天を破りて・前B04
「ねぇヤバいって! あんなの掠っただけでも即アウトじゃん!」
「まぁな。だから直撃は当然、掠ることも許されねぇ。だから俺とケイスマンが回避ルートを計算し続けるから、お前はそのとおりに飛べ!」
「うわぁ。なんて無茶を言うキャプテンなんだろうね!」
宣言どおり3秒でコントロールを返すと、操縦桿を握り直したトーマスは必死に正面に現れたガイドに従ってグラディオスを動かした。速度は一切緩めることなく、最大船速で宙域を駆け抜ける。言動こそ恐怖で満ちていたが、トーマスは有言実行するタイプだ。操舵に躊躇いはない。自分の仕事はしっかりとこなす男でよかった。
アンノウンは、左右に展開し全速力で飛翔するグラディオスとアリスランドへ集中砲火を継続。ヘッジホッグジャケットを纏う十三号機が100機揃ったかのような弾幕にゾッとする。
原作が可愛く思えるほどの濃密な砲撃を前に、必死で食らいつきながらトーマスへ敵の射撃予測線や回避ルートの算出し提示する。
『エース。それは私がやろう。アンノウンへの反撃に転じたまえ』
「ありがてぇ!」
ケイスマンの意志に操舵補助を託し、脳内チップのリンクを切り替える。
接続したのは火器管制だ。元日本支部跡地で、保管したはいいが使い道がなくなっていたアリスランドに接続するはずの予備の副砲が余っていたというので、拝借することした。グラディオスへ惜しみなく増設した。
右舷の砲門を開く。緩急をつけた、常に蛇行するカーブを描きながら、展開するアンノウンの布陣の左側へと照準を定め、こちらも応戦を開始した。
増設した副砲たるビーム砲、リニアカノン、誘導弾を一斉射撃。
「うっ!」
「怯むな! グラディオスはそう簡単に沈みはしない! 進めぇ!」
本格的な撃ち合いとなる。グラディオスはアンノウンの軍勢へ向けて、斜め右へと移動しており、徐々に接近しつつある。距離が狭まると命中する確率も上がるのだが、それは敵も同じ条件だ。
直撃を避けるための進路も、接近するに連れて狭まっていく。トーマスは激しく歯噛みしていた。
「くっ………ダメだエースくん! 左舷から侵入するつもりなんだろうけど、敵の数が多すぎて、グラディオスほどの巨大が割り込めるスペースなんてどこにもない! このままだと布陣の端まで走る前に、本当に直撃してしまう!」
「ああ。隙間なんてないことくらい最初からわかってる! だから作るしかねぇ!」
「作る!? え、どうやって!?」
「タイミングはこっちで指示する! そろそろなんだ。………見えた! あれだ! 艦首レイライトリアクター出力最大!」
「ちょっ………た、確かに斜め前へと進んでるから、主砲も左舷を削れるけど、そんなの焼け石に水じゃないか! 片翼をほんのちょっと削るために主砲を使うのかい!?」
「馬鹿言ってんじゃねぇ。堂々と中央をブチ抜いてやるに決まってんじゃねぇか!」
「最大船速で急制動なんてかけたらどうなるかわからないはずがないだろう!? 反転も無理だよ!?」
「ブレーキも反転もするつもりはねぇ! 左舷、アンカー射出!」
「え!?」
「歯ぁ食いしばって耐えろよトーマスッ!」
原作の最終決戦が行われた宙域からかなり離れていたものの、レーダーを使えば周囲になにがあるのかくらい知ることができる。
例えば───そう。前方、左側に浮かぶ、かつての主要キャラクターたちのホームであった残骸がヒントとなった。
原作では第3話でソータが、今回は俺が行ったアンノウン討伐のため、爆発で真っ二つとなったサフラビオロスの片割れだ。
もうこんなところまで流れてきた。宇宙コロニーといえば、その港にグラディオスを何隻も収容できる大きさだ。原作では片割れしかなかったから、どこに流れたのかと思えば、こんなところにいた。
グラディオスの左側面から放たれる巨大なアンカーがサフラビオロスの片割れに突き刺さると、推力を維持したままアンカーを巻き上げ、サブスラスターを用いて弧を描くようにグラディオスがサフラビオロスの片割れを周回する。
