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星に抱かれし者B09

「い、いや………だからな? ドルテ支部長が不在の現状、私の一存で決められる問題ではないんだ」


「ならば、私の決定を下す。グラディオス所属整備士シーナ・サクラ及び、民間人を装ったアンノウンの少女ライラを、ドイツ支部は受け入れる。これは私も責任を取ることになるが、みなで手を取り合って問題解決に着手しようではないか」


「ドルテ支部長………っ!?」


 鶴の一声のような、全員が驚いて、声が聞こえた方を凝視する事態となった。


 急務で不在であったドルテが、私とライラを囲む人間の包囲網を突破するように、ふたりの人間を連れて現れたのである。


 副支部長は立ち上がって敬礼するが、その背後に連れていた男たちを目の当たりにして、さらに驚くことになる。いや、驚愕の度合いで言えば、グラディオスクルーの方が大きい。


「クランド………」


「クランド、艦長?」


「艦長!」


「お父さん!?」


 ドルテが引き連れていたひとりは、かなりやつれていたが、クランド・デネトリア本人であったのだ。


 クランドは本部の意向に従わず、逃げ去ったことで反逆罪に問われ、長くドイツ支部の地下牢に監禁され、監査たちの尋問を受ける日々だった。それがなぜ、こんなところに手錠もかけられずに悠然と歩いているのかは謎だった。


 そして最大の謎といえば───


「………やはり、完全な釈放というわけではないのですね?」


 アーレスが剣呑な瞳をして問う。


 クランドは歓声を上げるクルーたちに丁寧に対応し、私たちがいるテーブルの前に来ると、アーレスを見上げた。


「いや、完全な釈放だ」


「やっぱ冤罪かよ! おい、そこのクソ監査野郎! よくも艦長を誤認逮捕しやがったな! 血祭りにされる覚悟はできてんだろうなぁっ!」


 血の気が多いハーモンが、クランドの隣に立つ監査のトップ、ハヴェクに詰め寄ろうとする。が、クランドはハーモンを手を伸ばして止めた。


「まぁ怒りはもっともだが、その意見は間違っているぞハーモン。そもそも、私は逮捕などされていない。勾留は受けたが、尋問、拷問の類いは一切受けていない。長い間、お前たちと離れて暮らしていたというだけだ。………おっと。息災でなによりだ。レイシア」


「お父さん! なに言っているかわからないよ! いったいなにがあったっていうの!?」


 少し痩せてしまったクランドの胸に、娘のレイシアが飛び込んだ。


 私も意味がわからなかったのでポカンとしていた。すると、レイシアを抱きしめて頭を撫で終えたクランドが私たちに歩み寄り、ライラと一緒に頭を撫でられる。


「ライラ。きみは私のことも好きなのかね?」


「うん。らいら、くらんどもだいすき! たまにきゃろっとけーき、たべさせてくれるもんね!」


「は? ………オトウサン?」


「そ、それは言わない約束だろうっ。レイシア、艦は無くとも、業務中は艦長と呼ぶように………ああ、わかった。そんな目をするな! お前が席を外した隙にライラを呼び、キャロットケーキを食べてもらったのは事実だ。それは認める。済まなかった! ………そしてシーナ。きみの昨(・)日(・)の(・)演(・)説(・)は監視カメラから見ていた。ハヴェクとドルテ同席の上でな。驚くべきことばかりだが、私にも覚えのあることばかりだ。昨日の言葉、信じさせてもらう。私も、エースにもらってばかりで………なにも返せていないからな」


 クランドたちは私たちの秘密を知った。


 知った上で受け入れる。そう宣言した時、各々の覚悟の色が濃くなる。


「エースは、私たちの敵ではない。私たちはうまく踊らされていただけなのだ。奇しくも、そうなるよう仕向けたのもエースではあったが、もう踊らされるのはたくさんだ。エースはたったひとりで戦い、私を生かそうとしている。それは紛れもなく裏切りであり暴挙だ。私たちはそんな理不尽に立ち向かえるよう日々精進した! シーナ。きみはなにを今さらと呆れるだろう。そのとおりだ。今さら決起したとことで、なにもかも遅い。エースはすでに死地へと赴く準備をしている! だが、我々はそれを、指を咥えて見ているだけでいいのか? そうではないだろう! あのわからず屋を叩きのめしてでも守らなければならない。シーナ。きみもエースと同じだと言ったな。そんなきみはエースと同じ場所に行けず、悔しい思いをしたのではないか? 安心しろ。私も同じだ。私だけではない。ここにいる全員が、エースとともに戦えず悔しい思いをしている。ならば、追いつかねばならない! エースが向かう先に。そして追いつくだけでなく、待ち受ける脅威を退ける! それが、我々が行わなければならない最終決戦である!」


