もう戻れないA08
「おい。なんだこの品の無いハムスターは」
「ビィィツくぅぅうん? あんまし舐めた口きいてくれてんじゃねぇぞコラァ。テメェが今、平然と呼吸ができてるのは誰のお陰だと思う? ぁあん? 油断してっと、ガチでテメェの尻穴に特製の鉄の棒を挿入してやっからなぁ!」
「………おい。おい、出来損ない。こっちを見ろ。なんなんだこのイカれたハムスターは。こいつ、俺の尻を狙って………え?」
「前科はある。すでにコウが掘られかけた」
「イカれてやがる」
「同感だ」
「ブチ殺すっ!! そのあと両方ともブチ犯す!!」
この野郎ども。2日前は殺し合った仲のはずなのにな。因縁のライバルのはずなのにな。私を前にした途端に仲良くなるとはどういうことだ?
そんなに望んでいるなら、リクエストどおりに尻に鋼鉄を捩じ込んでやる。立てなくなるくらいピストンして、汚い悲鳴を上げさせてやる。覚悟しろよクソどもめ。
「っていうのは冗談だ。こいつがお前の疑問の鍵を握ってたんだよ。ちなみに、俺はお前の凶悪プランのせいで医療ポッドに漬けられてたから指示の出しようがない。まぁ、事前にヒントは出しておいたんだが………シーナはそれを参考に最適解を出したよ。俺が行方不明になって、たったひとりでお前と戦ったんだ。大したもんだ」
「脳内チップ持ちか?」
「いいや? けど、強いて言うなら………3人目ってところかな。おっと、どういうことかは口に出すなよ? 俺とシーナで賭けをしてるんだ。負けられねえ戦いだ」
「っ………そういうことか。なら、辻褄が合う」
ビーツは気付いた。私が転生者であることを。
エースがそれについて口に出すなと言ったのは、部屋の外で監視しているコーネリアの部下たちに聞かれないためだ。負けられない賭けとかいうのも含めて、絶対あとでなにか聞かれるだろうけど。
それにしたって、エースはなにを考えている?
確かに話数的にももう終盤で、ビーツの無力化も完了しているから、ネタバレしても構わないのだろうけど、なぜ今? 別に最終回の後でもいいじゃないか。
………なにかを、焦ってる?
まるで時間がないことを気にしているような。けれど私の記憶ではまだ数分ある。ビーツの聴取でそこまで時間を要する説明もない。
なら、なにを?
「こいつは色々と優秀でな。俺とほぼ同じ思考ができる。だから俺が不在となっても、その考察力でお前の策を看破できたんだよ」
「ふっ………お前がいないグラディオスなど、数分で落とせると思ったが、アークが収穫も無しに帰り、ジョーですら失敗する顛末に、かなり違和感を覚えたが、そういうことか」
とても納得した様子のビーツは何度も首肯する。
「ジョーの状態は、俺も察知していた。脳内チップが使えなくなる事態など想定すらしていなかったが、この出来損ないが不在のなかで第2の頭脳を潰すどころか存在を察知できなかったのが敗因に直結した。そういうことか」
「まぁな。俺がいないからって舐めたからこうなった。このハムスターの牙を侮るなよ痛ぇっ!」
まだ私をハムスター呼ばわりするエースの尻に蹴りを入れる。
「ハァ………ビーツ。あんたも色々考えてたんだろうけどさ。私はあんたに従うわけにはいかなかった。どちらかといえばエースの指針の方が、私は好みだったからね。けどまぁ、孤軍奮闘した割には頑張った方だな。これからテンプスと同じところに行くのか、死刑になるのかはわからないけど、あんたが泣こうが喚こうが、許すつもりはないよ。ジョーを見殺しにした時点で、私の業も深くなった。冷淡な女だって蔑んでくれてもいい。私はエースよか甘くはない。だから、まだ逆転するつもりなら、一応警告しておいてやる。今度私の身内に手ぇ出してみな? 八つ裂きにしてやる」
そう。私はエースとは違う。
エースは敵だろうと情けをかけて生かしてしまうが、私はそうではない。
