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因縁との決着B20

『………ありえない』


 やっと喋ったか。


 ビーツが切り札として温存しておいた巨大なライドアーマーが、ただの鉄くずとなって海に落ちて行く様は、そりゃあもう目を疑うというか、その現実を否定したくなるだろう。


 外から見れば、リヴァイヴが意味ありげに垂らし、飛翔時には姿勢制御のために両翼の形状を変えたりするそれだが、漆黒のイレイザーが搭載していたパイロットにダイレクトアタックをする細いワイヤーを切断する程度にしか性能がないと思われていたのだろうが、そうではない。


 このプレートにも意味がある。


 両翼とプレートはワイヤーにて有線接続されているが、初撃はただ降下するだけで疑われもしなかったが、今回の攻撃はプレートを水平に飛ばす。


 ビーツは漆黒のイレイザーのメインカメラでそれを見ているだろう。ゆえに、推進器を持たないただの鉄板が、自分の意思によって飛んでいるように見えたに違いない。


『なぜ………あんな放熱板や、可変翼にしかならない鉄板が………あんな動きをして………刺さっただけでジェノサイドジャケットが爆発する!?』


「ファンタジー漫画に出てくる魔法とでも思ったか? そりゃねぇだろ。まぁお前の知ってる素材なのかは知らないけどな。プレートはあくまで攻撃用。肝心なのはワイヤー。推進力を作ってるのが、このワイヤーなわけだ。作るのに苦労したけど成果はあった」


『な、なにを言って………』


「液体金属だよ。流石のお前も、ガリウスに液体金属なんぞを使うなんて発想はなかっただろ」


『液体金属!? そうか………宇宙から取り寄せたか! だがどこから………エングレルファクトリーでなければ………オードリアインジェクションからだと!? どこでそんなツテを手に入れた!』


「ひょんなところからさ。かつて、お前が使い捨てようとした命を、有効活用してやったんだよ!」


『………トーマスか! クソッ、あいつ………情報を提供してやった恩を忘れて、俺ではなくお前の側についたのか!』


「命を弄んだ分際で、被害者ぶってんじゃねぇよ下衆野郎! これまでお前が不要と言って切り捨てた因果か、応報って形で返ってきただけじゃねえか! これは、お前がやってきたことそのものなんだよ。この世界のすべてを現実のものとして受け入れず、他人に責任を押し付けて、ゲーム感覚で操ってきたことへの報いだ! お前はなにもかもを敵に回した。だから誰からも手を差し伸べられない!」


 ビーツは非情過ぎた。この世界の根幹に触れられる立場でいながら、様々なものを私物化して弄び過ぎたのだ。


 だからそれが報復という形で返ってくる。


 今もなお、それがまざまざと現れていた。


『なにっ………!?』


 ジェノサイドジャケットとかいうデカブツが破壊された、その数秒後のことだった。


 グラディオスの甲板にいる九号機と十二号機が協力して超長距離射撃を行う。目標はアリスランド。ビーツの支援をするべく前進を始めたのだ。ブラスタージャケット、陽電子砲で牽制を行うコウとハーモン。


 アリスランドは応戦しながら下降する。この海域で唯一飛翔能力を有している艦ゆえの持ち味を活かす操舵。ところが、そんなアリスランドにさらなる難関が迫る。


 多数のミサイルや長距離砲が発砲されたのだ。グラディオスだけではない。これは───ドイツ支部の艦隊だ。


 脳内チップを使いハルモニに開戦からこれまでのことのあらましをすべて見せてもらったが、ビーツの極悪非道な行いでアメリカとドイツに多大な被害が出たことには間違いない。


 ビーツは友軍をも使い捨ての駒とした。直掩の第2のレオ大隊を全滅させてまで勝利しようとした。


 もちろん、第1のイーグル師団のトップにいるワプスもこんなことになるとは知らなかったし、予定として聞いてすらいなかっただろう。こんな暴挙じみた愚行を事前に耳にしていたら、決してレオ大隊をアリスランドの直掩に差し向けなかっただろうし。


 今、なにが起こっているかといえばだ。


 ビーツの暴挙からそれなりの時間が経過して、友軍のみならず敵軍であったアメリカ艦隊の救援を行ったドルテが、人命第一に残存するイーグル師団の艦を助けに入り、そこに第3のペガサス大隊の艦が到着し、より効率的にアメリカ艦隊を支えることができ、それ以降出るだろう犠牲を最小限に留めることができた。


