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天を破りて・前B07

 ちょっと愚直だったかもしれない。


 でも、これくらいでいいんだ。ビーツなんて「ワールドボルテックスシステム」とかいう意味不明な命名を付けたがっていたけど、阻止して正解だったと思う。


 ビーツは前世の楠木美壱時代から、昔からなにかに抑圧された反動でこうなったのかと疑うほど、ネーミングセンスがバグってるくらい中二病的な面があったからな。


 壊滅的なネーミングセンスにすべて台無しにされるくらいなら、俺のシンプルな方を採用するのは道理だ。ケイスマンの意志には「は?」という反応をされたけど、ゴリ推ししておいた。


 そして今、俺の推し活の集大成が具現化する。


 きっかけはただの妄想と、クランドの冗談だった。それでも俺は、本気でそれを実行に移した。


 接触したグラディオス改とアリスランド。艦首が触れたことでシークエンスを3つほど省略。ただしグラディオスの負担が、特にブリッジにいる俺とトーマスは、巨大な機械が発生させるGに耐えなければならない。


 トーマスなんて特に「嘘でしょ嘘でしょ、うぎぃぃいいいいい!」なんて声を上げながら必死に操縦桿を握ってしがみ付いていた。


 俺はベルトを締めてシートに体を縛り付けた。トーマスとは異なり体力もないが、この行為についての高揚感から、特に苦にも感じない。


 艦首が連結したグラディオス改とアリスランドは、水平状態から垂直状態になるまで移動し、シークエンスを本格的に開始した。


 この時のために元日本支部跡地の富士ドックでオーバーホールと徹底魔改造を施したのだ。


 アリスランドも南極支部のドックで「アスティオールの奇跡」というスピンオフに登場したキャラクターたちに協力し、その見返りとしてアリスランドを徹底魔改造させたはず。


 外見は武装を追加することで1割ほど変わったが、内装は原型を留めていながらも通路以外はほぼすべて変わった。入れない部屋が増えたのだ。


 原作で言うライラショックが起こる前、俺はアメリカ支部で行われた祝勝会に参加せず留守番して、ハルモニに協力させながらグラディオスの秘密を知った。


 それは、元々グラディオスは多数のギミックを搭載する予定であったが、そのための余剰スペースがなかったことにある。まるでブロックのように分離や変形が可能なラインが存在した。しかし余剰スペースがなかったため、結局は断念してオミット。謎のラインだけが残った。


 俺は、その分離や変形を目的とした境界線に着目し、ハルモニにシミュレーションさせた。


 やがて幾多もの条件を付け加えるうちに───俺が満足し得る答えを導き出した。


 その条件が「ア(・)リ(・)ス(・)ラ(・)ン(・)ド(・)を(・)巻(・)き(・)込(・)ん(・)で(・)ト(・)ラ(・)ン(・)ス(・)フ(・)ォ(・)ー(・)ム(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)」である。


 元々グラディオスに搭載するギミックというのが「陸路を走行可能にする巨大なキャタピラを展開することだったり、空中、あるいは宇宙で変形して強固な要塞となる変形」であったのだ。まぁつまり外見は大した変形はしない。精々5つのシークエンスを経て完了するトランスフォーム。


 まったくもって舐めている。


 その程度で、ロボットアニメ好きかつ目と舌の肥えたファンを魅了できると思ってんのか?


 変形・分離・合体は男の子から幼稚園児時代から虜になる要素だろうが! 特撮ドラマから入り、やがては子供向けアニメに突入し、成長したら深夜アニメに取り憑かれ、果てには昭和時代のレトロにして歴史あるロボットアニメから今世まで連綿と続くシリーズのロボットアニメに、全人生を傾倒させる勢いで捧げてのめり込むのだろうが!


 俺もかつてそのひとりであったように。


 それがたった5のシークエンスでするような変形で、俺が納得するとでも?


 俺がやると言ったら、やるんだ。


 今回俺が用意したシークエンスは───100以上!!


