天を破りて・前B06
あと十数キロだった。グラディオス改とアリスランドが接触するまで。
それなのに、突如としてしゃしゃり出てきやがったKタイプという輪郭のみの光の巨人が、2隻の間に割り込んだ。
アンノウンもグラディオスとアリスランドが接触することに危機感を覚えたということだ。
「まずいっ!」
『急制動! レイライトリアクターからのエネルギー供給を推進ではなく、防壁に回す!』
「仕方ねぇ! 大型ビームシールド展開!!」
間に割り込まれては、こちらの作戦が台無しになってしまう。
いくらグラディオス改とて、Kタイプという巨人に衝突してしまえばひとたまりもない。
サブスラスターをすべて動員して急制動をかけつつ、トーマスが緊急回避行動に移行。するとKタイプが、巨大で長い腕をぬっと伸ばしてグラディオスを捕獲しようと試みた。
急制動は選択としては間違っていない。ただ、緊急回避行動とは相性が悪い。ガリウスならともかく、これは超重量の艦なのだ。軽量なガリウスと同等の回避ができるわけではない。
それでもトーマスは意地でもKタイプから逃れようとする。エージェントとして教育されたキャリアは半端ではない。
が、Kタイプが複数迫ることで退路が塞がれ、捕まってしまう。
ビームシールドがなければ瞬時に圧砕されていた。出力を上げ、巨大な手を防ぎ、時間を稼ぐ。
「まずい………どうするエースくん!」
「上下左右と前後も移動ができねぇか。ビームシールドのフィールドも、そう長くはもたねぇ。チッ。面倒なことをしてくれやがる。………ビーツ!」
このKタイプの登場は予想外で、アンノウンの濃密な殺意が感じ取れる。
Iタイプ、Jタイプといったアンノウンの最終決戦専用シリーズならまだしも、こんな巨大な敵が猛然と襲いかかってくることなど誰が予想していただろうか。
これが俺やビーツが行ってきた原作破壊行為のツケなのだろうが、だからと言って「はい、そうですか」と受け入れられる事実でもない。
Eタイプこそアンノウンのなかでも最大級の体長を持つ敵だと思っていたのに。なんて厄介なのだろう。
だが………対抗できないわけでは、ない。
俺だけならまだしも、対面側にはビーツがいる。
アリスランドもまたKタイプに捕獲されていたが、やはり南極支部のドックにて大型ビームシールドを増設していたようで、なんとか即死を免れていた。
脳内チップで案を飛ばす。
受信したビーツは渋りながらも5秒以内に判断を下す。
『外したらKタイプごと誘導弾で消滅させてやるからな貴様ぁっ!』
「それはこっちの台詞だっての。いいか、1ミリもズレることは許されねぇからな。ミスるんじゃねぇぞ! レイライトブラスター、発射用意!」
「ぇえっ!?」
トーマスが振り返り「こいつ正気か?」といった視線を飛ばす。
しかしこれでも至って正気だ。
参考にしたのはもちろん別のロボットアニメ。シチュエーションこそ異なるも、艦あるいは自機が敵に捕縛され、それでも接触したい時に、最大の威力を持つ砲撃を放つ。そこに活路を見出すのだ。
「気合い入れろよトーマス! 照準はこっちでやる。ケイスマンの補助があるから、姿勢制御に集中しろ!」
「嫌な予感しかしないねぇ、ったくもう! 本当、なんてキャプテンなんだ!」
トーマスは嘆きつつも指示に従ってくれる。この時点で、すでにグラディオスの操舵士とほぼ同等の実力を持っていると確信した。俺の無理難題に、なんだかんだ言っても応えてくれるのだから。
『エネルギー充填率50パーセント。しかしビームシールドの出力が不安定となる。ブリッジ以外の生命維持装置をカット。その他、必要最低限のシステムを残しすべてをカット。姿勢制御システム正常に作動しているが、サブスラスターの負担が大きい。エース! このままでは数分ともたないぞ!』
ケイスマンの意志が最適解を導き出し実行していく。それがなければレイライトブラスターを正常に発射することなど、まず不可能だ。
「構いやしねぇよ! こうなりゃ、一気に勝負に出る!」