「ぐ、う………ぎ」
強烈なスイングにトーマスは悲鳴を上げるも、意識だけは手放さなかった。体が頑丈なだけはある。
やがて一周を終える直前で、負荷に耐えられなかった外付けのアンカーをパージ。アンノウンの砲撃をサフラビオロスの片割れを盾に、グラディオスは進路の修正に成功。
艦首は計算どおり、これまでどうしても背を向けていたEタイプの群れへ向いていた。
「レイライトブラスター、発射ぁっ!!」
Eタイプが吐き出す火炎を押し返す勢いでレイライトブラスターが放たれる。
縦にも広々と展開する群れを掃射し、一気に数十は削り取る。
横を見る。なんと同じタイミングでアリスランドもレイライトブラスターを発射していた。
「このまま突っ込め!!」
グラディオスとアリスランドは、主砲で突貫した群れの穴へと突撃。
自ら群れのなかに入るのは飽和攻撃を誘発させてしまうが、そのリスクをハイリターンにするのが戦術だ。
誘導弾の弾頭を切り変える。通常のものではなく、特殊弾へ。
潜り込んだ次の瞬間、ヘッジホッグジャケットを思わせる勢いで、全方位に射撃を開始。
特に特殊弾───冷凍弾が猛威を振るう。高熱源体であるアンノウンの動力源こそ熱だ。それを直接奪ってしまえば、形状を保てなくなる。
『注意しろエース! 周囲のEタイプが咢を開くぞ!』
「チッ! 本格的に内蔵しているアンノウンを吐き出す前に、アリスランドと合流する!」
『なら、なぜ最初からきみたちのそのプランを実行しなかった?』
ケイスマンの意志の指摘は鋭い。
俺とビーツはこの時のために、原作破壊行為の極みのようなプランを用意していた。どうせ、シーナは「なんで野郎ってこんなのが好きなんだ?」と呆れた視線を向けるだろうが、カイドウなどは理解してくれるはずだ。
だが、それを開戦直前に行うわけにはいかなかった。
強力な性能を発揮する代わりに、別の方面からリスクが襲うからだ。
「ギリギリまで待って、敵中央で発動することこそ浪漫なんだよ!」
『意味不明だ。非効率だ』
「そんなこと最初からわかってるさ。成功率だって、当初からグッと下がるだろうしな。でも、敵陣中央で発動するから、その直後にアクションを起こせるんだ。距離があったら、逆に俺が追い込まれかねない。もう、敵の数や質は侮れないからな」
それこそ第1クール終盤で、クランドが述べた発言が端緒となったのかもしれない。
それ以降、ずっと俺の頭の片隅にヒントとして残留した。アメリカ支部でクルー全員が艦を出て祝勝パーティに出席した際、俺がひとりで留守番をして、ブリッジにてハルモニを使って計算した。グラディオスの隅々まで知ることができたし、シミュレーションを重ねて、とある条件下であるならば可能と結論を出した。
そして現在。様々なものを背負い、そして俺のこの体に異物を取り込んで、短命となる代わりに尋常ではないスキルを得た。
発動すれば、俺の命は───十数分が限度だろう。
「俺の意識が保たれることを優先する。だから………」
『………承知した。ならばもう無駄口は叩かない。その凶悪なプランを優先しよう。火器管制もこちらに半分回せ』
「すまねぇな。………トーマス! 10秒後に転進! 右へ突入しろ!」
最後の時が近づく。もうトーマスとの約束も守れないかもしれない。しかし、それでも俺は止まるつもりなど一切ないのだ。
グラディオスが転進。敵陣の中央へ。正面には同じく転進したアリスランドが、グラディオスの正面へと進み始めていた。
たくさんのブクマ、リアクションありがとうございます!
エースの言う浪漫がなにを意味しているのか、なにを狙っているのか、ご理解された方はいらっしゃるでしょうか? 伏線は結構あると思います。私自身、この時のためにエースに色々思案させていました。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!




