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星に抱かれし者A10

「第16話「バイバイ」アラスカ支部に立ち寄って、以前サフラビオロスで入手したケイスマンのデータの封印を解くことになる。ケイスマンの息子を発見してヒントを聞き、おやっさんが解読する。けどその前に新たな犠牲者が出る。ヒナ、コウに続く第3の………シェリーショック。撤退途中の友軍を支援していた時に殺された。でもエースはそれを止めたな。ケイスマンの息子はいなかったけど、データならすでに初期から封印を解除してた。シェリーについてはエースの采配と、体を張ったから防げたとも言える。お前もちゃんと守られてたんだよシェリー。第17話「イレイザー」………これは言わずとも知れてるな。ソータの一号機が酷く劣化してきたから、新しいガリウスを製造することにした。根幹となるアイデアはケイスマンの息子から得られるのだけど、会えなかった。そこは私とエースの発想でなんとかした。タキオンの基礎設計データもあったしな。ジョーを早期に黙らせることもできた。あいつデーテルと組んで色々やらかすし、デーテルも原作ではグラディオスを降ろされず嫌味な副艦長やってたしな。第18話「特殊強襲特装艦集結」ではアメリカ支部でアリスランドと再会。味方であったのは変わりない。アンノウンと戦ったのは陸地だったけど。その話は特に問題ない。でも次がもっともメンタルに来る話だった! 第19話「まだなにも終わってねぇだろ」………そう。これはハーモンのセリフな。記憶にあるだろ。とにかく悲惨で救いようがなかった! 前半はライラが拉致され、拷問され、あの建物にいた男たちにレイプされる。ギャングは何人いた? 100人以上いなかったか? そうだよ。そいつら全員に嬲られるんだよ!」


 全員がライラを振り返る。


 ライラは少しだけ怖がっていた。でも、ちゃんとそこにいてくれた。


 銀色の髪という珍しい特徴をしているライラは、笑うととても可愛い、民間人ではあったがグラディオスのマスコット的ポジションにいる少女だ。今ではみんな可愛がっている。


 純粋無垢たる彼女が、大勢のギャングたちによって犯され、切られ、焼かれ、抉られ───そんなシーンを思い浮かべて、青褪めた。なにもしていないのに大勢の悪意に晒される。そんなこと、あっていいはずがない。


「もうみんなわかってると思うけど、それを止めた………身代わりになったのがエースだ! 原作ではライラを助けられなかった! でも私も動いて拠点を特定したから間に合った。救出された時のエースを見ただろ? ライラがあんな目に遭わせられると知ってて、身代わりになれる奴がこの場にいるのかよ! いねぇだろ! エースだって生きて帰れるかわからないのに、それでも自分から望んで身代わりになった! ド変態の狂人の境地だけど、それでも………あいつ、みんなのことがそれくらい大好きだったんだよ! でもそれは前半の悲劇だ。ビーツに騙されてたアークがグラディオスに潜入したことがあったな。任務内容はブリッジにいるクスドを暗殺すること。原作ではまんまとクスドは銃殺されたけど、私はアーレスさんを配置することで事なきを得た。それが終われば、グラディオスとアリスランドの対決。窮地に立たされたグラディオスを防衛しようとハーモンの三号機が活躍するけど………黒いタキオンによってコクピットを潰された。………そこはみんな覚えがあるだろ? 忘れられるわけねぇだろ? そう。エースが回復してもいないのにタキオンに乗って、身代わりになった」


「っ、あ………」


 全員のトラウマと化したあの光景を思い出す。


 それだけでなく、因果を崩壊し続けたことで、エースに訪れた災厄は偶然ではなかったと判明した。特に助けられたハーモンがそうだ。ハーモンは震え出し、ハナによって支えられる。


「ハナもそうだ。その………あれは事故だった。九号機が自爆して、戦死した。その代り、今回はアリスランドのスパイだったジョーが自爆したけど。ちなみにジョーの野郎も、ビーツによって因果を歪められた犠牲者でもあったんだけど、あの性根が腐った性格してるし。嫌いだったからどうでもよかった」


