もう戻れないB17
イレギュラーの第三形態に対してもイレイザーが有効だとは。
シミュレートはしていたが、現実になると興奮を禁じ得ない。
『俺が穴を空ける! エー先輩は後ろから付いて来て!』
頼もしいエースパイロットだ。
『一旦グラディオスに戻り、ブラスタージャケットに換装する! 支援攻撃は任せろ!』
地上のアンノウンを掃討したコウがハーモンとともに帰投する。
『ならミサイルシャワーはこのままドバドバ浴びせ続けるぜぇえええええ!!』
煩いトリガーパッピーくんことアレンは今日もご機嫌だ。支援攻撃が優れていて、イレイザーに向けようとした触手に次々とマイクロミサイルを直撃させていく。
『ユリン、シェリー、ヒナ、アイリは俺に続け! イレギュラーを阻止する! ソータとエースを援護する!』
戦闘空域で戦力を分割したシドウは、残るハナ、キルカ、ナリヤ、マイアにアンノウン残党の処理を託し、こちらに合流する。
『物量差で勝るなら、こっちだって!』
アイリがドローンカメラを従えて覚醒を発動。10機を脳波でコントロールし、オールレンジ攻撃に特化させつつ、的確に撃ち抜く。
『特殊弾、残弾3。でも通常武装でも有効だっていうし、このまま狙い撃つ!』
シェリーは覚醒を維持していた。無茶をする。それともタフゆえか。粘り強い性格をしているものな。夜はそれで何度も殺されかけた。
全員がイレギュラー討伐のために合力する。
赤い巨木は次々と枝を失う。が、前回と異なる攻撃手段も用意していた。
枝ではなく樹木の方だ。機械的な部分が残っていると思いきや、巨大化したヘビィガンの砲塔が出現する。それも各方面に複数展開。一斉射撃を開始。これにはイレイザーも一旦退くしかない。戦艦の主砲並みの攻撃力であった。
どこでそんなことを学んだのやら。いや、今はこれを回避しつつ反撃できる隙を待つしかない。
シドウ率いる可変機部隊はディフェンスを切り変える。シェリーとアイリを守るべく、ユリンとヒナが前に出て、パピヨンジャケットやビームシールドで受け流す。パピヨンジャケットなら可能だが、ビームシールドはそう何発も耐えられるものではない。傘のような形状を活かして受け流してはいるが、ビーム発生基部、コアと呼ぶ部分が破損してしまうとシールドとして展開できなくなるデメリットもある。そこでシドウがヒナのフォローに入る。ともに砲撃を受け止めて流すことで負担を半減させた。
『地上に被弾! このままでは辺り一帯が焦土となります!』
『火災も発生! 早期鎮火しなければ拡大する恐れがあります!』
オペレーターが報告する。それはよくない報せだ。
『ハナ、キルカ、ナリヤ、マイアはアンノウンの討伐を1分で終了させ、補給のためにグラディオスへ。マイクロミサイルポッドを外し、消火弾に換装を! イレギュラー討伐のために空域にいるガリウスはポイント維持! グラディオスから注意を引いてください! 2分後に対抗策を発動します!』
こちらが用意した策が崩壊し、乱戦に突入した今、戦略もなにもないのだが、我らが参謀は途中からでも策を練れる有能な男だ。
途中だとしても予想できるすべての可能性を模索し、危険に備えつつも、打開策を講じる。これが仕事だとしても実行できる者は、連合軍の参謀たち、戦術アドバイザーたちのなかで何人できるか。クスドは若年ながら、すでに本部でも務められる手腕を持っている。
『聞いたな! なんとしても2分稼げ!』
前後なり上下左右なり、隙間なく赤い巨木を囲むガリウス部隊。
持てる戦力をすべて投入し、火砲を浴びせる。
近接戦を得意とするパイロットを温存し、射撃技術に優れたパイロットが前に出て、左へと誘導するような砲撃を浴びせた。
挑発ともとれるそれで、赤い巨木が傾ぐと、シェリーとアイリへとターゲットを絞る。
