因縁との決着B22
『ソータ! 僕は………お前と一緒に、また家族として………』
『それなら素直に言えよ! 俺と一緒に行きたいって! つまらないことに拘ってないで、プライドも捨てて、俺のいるところ………グラディオスに来い! 受け入れてやる! だってお前は、俺の弟なんだから………だから、お前はもう落ちろぉぉおおおおおお!!』
『うわぁああああああああ!!』
原作とは少し違うけど、ソータはアークが自分の生き別れの双子の弟だと認めた上で勝負を行い、そして勝った。
俺の視界の片隅で、マルチプルシールドという複合武器がソードを展開し、漆黒のタキオンを上空から強襲。両腕を肩口から切り取った。漆黒のタキオンは墜落し、その死を課せられた義務であるかのように海面に落下する寸前だったのを、白銀のイレイザーが追いついて墜落を阻止。抱きかかえて斜め上へと飛翔していく。
これでアリスランドの切り札は潰した。
アリスランドはここから逆転できる手段はない。
漆黒のタキオンはソータが無力化し、アリスランドは二度目の暴挙を防ぐためにグラディオスとコーネリア指揮の艦隊が落とす。主砲を重点的に狙って潰したあとに飛行能力を奪った。
残るはビーツ。今回の戦犯。そのビーツは脳内チップを使えない。仮に俺を下したとしても、ソータが後ろに控えている。擬似覚醒を使えたとしても、本当の覚醒を使えるソータには勝てない。
それでもビーツは抵抗を試みる。往生際もない。………いや、違うな。これは俺とビーツの勝負だ。
この第21話のタイトルは「因縁との決着」である。グラディオスとアリスランド、ソータとアーク。それが原作の本筋だが、便乗する形で俺とビーツの、前世では小此木瑛亮と楠木美壱の、因縁に決着を付けようとしているのだ。
誰にも止められない。この一騎打ちだけは邪魔をされたくない。ビーツがそう思うように、俺も強く願う。
祈りが通じたのか、アリスランドを無力化してコーネリアとグラディオスの砲雷科が艦内に突入し、一斉に制圧するなかでも、グラディオスの甲板に降り立つガリウスGは、一切手を出さずに見守ってくれた。
「遺言代わりに聞いておいてやるよ。最後の晩餐は、なにが食べたい?」
『テメェの頭蓋で作った盃に、日本酒を注いだものを一気飲みしてやる』
「第六天魔王かよ」
もちろんビーツにそんな趣味はないことは知っている。酒好きなのは前世から同じだろうが。
これでも気を遣った方なんだけどな。
戦犯たるビーツは制圧後、勾留されて罪状を数えられ───死刑は免れないだろう。
いくらオルコットという後ろ盾があるからといえど、敵味方に犠牲を出し過ぎた。レイライトブラスターでレオ大隊を壊滅させたことをワプスは法廷で糾弾するだろう。
オルコットはどうせビーツを切り捨てる。わかりきった未来。ならば、同じ故郷だったよしみで最後くらい好きなものを食わせてやろうというのは、俺のせめてもの温情だったというのに。
俺との勝負に勝っても負けても同じ未来を辿るのにな。プライドだけは高いのだから。
『無駄口を叩くな………始めるぞ』
「ああ。いつでも」
リヴァイヴと漆黒のイレイザーは、ゆっくりと推進する。
歩き出すような速度。しかし徐々に加速する。
この海域にいる誰もが固唾を呑んで見守るなかで、ついに───
『死ねぇえええええええええ!!』
「死なねえよ!!」
久々の操縦は若干緊張したものの、気合いで上書きする。
眩暈がしそうな熱を帯び、動悸が激しくなるなかで、咆哮とともにリヴァイヴを発進させた。
リヴァイヴは俺の操縦に応えてくれた。やはりドローンカメラやガンビッドとは違う。
操縦桿捌きやペダルの踏み方、スロットルレバーの緩急。いつかソータに抱えられて宇宙を縦横無尽に飛び回って意識が飛びかけたことがあったが、俺はあの頃のソータに追い付けただろうか。
単純なパイロット同士の技量と体力と精神力の衝突。ソータたちがいつもやっていることを、ビーツとの最終局面で実践するとは思いもしなかったが、自信がないわけではない。勝機はある。俺が見逃さなければ、主人公機を作り上げたライバルに届くはず。