 ハナについてはエースから聞かされていた。原因を誤魔化して自爆したと説明すると、どこか納得したような表情をしていた。


「第20話「その仮面の下には」と第21話「因縁との決着」は省略するかな。エースが離れていた期間だし、アークがグラディオスに降伏を迫って、ソータと生き別れの双子だって判明したんだけど、私が可愛がってやったし。原作はグラディオスとアリスランドの決戦だったんだけど、まさかアメリカ支部とドイツ支部、コーネリア少将まで巻き込んだ戦争になるとは思いもしなかったかな。コーネリア少将って原作には登場しないし。でもかっこよかったから、エースなんて一発で気に入ってしまったってさ。エースはトーマスに助けられたんだっけ。敵だったけど助けたから、恩義を感じて………そうか。トーマス。だったらエースの行き先は………」


「どうした? シーナ」


「あ、いえ。なんでもないです。第22話「もう戻れない」も最悪だ。アメリカで大勢の男に嬲られ悪意に晒されたライラが襲い掛かってきた。結局、ソータが止めることになる。………殺して楽にしてやったんだ。アイリは泣いて止めようとしたけど、間に合わなかった。それが決定的な原因となり、溝になる。その頃にはエースも戻ってきたし、なによりライラはそんな目に遭わなかったから、結果的にソータはライラを撃ち殺すことはなかった。平和は………保たれたんだよ。あいつの活躍のお陰でさ。第23話「龍紋を放つ」ではデーテルがクーデターを起こす。ジョーだけでなく、ユリンも連れてな。ユリンとアイリが衝突。勝者はアイリ。ユリンは生死不明。アリスランドは落とされる。ユリンは壊れたソータを見限って裏切るんだ。じゃあ今回はどうなったかっていえば? デーテルが裏切ってくるのは変わりなかったけど、ユリンは裏切らなかったな。ソータじゃなくて、エースに夢中だった。エースによってユリンのメンタルも正常に保たれていたんだ。でもその代わりに、エースが監査にしょっ引かれ、自分の正体を知られることになった。あの時、グラディオスが去った時にデーテルは言っていたな。エースは自分で自分の正体や情報をリークしたって。最初はどういうことかわからなかったけど、今ならわかる。エースはあえて孤立化することによって、グラディオスを占領しやすくしたんだ! なぜか、なんて言う必要はないよな。そうだよ。私含めて、ここにいる全員を最終決戦に物理的に挑めなくさせたんだ! 犠牲を出したくないからってなぁ! 本当、狂ってるよあいつ! 私とエースは相棒同然だった。ファンとして。グラディオスのクルーとして。犠牲者を出さないようふたりで、ふたつの視点で状況を見て、危機を回避したり乗り越えてきたんだ! それがいつか、あいつどちらかが倒れても、もう一方がグラディオスを支えようって約束を、こんな形で私に押し付けやがった! それがこの、今の第24話「星に抱かれし者」だ! ふざけんなって思ったよ。私も一緒に戦わせろよって、何度あいつを恨んだのかわからないくらいだ! いつもひとりで突っ走りやがって! いつの間にか私さえ保護対象にして置き去り。ここにいる全員のケアと修正に専念しろって行動で示しやがった!」


 史実を語る私は、いつしか愚痴へと変わり、やがて罵りの対象を変える。


「その果てに()()だ! そうなるだろうと、どうせエースを許せないくらい恨むだろうとは思っていた。それくらいなら我慢できたさ! 私だって相棒だったのに裏切られて、あいつに会ったら………いや、もう会えないけど、その時は一発なんて言わず何度も面にぶち込んでやる! でも………あいつの覚悟、わからなくもない。エースはグラディオスのクルーが大好きなんだよ。ファンなんて領域をとっくに超えて………みんなの幸せのためにひとり犠牲になりに行った。すげぇと思った。自己犠牲。自己満足。その権化だとしても、それは利己的な行動じゃない。自分のためって言い訳を、私たちの人間としての生活を守るために使う、履き違えた馬鹿野郎だって。………それなのにテメェら………いい加減にしやがれよ。知らなかったとはいえ………!」