『やるのか? アレを』
「それ以外にねぇよ。なんのためにアリスランドと正面からキスするポジションを維持してると思ってる。この機を逃せば、もう二度とチャンスは来ねえ!」
テンションが高まる。ここまで最大級の罪を重ねたのだ。背水の陣というやつだな。戻る道はないのなら、進み続けるしか道が残されていない。例え───行き着く先が奈落の底であったとしても。
『充填率100パーセント! 行けるぞ!』
「っしゃあ! ビーツ! タイミング逃すんじゃねぇぞ!」
『合わせてやるから、とっとと撃て出来損ない!』
数える暇など存在しない。グラディオス改とアリスランドの間に、幾体ものKタイプが割り込んでいようが関係ない。
2隻の艦首に幾何学的な閃光が迸る。
「『レイライトブラスター、発射ァッ!!」』
主砲が同時に発射された。
いくらKタイプといえど、至近距離からレイライトブラスターを受けて無事でいられるはずがない。
幾重にも重なったとしても、左右同時の挟撃だ。次々とKタイプの胴を貫き滅ぼしていく。
『エネルギー残量が著しく低下している! このままではビームシールドも維持できなくなるぞ!』
「構うもんかよ! もうこうなれば関係ねえ! このままアリスランドのレイライトブラスターに、こっちのレイライトブラスターをブチ当てろ!」
目の前の敵は一掃したが、周囲のKタイプがグラディオスを圧殺せんと押し寄せる。
その大きすぎる手が迫る───が、2隻の主砲が正面から衝突するのが早かった。
「速度を調節しろ! 大波が来る! 意地でも乗り越えろ! ただし、それを乗り越えた瞬間が本番だ。相対速度を合わせろ! アリスランドと接触はするが衝突は避けるんだ!」
「無茶言ってくれるよ、まったく!」
レイライトブラスターとレイライトブラスターが衝突し、発生した爆発の衝撃に晒されるKタイプ。グラディオス改も例外ではなく、衝撃によって後方に突き飛ばされそうになるも、その前にトーマスに指示を出すことによって、なんの予備動作もなく吹き飛ばされるKタイプを置き去りにその場にとどまることができた。
「逆噴射開始!」
「逆噴射!」
衝撃の波が終了する間際、減速を開始。後ろから引っ張られている際に踏み止まり、いきなり拘束がなくなると前のめりになってしまう現象と同じだ。目の前にはアリスランドがいる。お互いに加速していてはすぐに衝突して、2隻とも沈んでしまう。
スラスターを逆噴射させることで速度を殺し、ついにグラディオスとアリスランドは、艦首が数メートルまで接近するところまで来た。
「覚悟はいいな? これから原作にはない、俺たちだけのオリジナル展開を作る。お前はその補助だ。脳内チップのキャパを残してなかったら、承知しねぇぞ」
『誰に言っている。俺がそんなミスをするはずがないだろう。まぁ、貴様が大半の不可を背負うというから、仕方なくサポートに入ってやるだけだ。貴様の寿命が尽きれば最後。これから始まる武勇は、すべて俺がもらい受ける』
相変わらず好き勝手言ってくれやがる。
でも、そうでなければ。俺のライバルに相応しくない。
これは宿命だ。
俺たち転生者だけの運命で、これまで好き勝手に動いて助けられるものをすべて助け、原作を歪めてきた俺たちだけの物語。
決して主人公にはなれなかった俺たち。
しかし、そうであったとしても───この時だけは。
「『ユニゾンアサルトシステム、起動ッ!!」』
ブクマ、とにかくたくさんのリアクションありがとうございます!
明日は日曜日なのですが、多忙なため、おそらく2話の更新になると思います。
とんでもない展開なのに、筆が遅くなってしまうことをお詫びします。次回、浪漫大爆発! 作者はそういうのが大好きなのです。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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