 それはもすでに開始されていて、20に到達したところだ。


『グラディオス改、アリスランドの接続終了。後部レイライトリアクター移動。予定されたポジションへ。到達まで3。………移動完了。アリスランドも同様に移動完了。大型レイライトリアクター、直列接続!』


「タイタンジャケット改、起動! 2隻のレイライトリアクターのエネルギー生産量、供給量ともに安定! グラディオス改のブリッジ移動!」


 ケイスマンの意志とトーマスが叫ぶ。


 なんだかんだ言って、ふたりとも男の子だからな。男は何歳になっても心にガキな自分を飼っていて、特に興奮すると面に出てしまうのだ。あのシリーズものとなった日本を代表するロボットアニメのファーストを、ファンとなったお父さん世代あるいは若いお祖父ちゃん世代が早口で語れるように。


 そしてそのガキ代表が、俺。


「グラディオス改、艦尾変形。新造関節異常無し!」


『アリスランド艦尾変形。アリスランドもなかなか腕の立つ整備士を捕まえたのだな。シークエンス80に移行!』


 もう80を突破した。まだ30秒しか経過していないのに。シミュレーションでは、当初はこのシークエンスに突入するまで4分かかった。ユニゾンアサルトシステムが完成していなかったこともある。何千、何万、何億と実験を繰り返すことで学習したケイスマンの意志が修正を加えながら完成させてくれた。この半年間は決して無駄などではなかった。


『シークエンス90を突破!』


 グラディオス改とアリスランドが変形を続けるなか、俺たちがいるブリッジがついに中央の上部に移動を完了させた。


 2隻の同型艦ゆえにできる融合。それがユニゾンアサルトシステム。元々どうしても体積が足りなかったからアリスランドを使って補うと決めたのだ。単体では腕がほぼ無くて足が長いか、腕が長くて足がほぼ無いかの二択だった。ならばアリスランドで補えばいい。


 艦首を接続し、腹部となる部分にレイライトブラスターを集結。グラディオスが上半身に、アリスランドが下半身へと変形する。


 その他にも細かな部分を修正するように拘束で変形を繰り返し、形状を整え、露出してしまいそうだった接続部分を装甲で覆い、足の爪先まで再現し、メインスラスターを露出させる。アリスランドなんて艦首から先が二分化され、ほぼ股関節と膝や足首までを完成させればいいので楽なのだが、グラディオス改は肩や肘や手首やマニュピレーターまであるから多関節だ。元日本支部の整備士たちの魂と意地がディテールとなって具現化される。


 頭部が胸からせり上がる。


 100以上のシークエンスを完了させた。ここまでやるのがロボットアニメの真骨頂。


 変形と合体機構があるとその部分の摩耗や装甲の薄さが露呈する? そんなの知るか。強ければいいんだよ強ければ。





「宿命合体───グラディランド!!」





『なんて安直なネーミングセンスだ』





 俺の魂の叫びを相殺するようなビーツのツッコミ。もう聞こえなかったことにしよう。ワールドボルテックスシステムよかマシだろ。


 グラディオス改とアリスランドという、この世界にたった2隻しかない最強の艦を合体させ、人型にするという王道のトランスフォーム。


 これが俺の計画の全貌とも言えた。


 俺の浪漫と夢のすべてを継ぎ込んだ魂の結晶。


 そして、最後の夢の時間が───始まる。




「さて………最後くらい、盛大にやらかして全部終わらせてやろうかァッ!!」




 艦長席にもギミックを施した。


 右の肘掛けの一部が露出する。


 そこには見覚えのあるスロットがあった。


 右腕の義手の手首を折り畳んでインターフェースを伸ばす。タキオンに続き、リヴァイヴでも採用した神経接続システムである。


 これを使えば、間違いなく俺は死ぬ。


「死ぬのが怖くてロボットアニメなんぞやってられるかぁぁああああああ!!」


 それでも俺は、恐怖を気合いと咆哮で掻き消して、インターフェースをスロットに叩き込んだ。


たくさんのリアクションありがとうございます!


いかがでしょうか? ぼくのかんがえたさいきょーのろぼっと。でした。

最終かいなのだからこれくらいやらなければと考えて、合体させてみました。ほぼテンションです。半年前から考えていました。やっと書くことができて満足しております。

次回は19時頃に更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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