「ぐぅ!」
『ぬぁ!』
真正面からの衝突。ショートライフルのブレードと、ロングソードの鍔迫り合い。
機体のスペックはおそらく漆黒のイレイザーの方がまだ高いが、それをカバーする要員ならある。
高速で打ち合う。ショートライフルの銃弾はレイライトリアクターから供給されるエネルギーをビーム兵器に転用したものだが、それを撃つくらいなら機体の制御に回す。あくまで近接戦で、ガリウスの醍醐味とされる白兵戦で決着をつけたい。
『オラァ!』
「チッ!」
漆黒のイレイザーが全身を回転させ、全力のフルスイング。左手のショートライフルの銃身ごとブレードが砕かれる。
『やはり俺より劣って、ッ!』
「誰が劣ってるって?」
まだ右のショートライフルが残っている。ブレードを振り抜いたばかりのロングソードに叩きつけ、叩き折る。オールパーパスジャケットのアンカーを受け続けたことで耐久値が下がっていることはわかっていた。わずかに発生していた亀裂を狙うと、刀身が綺麗に半分に折れる。
『レンジが統一されたか。だが………っ!』
「お………!」
漆黒のイレイザーが全力の後退。その時、俺が狙っていた勝機の兆しが顕著となり始める。ビーツ自身、あまりの興奮と倦怠感により、まだ察知できていない。
「今しかない!」
漆黒のイレイザーを追う。ショートライフルのブレードで、何度も殴りつけた。ビーツは半分ほど残ったロングソードで受けつつ応戦する。
『なんだ? この感覚………鬱陶しいな! お前の仕業か小此木ィッ!』
「なわけねぇだろうがぁ!」
ロングソードの扱いはうまかった。ショートライフルの銃身とブレードの接続部を狙われて、強引にブレードを剥ぎ取られる。銃身のみでは打撃武器としては一度限りしかもたないだろう。よってあえてパージして、オールパーパスジャケットのプレートを掴んで引き抜く。
『なにをしているエース! それは掴んで使用する設計はされていない!』
ケイスマンの意思が忠告するも無視する。ワイヤーを掴んで、分銅鎖のように振り回しながら、中距離攻撃を行う。
すると、刻一刻と過ぎていくなかで、なんと漆黒のイレイザーが徐々に失速し始めたのだ。
『馬鹿な………機体が、重い………なぜ思い通りに動かん!』
「イレイザーだからだよ」
『なんだと!?』
「お前、なに勘違いしてんだ? イレイザーのコンセプト考えろよ。それはソータのスペックだからこそ扱える機体だ。じゃあ、ソータのスペックってなんだ? 特徴ってなんだ? それくらい思い出せるだろ?」
『………覚醒』
「当たり」
しまった。と失態を悟る声を出すビーツ。実に滑稽である。
肝心なことを自分で忘れ、脳内チップという唯一の補助能力を自ら放棄した馬鹿の末路には相応しい。
「所詮、俺たちは覚醒も使えないモブキャラなんだよ。そのことを忘れて自分だけの世界に浸り、自分が主人公だって勘違いしてるからこうなる。俺も、お前も、その格と器をしていないってことに………いい加減気付きやがれぇええええええ!!」
『違う………俺は、俺はこの世界で、俺だけにしかできない偉業を………うわ、ぐ、が、ぁぁぁああああああああ!!」
鞭のようにしならせた両手のプレートが、ついに停止してしまった漆黒のタキオンの頭部を切断。両腕、両足と奪っていき、最後にコクピットブロックを避けた胸部に突き立てる。
大将機を討ち取った。ついに。この俺が。
戦争が終わる。勝利したのだ。
ゆっくりと右腕を高く掲げる。
『うぉぉおおおおおおおおおおおおお!!』
全方向から勝鬨が上がった。
ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!
思いの外、熱中症がしんどく、ストックが作れませんでした。申し訳ありませんが、明日は2回更新とさせていただきます。マジで熱いですねぇ………
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!