ジョーを見殺しにした前科がある。ハナが所持していた自爆プログラム入りのメモリーを盗み、輸送機を強奪して脱出したあの馬鹿が、欲望に駆られてお宝を発掘するように輸送機にプログラムをインストールして確認しようとするのは読んでいた。結果的にハナの代わりにジョーが輸送機の爆発に巻き込まれて死んだ。
私は銃を撃てる。これでも成績はいい。今回は私がトリガーを引いて撃ち殺したわけではないが、結果的にそうなってしまった。私がジョーを殺したのだ。いらないからと。不要で、邪魔だからと。私はそれができてしまう女なのだ。
「………ふっ。そこの女の方が、余程お前よりも完成しているな。もう少し胸が大きければ俺の女にしてやりたいくらい優秀だが、こんな幼児体型では勃つものも勃たん」
「計画変更。今すぐテメェの尻を掘ってアヘアヘ言わせてやるよォッ!!」
「だからそれをやめろって言ってんだよ。お前優秀なんだから、こんな挑発に乗るなっての。あー、もう。暴れるなって。これじゃ聴取にもなりやしねぇ。お前のせいだからなビーツ。今度こいつに会った時が最後だ。尻の穴は一生使い物にならなくなると思え。ハァ………連れて来るべきじゃなかったか」
怒りのあまりビーツを殴り、そこらにあった適当なものを尻の穴に挿入してやろうとすると、エースに羽交締めにされる。そのままズルズルと部屋の唯一の出入り口に向かった。
「じゃあなビーツ。また会えるかはわからないけど、いい子にして刑期を満了させることだ。優等生でいることは得意だろ。懲役100年が99年に短縮されるくらいの温情はかけられるんじゃないか? ここのひとたちの尋問に協力しろよな。さもなきゃ、また俺が召喚されることになるだろうぜ。嫌味のオンパレードなんざ聞きたくないだろ?」
「やめろエースゥゥウウウ! こいつを、こいつの尻を今から拡張して、3日後にはガリウスのマニュピレーターを挿入できるようにしてやるんだぁああああああ!」
「殺すつもりかアホ」
「アヘらせてやるってんだよぉぉおおお!!」
同じ軍人とはいえ男女の体の違いというやつか。私はあっさりと部屋から出されてしまった。
結果的にはろくな収穫がなかったが、俺の脅しが効いたのか、俺たちと入れ替わりで入った人員による尋問に、ビーツは少しずつではあるが応じるようになった。
余程シーナに尻を掘られたくないらしい。女にレイプされる男っていうのは、薄い本とかなら俺も少しだけ興味が………違うな。俺がいつも、毎晩のようにヒナたちから受けている仕打ちそのものだ。
エキサイトしたヒナがあの時、本当にビーツを殴ろうものなら、色々と問題があったので連れ出して正解だった。
「お前、色々考えて行動しろよな。お前が接近した途端に、ビーツがお前を拘束して人質にするって可能性もあったんだぞ」
「上等じゃねぇかチクショウ! 私を人質にできるもんならしてみやがれってんだ! 拘束されてるクソ野郎の尻を掘り倒すことの方が楽勝だ!」
「こうして俺に拘束されてるバカがなに言ってんだ。あと、時と場所を考えろ。いくらお前の古巣が所有する艦っていっても、今はコーネリア少将が借り受けてんだ。お前の顔見知りなんていないだろ。ド変態妄想を叫び続けてくれやがって。そのせいで今も俺までド変態扱いされるような目を向けられてるって気付け」
もうここには用がない。すぐにでもグラディオスに帰るべく、ボートに乗るためにシーナを肩に担いだまま歩く。背を拳で叩かれたり、胸を膝で蹴られもしたが、可愛い抵抗だ。痛いだけ。あとでユリンに絞めさせることが決定。
すると、甲板にヘリコプターが着艦し、そこから降りてきた女性と目が合った。
そういえば直接的な面識がなかった。それでも一発で名前がわかる。
周囲がその女性に敬礼していた。女性の名はコーネリア。ここのボス。
そのコーネリアは凛々しい笑顔で俺に向かって歩み寄ってきた。
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