天を破りて・前B10
これでアンノウンとの戦争が終わる。
それはあくまで、俺の認識であった。
けどそれは違った。俺は勘違いして、なにひとつとして理解していなかった。
『前方に多数の熱源が出現! これは………』
『虫ケラが使う戦術などたかが知れていると思っていたが………こちらを上回るか!』
ケイスマンの意志でさえ驚愕を禁じ得ず、ビーツは絶句したあとに猛る。
半透明のカーテンの向こう側にいたのは、まさか1000体を超える数のEタイプと、無数の他のタイプ。その背後には50体以上のKタイプが控えていた。
最悪だ。これが絶望を与える戦術。戦局は、こちらの手の内を晒した状態で振り出しに戻ってしまった。
『そうか………増援を透明化するフィールドにワープさせ展開する。それがLタイプの正体か!』
ビーツが副砲を発射する。正確なエイムで、群れの頭上にいた小さな銀色の光を撃ち抜いた。あれがLタイプ。もしあれが原作に登場し、奮闘したグラディオスとアリスランドに敵勢力をおかわりしていたら、それこそ勝ち目がなかっただろう。
「そんな………まだあんなのを相手にするだなんて」
トーマスでさえ士気が下がる。吐き気を催すような地獄絵図であることには違いない。
そんななかで俺は、ついに目的のものをはっけんする。
群れの奥。一際強い光を放つ存在。
その形状、原作最終回で見た容姿となにひとつとして変わりない。
「いたぞ………ついに引き摺り出してやった。Xタイプだ」
『その代償は大きかったがな。Xタイプが、2万を超えるアンノウンを従えて戦術を使う。断言してもいい。これは俺にも予想ができなかったし、勝機がより薄くなった』
「弱気になるなんてお前らしくねぇな。やることはなにひとつとして変わらねぇだろ。とにかく敵の数を減らす。それからXタイプをボコる。Lタイプはお前が倒したから、これ以上の増援も無いだろ。まだなにひとつとして終わってねぇし、レイライトブラスターがしばらく使えないだけでグラディランドは無傷も同然だ。お前がやらねぇなら俺がやる。そこでしばらく指咥えて見てな。………カウンターシステム、起動!!」
結局のところ、手の内を見せたのは俺たちだけではない。
アンノウン側もそうだ。存在するはずのなかったLタイプの具体と能力、Xタイプの居場所、それがすべてはっきりした。そして俺とビーツはXタイプの能力も知っている。振り出しに戻ったとはいえ、差がついたわけではない。
それなら、まだやり様はいくらでもある。
そのために必要だったのが、俺の体内にある異物、新ナノマシンを起動。グラディランドの上半身、グラディオス改と感覚をリンク。その後、下半身のアリスランドにも接続。
「う………ぐっ」
左腕でパキパキと骨のみならず肉が鳴る。肉体の金属化現象だ。
これまで必死になって使用することを踏み止まり、生き永らえてきたけど、もうその必要はない。
寿命の短縮は、なにもグラディランドにインターフェースを用いて神経接続することだけではない。むしろ神経接続程度なら1時間は死なないだろう。
本当に寿命を減らし、糧とするのがカウンターシステム。
これまでは一部が脳内チップとリンクし、キャパシティの減少とともにカウンターシステムにセーフティがかかる仕様となっていたが、脳内チップへの過負荷はグラディオス改のコンピューターと繋がることで、キャパシティの減少はほぼゼロとなった。
セーフティが存在しない、無二の力を発揮する自殺行為である。
その対価として、もうすでに左腕が動かない。肩と指先は辛うじて動くが、肘が終わった。骨まで金属化した。まだ動かしていないのに、起動しただけでこれだ。
「Xタイプも含め、数分でぶっ倒す! 俺の命が尽きるまでが勝負だ!!」
グラディランドが急激な加速をかける。
アンノウンの群れも呼応するように動く。第一陣がDタイプ。後続が無数。とんでもない波状攻撃。
ビームシールドを回転させて弾く。それでも止まらない。
第二陣のGタイプが突撃したが、ビーム機銃やレールガン、ビームキャノンで迎撃。寄せ付けない。
大きな波にグラディランドが食いこんだ。
第三、第四と攻撃が来る。
『貴様だけに良い格好をさせるか! 火器管制のコントロールを寄越せ! 背後からDタイプが迫っている。それも含めて俺が撃つ! 貴様は前だけ見ていろ! 出来損ない!』
「最初からそうしろよ負け犬!」
俺とビーツはいがみ合いながらも、再び手を組んだ。