 周囲をじっくりと睨む。


 私によって張り倒されたヒナ、シェリー、ユリンを重点的に睥睨した。侮蔑の念を込めて。


 その感情を読み取ったのか、ヒナがなにか反論しようとしたのだけど、結局はぐっと推し黙る。


「知らなかったとはいえ、こりゃねぇだろ! テメェら、おい。そこのメス3匹! 忘れることにした? 許せない? 残念だ? なんだそりゃ。裏切りの真相にも気付けず、考えもせず、周囲の意見に流されてエースを最後まで信じもせず、殺そうとするなんて………どうしようもない馬鹿のやることだ! クスド、テメェもだ。パイロットども。いやここにいる全員だ! テメェら、これまでエースに助けてもらって、守られてきて………命だって助けてもらったのに、なにほざいてやがる! エースがみんなのためにならないことをしたことあんのかよ! 言ってみやがれ! ………あいつを殺そうっていうなら話は別だ! 私は今から、お前たちの敵になってやる!!」


 こんな小柄な、無力な女が敵対したとしても大勢で囲んで殴り殺せば、影響はないとしても。


 それに私が転生者であると自供したことで、信頼と信用が崩壊して、私が言うまでもなく立場が危うくなり、敵対視されることも道理で、むしろ今すぐ殺されても不思議ではないとしても。


 私は、エースの名誉を守るためなら、手段を選ばないつもりだった。


 そうだな。エースの潜伏先はある程度理解した。小型艇でも奪取して、ライラと一緒に逃げてもいい。エースのところに。なぜかそう考えると、これまでの鬱憤が晴れるようだった。


「………泣いてんじゃねぇよ。どうせ泣くなら、エースが最後に大好きだったよって言った時に、私もとか言いながら泣いてやれよ」


 ヒナ、シェリー、ユリンが涙を流す。どうやら、やっと心に響いたらしい。


 突拍子もない自分語り同然の、摩訶不思議なお伽噺みたいなストーリーの比較を併合した、信憑性もない暗唱だった。前世でそれを他人にやられてたらどうなるだろう。私の歴史を語られつつ、思い当たる部分がありつつも違いを指摘され、それで完全に信じるだろうか。


 でもこいつらは、私を囲むグラディオスクルーは別か。


 転生者事件が勃発したことで、その存在を認知した。特に私は第1話から第12話まで不参加だったから、例えエースから教わったとしても言い連ねられるのは不思議に思えるだろう。その現場に居合わせなかった第三者が仔細まですべて語れる内容ではない。


 私の言葉で、やっと自覚と認識、果てには誤認も認めた。今は、そう信じたい。


「第25話「天を破りて前」と第26話「天を破りて後」は連続で放送された。最終決戦だ。アンノウンは主力艦100隻。Eタイプのことな。犠牲者は止まらない。アレン、キルカ、ナリヤ、マイアが死ぬ。戦力はグラディオスとソータとアイリとシドウだけ。途中からアリスランドが参戦。目を覚ましたアリスランドクルーと、ソータを助けに来たアークの共闘。それでやっと………戦争に勝つことができた。けど人類も、グラディオスとアリスランドも無傷じゃなかった。大勢死んだ。それくらいの被害が出るのに、今接近している敵勢力は10倍にまで膨れ上がった。勝てるとは思えなかったんだよ、エースは。度重なる原作破壊行為で、グラディオスのパイロットは死亡することなくフルメンバーが揃っていたとしても。原作にはいないJタイプ以降の新型の出現もあったみたいだし。エースはお前を死なせないために人柱になりに行ったんだよぉ………だから、殺せなんて、言うなよぉ………!」


 我慢できず、私は語りながら泣いてしまった。号泣だ。


 ライラが駆け寄り、抱きしめてくれる。


 グラディオスクルーとは違って、ライラはしっかりと理解していた。今はそれだけが救いだ。


「シーナ。お前はいったい………ッ!」


 コウが恐る恐る手を伸ばしながらなにかを尋ねようとする。


 しかしその手が届く前に、全員を現実に戻すかのようなアラートが鳴り響いた。


「敵襲………っ!」


 アンノウンが接近していた。


ブクマ、たくさんのリアクションありがとうございます!

お陰様でブクマが400件になりました!

次回は12時に更新します! もっと応援をいただけると、筆も爆速と化すでしょう!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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