスクルーだけでは動かせない。そこで、ドイツ支部で拘束していたアリスランドクルーを解放し、アスティオールのクルーに採用したということか。
きっとクランドの采配だ。
大したもんだよなぁ。
やっぱり………俺とは、違う。
『父さん』
『モーリスか』
『やはりこの合体艦の制御をしていたのは、父さんでしたか。グラディオスには、アリスランドとは違って、制御や補助をするAIは外されていましたので不思議に思っていたんです』
アスティオールから通信が入る。俺宛てだったので、応じたケイスマンの意志との会話はそのまま耳にすることができた。
『我々はエース少尉とビーツ艦長を助けに来ました。ハッチの接続と、コントロールの譲渡を要請します。従っていただけますね?』
『………そうする他、ないだろうな』
俺の判断は聞かないってか。ビーツが割り込んで来そうだったけど、珍しく無反応。
………なんだ。あいつも、それなりに限界だったのか。
それなら俺も、少しだけ休ませてもらうかな。
眠くはないのだけど、先程からなぜか意識を保つことが難しくなってきて───
リアクションありがとうございます!
やはり、どんな時でもシーナは安定していますね。書いていて面白いです。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!




