星に抱かれし者A05
「そう、だよ………こんなの前代未聞だよ。Eタイプが1000体も編隊を組んで、本部に向かって進行している。出現したのは僕の故郷、サフラビロス跡地に近い。このまま直進すれば………約3ヶ月で、本部に到達する」
「本部は混乱を招かないようギリギリまで伏せていたようだが………先遣隊が数秒で壊滅した事実を受け、宇宙にいる全艦隊を投入し、これを退けるよう発表をするつもりだ。地球からもシャトルを使って戦力を上げろと指示が出ているが………間に合うとも思えん。グラディオスかアリスランドがあれば、30機以上は送れたのだがな」
クスドと副支部長が述べる。
けれど、私が驚いているのはそこではない。
問題は敵の数からなる規模だ。
私が知っている最終決戦は、Eタイプは100体だった。
連合軍は大半の戦力を導入するのだが大敗を喫し、そこにやってきたグラディオスが参戦。本格的な最後の戦いへと挑む。
けど、これはなんだ?
1000体?
10倍もいるじゃないか。
1隻につきEタイプを1殺とかの問題じゃない。
ただでさえもEタイプは1体を殺すのに通常の戦艦を10隻は用意しなければならないというのに。
10000隻の宇宙戦艦など、用意できる………のか?
「加えて、ここに来て新型の目撃情報も挙がった。確か………グラディオスは3軍同盟で新情報を更新したらしいが、それとも該当しないらしい」
「Jの次………KとL………」
イカれてやがる。
もう私はJしか知らないんだぞ。
ああ、これが………エースのみならず、私も参加してしまった原作破壊行為のツケなのだとすれば………え?
あれ?
原作破壊行為………エース?
「副支部長。その情報………今日、回ってきたんですか?」
「ああ。昼頃だ」
「本部は、いつからこの情報を知っていたのでしょうね」
「それは知らないが、そちらのパイロット………コーネリア少将の弟、ハーモンの言い分によれば、少将もつい最近と言っていたし………ふむ。1週間? ………いや、もっと前に観測していた可能性があるな。しかしシーナ・サクラ。それを知って、なんになる? 今や宇宙全体の、人類の危機だ。そんな些細な問題に気を取られるべきではない」
「………失礼しました。仰るとおりです」
「理解したならいい」
私が目を伏せると、クスドが「大丈夫ですか?」と気遣ってくれる。できた男になったもんだ。
けど………けどな。
私が気にしているのは、そういうことじゃないんだよ。
敵の規模とかじゃない。その敵が、どのような規模で現れて………いったいいつ、誰がどうやって知ったのか。
そしてあいつが、偶然だか必然だかは知らないが、もし知っていたとしたら───
「辻褄が、合う」
「あん? どうしたシーナ。なにが合うって?」
カイドウたちに聞かれてしまった。
答えるべきかはわからなかった。でも、まだ確信を得ただけで証拠がない。憶測で教えるべきではない。私は被りを振って、適当に誤魔化した。
「申し訳ありません。あまりのことに気が動転して………」
「無理もねえ。今日はもう休め。無理すんな。戻ってあいつらに会ったとしても、安易に教えるんじゃねぇぞ? 発表はドイツ支部がやる。これはドイツ支部の問題だ。俺らが出しゃばることじゃねぇ」
「わかっています。………失礼します」
敬礼し、踵を返す。
特に行く宛てもなく、彷徨うように支部のなかを歩き続ける。古巣のはずなのに、今どこを歩いているのか理解できなかった。
気付けば外にいて、グラディオスが停まっていた広場にいた。時間さえあればエースとミーティングをした、自動販売機が併設されたベンチの前で佇んでいた。
様々な思い出が走馬灯のように浮かんでは消えてを繰り返す。
過ぎ去りし、もう二度と手に入らないだろう、淡い時間。
脳があまりの衝撃と量にパンクしそうだった。叫びたいことがあった。絶叫して、エースを罵ってやりたかった。本当に馬鹿だと。
でも、そうしなかったのは、多分………私自身これまで気付きもしなかった、意味不明な感情があったらからかもしれない。
「は、はは………コウに絶交や軽蔑されても文句言えねぇなぁ」
涙が溢れて、止まらなかった。
なんでこのタイミングなのか。