 すると、コーネリアという少将がドイツ支部艦隊を一部引き連れて、報復行動に出た。グラディオスとともにアリスランドへ攻撃を開始したのだ。


 これに激怒するビーツ。俺と通信する傍ら、怒りのあまりワプスにも回線を繋げて怒鳴るという失態を犯す。


『ワプスゥッ! なにをしている! こちらの旗艦が攻撃されている! コーネリアの艦は無防備にも後ろを向けているのなら、とっとと殺せェッ!!』


『お断りする』


『ァアッ!?』


『ビーツ艦長。我が艦隊の状態を見てわかりませんかな? 予定として一切聞かされていないあなたの強行策によって、我が艦隊も多大なダメージを負った。………不要とさえ思える犠牲を大勢出した。これ以上の作戦行動は不可能です』


『俺を舐めるなよワプス! 第3のペガサス大隊が支援として駆けつけたじゃねぇか。そいつらを攻撃に回せ! 弾薬、ガリウスをたっぷり持ってるじゃねぇか! なにが作戦行動は不可能だ。まだ戦える戦力を有しながらボイコットするたぁ大した精神力だが、そんなふざけた行為は俺が認めねぇ! 俺の言葉は連合軍本部の幹部、オルコットの言葉と堂々の権力を持つことを忘れたか? 俺の命令は絶対なんだよ! ほら、とっととやれ! 俺に仇なすすべてを殺せェッ!!』


『その締まりのない口を閉じたまえビーツ艦長! 貴様の勝手が過ぎる愚行でレオ大隊の、私の部下が大勢死んだことを忘れたか! もう貴様は信用ならない。オルコットがどうした! どうせ宇宙の、地球から遠い場所で見下ろす幹部など、地球で発生したこの事態など些細な問題としか見ていないだろう! いつまでも我々を縛り付けられると思うなよ小僧が! 貴様が先に我々を裏切り、掛け替えのない命を奪ったのではないか! 信用に値しない者など総司令として据えることはできない。我々は、我々にために動く! 戦争をしたければ、貴様の大事なお船だけでやりたまえ! 信用という問題においてはつい数分前に殺し合ったとはいえ有事において逸早く敵であろうと助けてくれたドイツ支部のドルテ支部長や、コーネリア少将の方が信頼に足る!』


『こ、このっ………!』


 おうおう。言われちまってらぁ。


 四面楚歌とはまさにこのこと。


 頼みの綱であったワプスはビーツの指揮下から離脱した。これで国同士の戦争は終結。


 あとは───


『ようやく貴様に鉄槌を下せる時が来たな! 命のなんたるかを知らない小僧め。所詮、貴様などこれだけの部隊を率いれる格や器ではなかったということだ! 覚悟しろよクソガキ! まずは額ずいて詫びを入れろ。無様に命乞いをしながらなぁ!』


 この力強い女性の声は………おお、これがハーモンの姉のコーネリアか。原作には登場しなかったから、初めて知った。ベテランの女性声優が担当しそう。


『命乞い? そんなことするはずがない!』


『そうか。ならば………エースとやら。聞こえるな? グラディオスのみならず、私からもオーダーだ。そのゴキブリのような色をするガリウスを落とせ! そこにいる此度の戦犯を、私の前に引き摺り下ろしてもらいたい! できるか!』


「こちらエース少尉であります。オーダー、承知しました。縛り上げて、泣きっ面のまま少将の前に傅かせてご覧に入れます」


『ふっ………噂に名高い問題児と聞いて、どんなクソガキかと思えば………なるほど。これがビーツとかいう真正のクソガキと似て非なる、信用に値する者の声か。面白い。やってみせろ!』


 うっほ。コーネリアかっこいいな。本編に出て来なかったのが不思議なくらい。登場すればよかったのに。絶対ファンは食いつくよな。


 テンション上がるわ。このモチベーションを維持して、ゴキブリ色と称された漆黒のイレイザーに向き直る。


「了解! じゃあ、ビーツ。そろそろ決着つけようや。俺とお前、どっちが上なのかってなぁ!」


 リヴァイヴが漆黒のイレイザーに肉薄する。両翼から懸架するアンカーを一斉に放出した。


 このオールレンジ攻撃こそ、リヴァイヴの真価である。


ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!

Bパート、気付いたら20話超えてました………


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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