 クランド・デネトリア。やはり大した男だ。


 エースの他に、自信に満ち溢れた声で叫ぶだけで、周りの空気が影響される。


 元々完成した軍人であったが、その限界値を振り切り、より前進して新たな道を切り開いた。


 でも、


「どうやってですか?」


 クランドの演説に、力を取り戻したグラディオスクルーが雄叫びを上げる前に。水を差すようだが、どうもさっきから理想論ばかり振りかざすクランドに、現実を思い知らせるよう尋ねる。


「現状、グラディオスもアリスランドもない。宇宙に上がるにしても、方法もなければ時間も限られているし、追いついたとしても満足に戦える環境を、どうやって作り出すんですか? 艦長。あなたはそんな理想論ばかりで………なんだテメェ。ブチ殺すぞ?」


 クランドに詰め寄ろうとした時、横から突き出された腕が鼻先を掠める。


 その腕の主を見上げ、苛付いたばかりに殺意を込めて睨んだ。


 私を止めたのは、クランドを拘束したはずの、監査のハヴェクであった。


「失礼。そこから先は、私が説明させていただく」


「なに勝手にほざいてんだテメェ。Jタイプと同じ末路にしてやろうか?」


「シーナ・サクラ。これはあなたにも関係する話しです。どうか大人しく、最後まで聞いていただきたい」


「………くだらねぇ内容だったら、脳みそ潰すからな?」


 このハヴェクという本部から派遣された監査は、もちろんキャラクターという意味では原作に登場しない。オリジナルというか、正史から分布するifルートを直行している途中で生まれてしまったモブキャラに過ぎない。


 しかし、なんだろう。この形容し難い空気は。


 まるでクランドと同じ。というか、最初にグラディオスに乗り込んできた時とは、随分と雰囲気が違う。


 最初は冗談も通じない堅物のエリートクソ真面目野郎かと思ったが、今はそれとは異なる、エリートなんだけどなにかが違う異物へと変身しているような印象だ。


 丸眼鏡をクイと指で押し上げ、私が沈黙するとハヴェクは語り出す。


 なんかもう、初手から変だった。


「私はハヴェク。ハヴェク・アーノルド。連合軍に所属してはいますが、実は監査ではありません。まぁそれに似たような部署で勤務しておりますが、実態をお教えすることはできません。ただひとつ明かすことができるなら、私はオードリアインジェクション社をスポンサーとしている、ということでしょうか」


「エージェントか?」


「それに似たようなものです。しかし、連合軍に所属していることに違いありませんし、上もそれを理解しています。なぜなのかはお教えできませんが。今回は複数のご依頼主のオーダーにより、グラディオスの奪取、アリスランドの脱走。クランド艦長の拘束など、他諸々の仕事を終えて、皆様とご対面しました」


「なんだそりゃ。二重スパイか?」


「シーナ・サクラ。それにはお答えできないと申し上げたはずです。しかしご依頼主の名前は明かしてもいいでしょう。ひとり目、エース・ノギ少尉。そしてふ(・)た(・)り(・)目(・)、ビーツ・クノ中佐。私エース少尉のご依頼を受け、地球に降下して参りました」


 イカれているにもほどがある。


 つまり監査を装ってたハヴェクも、エースのグルだったってことだ。


 そして、同時にビーツとも繋がりがあったと。


 正直、この時点でどこまで信用していいのか不明だった。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

いよいよ、爽快な方へと向かい始めます!

明日は日曜日ですね。毎週恒例の複数ブッパ回なので、ちょいと頑張ろうと思います! 予定としては3回がなのですが、皆様の応援次第では4回に増えるかもしれません! どうか作者にガソリンを注いでやってください!

最初は0時に更新しますと書いたのですが、酒に酔い爆睡しておりましたので12時の更新に変更させていただきます。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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