カウンターシステムの具体はビーツも知っている。というか、最初の被験者だからな。
ビーツは主人公勢に並ぶために、失った右目に機械の義眼を埋め込んだ。俺が喪失した右腕と同じように、おそらくナノマシンを統御し、脳細胞を強制的に活性化させる仕組みだ。それに対抗するために作ったのが、カウンターシステム。
リヴァイヴに使った新素材もまた、ナノマシンを配合した液体金属である。その制御のみならず、覚醒したビーツの行動を予想し対応するのだ。ある意味で未来視の能力である。
1秒先の未来を見ながら、俺は確実にそれより先の未来を失いつつ、敵を滅ぼす。
「ぐぅ、あ、ぅああああああああああ!!」
全身でパキパキと音が鳴る。確実に金属化が進行し、グラディランドを群れの向こうへと確実に進める。
「あと少し………」
Kタイプが壁のように立ち塞がる。グラディランドが両腕に展開したビームシールドをカットソーのごとく回転させながら振り回し、巨体を薙ぎ倒す。
「あと、少し………」
Fタイプが集中砲火を浴びせる。両腕を揃え、レイライトリアクターから得たエネルギーを防御に回す。揃えたビームシールドが傘のように広がり、500メートルという巨体の前方を覆った。外側の攻撃は通さないが、内側からなら通る。ビーツは全周囲をレーダーとリンクした頭脳で捉え、全方位に向けて発砲。1発も外さない。クズではあるし主人公にはなれなかったが、やはり俺が組むべき最強格の人物である。
「あと少しなんだ………」
ビームシールドを展開したまま進む。スラスターを弱めることはない。全速力で進み、前方に展開したGタイプが猛烈な勢いで突撃しても、構わず轢き殺す。
「届け………」
Eタイプがグラディランドの上下に展開。開いた口から火球を、毛髪から電流を飛ばす。直後「させない!」と叫ぶトーマスがパラボラを飛ばして避雷針を作り電流を吸収。火球については放ったドローンカメラやガンビッドを、第1クールの俺のようにコンマ秒単位で切り替えて、ぶつけて防ぐ。20機を超える数を脳波も使わず気合いで操縦しやがった。
「届いてくれ………!」
上下からEタイプが接近戦を仕掛ける。構わず進む。迎撃はビーツがミサイルを使って担当。
「あと、5分でいい………」
大規模な波状攻撃のなかに立体的な攻撃を交えるという、アンノウンらしからぬ戦術を使う群れを、突破する。
そこに控えるのは───Xタイプ。
ついに俺も対面した。
もう、両足と左足の感覚がない。
体温が急激に下がってくる。呼吸が苦しくなる。声が出ない。目も見えない。耳も聞こえない。インターフェースで神経接続しているから、周囲のことが捉えられる。今や機械が視覚と聴覚を補っていた。
いや、呼吸が停止しても、心停止しても、脳さえ生きている数秒にすべてを賭ける価値がある。
止まらない。こんなところで止まらない。
どうせ死ぬなら、こいつも道連れだ───
『小此木ィッ!! 上だあああああ!!』
「………ぇ」
グラディランドの頭上。
半透明のカーテンが揺れた。
手を伸ばした先にいたXタイプが、消える。
テレポート。そんな能力はXタイプに無かったのに。
俺は誘い込まれた。これがXタイプの戦術。
Lタイプはたった1体しかいないと勝手に判断していた。そう思わされていたのかもしれない。
2体目がいた。
2体目のLタイプがカーテンを開ける。
約500体の、アンノウンの群れ。
「………く、そ」
届かなかった。
数は半減したとはいえ、残り4分と30秒であの群れを突破するのは、ほぼ不可能である。
『レイライトブラスター、発射用意!』
数分の冷却で使用可能になったレイライトブラスターを展開する。もう、この一撃に賭けるしかない。
手が届かないなら主砲で焼き払うだけだ。
群れだけでも一掃し、残るだろう2分でXタイプを潰す。テレポートがなんだ。カウンターシステムを使えば読める。読み切ってみせる。
言葉にならない絶叫とともに、レイライトブラスターを500体の群れへと放った。
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さて、次回が終われば、いよいよ最終回ですね。これからは日曜日であろうと1話更新とさせていただきます。あと25回くらいの更新で完結予定です。
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