「原作の生粋の腐女子ファン………腐LOVEオスの名が泣いてやがるぜ………」
私は相棒のことなんて、まったく対象などとは思っていなかった。
超えるべき壁。ライバル。隣に並びたい同志。そんな感じ。
でも今、わかった。
私はほんの少しだけ………そう、指先くらい。
エースに淡い感情を抱いていたのだって。
夢中になるとかじゃない。近くにいると、つい視線で追ってしまう。そんな感じ。
異性として意識したくないとか言っておきながら、意識してんじゃねぇか。
思えば前世だって恋人がいたどころか男子とあまり喋ったことだってなかったし、職場飲みだってしたことなかったし、休憩時間はいつもひとりで過ごしていた。
転生してから大分マシになり、コウと両思いになったのだが、エースという異物が、事あるごとに私の隣にいて、事件を解決するため隣にいて、コウよりもフランクに話していた。コウよりも喋りやすかった。趣味が合致したからかもしれない。
でも、もしここに奴がいたとしても、私はこの想いを伝えることはない。コウを裏切れないし、愛しているのは事実なのだ。私は肉欲に駆られて複数人を愛するくらい器用ではないし、コウを悲しませたくはない。
「………あいつ………原作キャラどころか、私さえも生き永らえさせようと………たったひとりで立ち向かうなんてさ………私の知らないコネとかもありそうだから、本部がキャッチするよりも早くアンノウンの数を知ってたんだろうけど。だからって………仲間外れにすんなよぉ………私たち、相棒だろぉ? ざけんなよぉ………私は戦えないけど、最終決戦くらい………グラディオスで一緒に戦わせろよぉ………」
夜空を見上げて泣いていた。
最近、なにがあっても泣けていなかったから、泣いていい状況ではなかったから、限界だったのかもしれない。涙腺が壊れてしまったかのように涙を流し続けた。
「しーな」
「………ライラ?」
大声を上げていたつもりはないのだが、自動販売機などの灯りで見えてしまっていたのか、ライラが後ろに立っていた。彼女は躊躇うことなく私の前に座り、いつも私がしているように抱きしめてくれた。
「ひとりのこされるの、さみしいね」
「それだけじゃ、ない」
「わかってる。しーなもたたかいたいって、わかってる。えーすにならびたいもんね」
ライラには全部見通されていた。
彼女は一種のエスパーみたいなところがあるし、人間の感情をより理解できるようにもなった。
「えーすは、みんなをまもりたかった。でもだいじょーぶだよ。きっとまたあえる。そんなきがする。らいらも、らいらのこと、わかってきた。らいらとおなじ………えっと、しゅぞく? あのおそらのむこうにいっぱいいる。でも、らいらはしーなもえーすも、みんながすき。おなじしゅぞくでも、たたかっておしえてあげるの。にんげんといっしょにくらせるんだよって。りかいしてもらうのには、じかんがかかるかもだけど………そのときは、しーなもいっしょに、みんなを、ええと………せっとくしてあげてね」
「お前………戦うっていうのか? アンノウンと」
「うん。たたかうよ」
私たちは別に、ライラがアンノウンであると教えてはいない。ライラもまた、自分のことをアンノウンであると自覚はしていなかっただろう。他の人間とは異なり、高周波などでアンノウンと意思疎通できる能力があるだけだと教えていたし。
でもライラはいつの間にか、死ななかったからか、自覚を促した。
その上で原作にはない強固な意志を持った。
同じ種族───アンノウンと戦うと決意を固めた。
それは辛いことのはずだ。私でいえば人間を殺すようなものだ。でもライラは選択してしまった。
愛のために。
でも私は、この時はライラの決意の一遍も理解しちゃいなかった。
しばらくして、まさかあんなことになるとは予想もしていなかった。
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テンション上がります!
絶望はまだ続くのですが………その様相も変わり始めます。
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