『余所見してんじゃねぇよお前!』
マルチプルシールドが変形。キャノンを展開するイレイザーが、ビームを浴びせる。
要塞に搭載された無数の砲台に狙われつつも、イレイザーの特徴たる敏捷力にものを言わせる挙動。砲撃に隙間がないわけではない。わずかであったとしてもソータは間断を狙い、イレイザーを捻じ込んで、どれだけ不安定な体勢になったとしてもギリギリのバランスを保ち、発砲を継続する。
そのイレイザーも左に流れるように動く。赤い巨木も誘われるように追尾する。
「くっ………いくらオリジナルのレイライトリアクターを搭載してるとはいえ、ショートライフル程度じゃ火力が出やしねぇ。シェリー! そのライフル貸してくれ!」
『なにをするつもりですか?』
「特殊弾に対応した新型なら、リヴァイヴにも適合してるはずだってことだよ」
火砲を回避しつつもシェリーの五号機に接近。丁度特殊弾を撃ち終え、通常のスナイパーライフルに持ち替えようとしたところだったので、新型のライフルを受け取る。
「コンデンサー起動、経由よし。使用権限更新。レイライトリアクター接続。っしゃあ! 思ったとおりだ。シェリー。お前もリヴァイヴの動力、使っていいぞ!」
リヴァイヴにはタキオンにない機能が備わっている。動力付属に陥った味方機の補助を目的を目的としたもので、腰の後ろにケーブルがあり、端子が射出されると五号機が受け取ってスナイパーライフルに接続。
『わ、消耗予想が一気にゼロになった。スナイパーライフルが壊れるまで撃ち続けられるんですね』
ガリウスのライフルにも歴史がある。特にビームに対応すると面白い分布を知ることができる。
ビームを放つにはエネルギーが必要だ。そのエネルギーの供給はふたつの手段がある。ひとつは外付けのエネルギーパックを弾倉にすること。マガジンとするのだ。もうひとつは機体からエネルギーを供給すること。
ガリウスGは双方とも対応していたが、第1クールは前者であり、第2クールは後者である。適応と進化の過程で最適化を行った。
その反面、デメリットとしてエネルギー供給量のバランスを気にしなければならなくなった。
レイライトリアクターは半永久機関同然のエネルギー生成機関であるが、それは一定の量であって、一瞬で倍の量を量産することはできない。ビームを用いたライフルを使えば、貯蓄していたエネルギーが減ってしまう。最悪パワーダウンすることだってある。
宇宙空間で行ったダイレクトサポートが困難になった以上、各自でマネージメントを行う必要がある。が、リヴァイヴは別だ。
というのもリヴァイヴのレイライトリアクターはガリウスGよりも巨大で、エネルギー製造量が多く、なおかつビーム兵器が少ない。コストパフォーマンスに優れているものの、持ち腐れていた。その問題はタキオンの時代から痛感していたので、リヴァイヴに改修する際に、昔の俺がやっていたように僚機にダイレクトサポートを行えるよう設計したのだ。
「好きなだけ撃っていいぞ。ライフル程度のエネルギー消耗率なんざ、大したことないんだ!」
『じゃあ、遠慮なく!』
リヴァイヴと五号機によるビームの照射が始まる。
まだ焼け石に水程度だが、クスドを信じるしかない。
『わっ!?』
「好きに動いていいぞシェリー! 合わせる!」
『了解』
デメリットとしては、このケーブルを常に繋いでいなければエネルギーの供給ができないということ。そしてケーブルの長さは最大で10メートルしかない。
リヴァイヴと五号機は、常に同じ方向で、回避する。
脳内チップを使い、シェリーの回避パターンを分析して、五号機のモーションにシンクロさせて動きながら照射を継続した。
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