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星に抱かれし者A08

「いい加減にしろよなクソども………お前ら、エースにもらってばかりのくせに、都合が悪くなった途端にこれかよ。あんな、ボロボロになったエースを追い詰めて………恥ずかしくねぇのかよ!!」


「恥ずかしくって………いやお前、なに言ってんだ?」


 そりゃあ、事情がわからないものな。わかるはずのない理由について問われても、余計に混乱するだけだ。それを私に尋ねるカイドウは頭の上にクエスチョンマークを浮かべるようなリアクションをする。


 でも、そんなことは関係ない。


 周囲を見る。みんな、私が狂乱したと勘違いをしていた。倒れたヒナ、シェリー、ユリンも。


 次にライラを見る。ライラは笑顔で首肯してくれた。私の暴走を許してくれた。我慢しなくていいと顔に書いてある。


「エースは確かにグラディオスを裏切った………でもな! ここにいる全員を裏切ったわけじゃねぇ!! やってることはいつもと同じなんだよ! みんなを守るために、やらかしただけだ!」


「それを裏切りって言うんだろうがよ」


「違う! おやっさん。もうここで話しちまいます。今、サフラビオロス跡地にアンノウンが出現しつつある。その数はEタイプが1000体。でもな………エースも私も、100体くらいだろうと思ってたんだ。規模が10倍に膨れ上がったと知ったエースは、自分の命がもう長くないって知ってるし、Jタイプ以降の新型も出たって聞いて、居ても立っても居られなかったんだろうよ! そんなのと戦えば、どんな犠牲が出るかわからないからな。だからエースは、グラディオスを占領して逃げたって思わせて………自分だけでそんなイカれた軍勢と戦いに行ったんだ!! すべてはお前たちに生きてほしいからだってな!」


 それが私が最近に得た結論だった。


 同時に、自分の死さえもカモフラージュの材料にする巧妙さと徹底ぶりに、まんまと騙された私への憤りも込めた。


「待てシーナ。お前………なんでそんなことがわかる?」


 クスドを助け起こしたシドウが尋ねる。


 もっともな質問だ。だから私は、全員の前で明かしてしまった。勢いのままに。


「それは、私がエースと同じ、異世界から転生した女だからだ!!」


「なん、だと………?」


「私の名前は櫻木(さくらぎ)椎菜(しいな)! 前世は日本人。工場に勤務する26歳。お前たちのことを知ったのは、深夜アニメ『天破のグラディオス』を見たからだ!」


「なにを言っているんだお前………」


 そりゃ信じられないよな。私の言っていることすべて。


 もし前世で、工場に勤務していた頃の私に、同僚のひとりが「私は転生者です。あなたたちは前世で見たアニメのキャラクターで、ここはその世界です。信じてくださいお願いします」って懇願したとしても、信じる信じないの話しではなくて、本気で病院へかかることを推奨しただろう。


 で、私はそれとまったく同じことを、こいつらにぶちまけてしまったわけで。


 信憑性の欠片もないし、信用されるわけもない。


 殴られたヒナたちは憤りも忘れて唖然としたり、奇妙なものを見る目を向けたりするも、それを私が今から変えてやろうってわけだ。


 そのための方法なら、手中に、いや頭のなかにすべて揃っている。


「第1話「始まりの日」! アンノウンがグラディオスを襲って、ソータがガリウス一号機を発見して迎撃。エースはなぜかそこにいて、登場しないはずのケイスマンってひとの顔を見た。第2話「コロニー崩壊」! サフラビオロスから難民として逃げた一部がグラディオスによって保護される。ネームドキャラクターはソータたちパイロット。ハーモンがクランドに噛みつこうとしてシドウに拘束され、空気がギスギスする。でもエースがうまく立ち回って潤滑油の役割を果たす」


 第1クールはエースから聞いた話だ。


 事実と異なる武勇を誇張する奴ではない。情報共有は正確に行う性格だと理解しているので自信を持って述べると、記憶から当時のことを思い出した面々がハッとした。でもまだ序の口だ。これからもっと思い当たる節が出てくるだろう。


「第3話「グラディオス」! 難民として収容されるも物資不足の問題で、シドウとソータがサフラビオロスに潜ってガリウスのパーツとアスクノーツ学園の生徒の情報を取りに行く。でもアンノウンの襲撃を受けて、ソータが迎撃するけど爆薬にアンノウンを投げ込んだせいでサフラビオロスが崩壊。エースはソータが村八分にされるところなんて見たくないから、自分がサフラビオロスを壊す役目を担うことで、生徒から敵視される。でもその代わり、ソータが孤立することはなかった! 第4話「その名は」! 学生が軍人に志願することになるけど、主要キャラクターは躊躇って1日の猶予をもらう。全員志願してパイロット、予備パイロット、整備士に振り分けられるけどパイロットの連携は崩壊。ハーモン、コウ、シェリー、ユリンに協調性がないからシドウも手を焼く。敵襲があったけど辛勝。でもエースが介入することで、最初から崩壊していた連携を復活させる。ハーモンとコウを救済。ふたりのことを知っているエースだからこそできた仕事だ。パイロットたちに友情が早期に芽生え、シドウをとても驚かせた!」


 なるほど。こうして声に出して説明するだけでも、エースが行った原作破壊行為について、私自身も深く知ることができる。


 やっぱりエースは異常だった。こんな行動ができる奴がいるだろうか。


 ある程度コミュニケーション能力が高ければ、それに似たこともできるだろう。でも似て非なるものとの明確な違いがあるとすれば、それは総合面で、いや全体面で見た時の救済を行っていること。


 エースは最初期から全部を救おうとしていた。なんて我儘で、欲が深いのだろう。


「第5話「所詮は子供」! デーテルがやらかしたせいで子供たちが大人に不信感を抱く。クスドが自分の場所を取られたくないから、ハーモンのロッカーに塗料をぶちまけてソータがやったと偽装。最終的にバレて孤立。サフラビオロスから抽出したケイスマンが遺したデータの解読を試みるも失敗。でもエースはパスワードを知っていたから突破して、早期にグラディオスの戦備増強に貢献。クスドのやらかしも対面して防いだんだってな。それはエースがクスドの成長を見込んでのことだ。決して手中に収めたいからじゃない! デーテルは個人的にムカついたからお仕置きしたとか言ってたけど。………第6話「みんな大好き」が悲劇の始まりだった。歪ながらも形になって、絆を育んだグラディオスに最初の犠牲者が出る。………みんな、記憶にあるんじゃないか? 終盤の戦闘だ。………そう。お前だよ、ヒナ。お前はDタイプに貫かれて戦死するはずだった。通称「ヒナショック」と言う。私もかなりショックだった。でもエースはヒナが大好きだった。だからなんとしても防ぎたかった! 原作にはないビームシールドの開発に着手。メンタルブレイクするまで自分を追い込んで死に物狂いで活路を開いて、それで、やっと………ヒナ。お前を守ったんだよ。代償として自分が大怪我したけど、それでも満足って言ってた。ああ、そうだよ。あいつはそういう奴なんだ。自己犠牲さえも武器にする。自己満足って部分が、どうも他人の幸せだけに特化してる大馬鹿野郎だ! けど、ここからみんな覚えがあるはずだ。エースはなにをした? あいつ、自分だけが得をすることしたのか!?」


 息が苦しい。呼吸さえままならないほど叫び続ける。


 クラクラするけど、私は止まることなく、たたみかけるように叫び続けた。


ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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