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因縁との決着B19

 今頃、漆黒のイレイザーのコクピットのなかで、ビーツが右の義眼を黄金に輝かせるエフェクトを放っていることだろう。


 覚醒者の特徴として、双眸にエフェクトを纏うのだ。


 その光芒が、なんともファンの心を鷲掴みにする。俺もそのひとり。


 そんなアニメの世界に転生したのだから、いずれ世界最強の力や覚醒が使えるようになる───なんて夢物語が都合良く発生するはずがない。


 努力し、より努力し、研鑽を重ね、検証し、結論を得なければならない。


 ビーツのそれはある意味で転生者にとって、ひとつの理想と言えるだろう。


 ビーツも転生者であったが、俺と同じように覚醒は使えない。そうであるばらば人工的に作るのも手段のひとつ。擬似覚醒は本来の覚醒とは異なり、性能は落ちるし脳への過負荷も強そうだ。しかしそれを対価として、強靭無敵の無二の力を得る。中二病、ここに極まれり。


 ある意味で人類の暗黒な部分に手を伸ばしたどころか掴み取ってしまったんだな。


 それはそれで構わない。ビーツがその道を模索して歩き出すことに、異議を唱える立場ではないし。


 だから俺は俺の道を行く。


 脳内チップの数は違う。だからそれ以外の、第3の手段を講じた。


 覚醒に対抗するには覚醒しかない。ソータとアークを見て、そう思った。けれどもそれのみが正解ではなかった。無いものねだりしてもなにも始まらないというのなら、無ければ無いなりに工夫するしかない。


『無残に切り刻んでやるよ小此木ィッ!!』


《直進、はフェイント。0.2秒のブレーキののち右手に転進。機体及びパイロットでさえ反応できないタイミングで強襲。狙いは腰のスラスター。こちらの急な方向転換に使う推進源のひとつを奪うこと。回避。0.3秒上昇。成功。次は後方からドロップターン。こちらの頭上を取った上で踵落とし。肩と腰のサブスラスターで0.2秒加速。回避成功》


『………なにが、起きてやがる!?』


 時間にしてわずか5秒の攻防。


 漆黒のイレイザーの猛攻を、リヴァイヴは紙一重で回避した。


『今の………明らかに人間の反射速度を超えてやがった。脳内チップだけで可能とする動きじゃない。………お前、なにをした?』


「お前の覚醒を対策せずに、俺が戻ってきたと思ったか? 残念だったな。これくらいならどうということはない」


 ビーツが驚愕するほどだ。きっとグラディオスでも驚愕の度合いは大きいだろう。


『ッ………お前も覚醒を使えるというのか!?』


「死に際に究極の力を見出した。………ってのも王道の展開だろうけど、そういうわけじゃない。お前が覚醒を疑似的に作り出せるなら、俺もまた別の能力を疑似的に作り出しただけ………っ」


 強がってはみせるが、体にかかる負担のことは考えていなかった。


 危うく言葉が詰まり、ビーツに隙を見せるところだった。


 ズグンズグンと左腕の肘辺りが痛む。二の腕辺りで留まっていたのに、もうそんなところまで拡散してしまったのか。


 早いところ、勝負をつけなければな。


『俺よりも頭が悪い分際で、少しは考えたか。フェイントは通用しないようだ。ならば、正面から砕く!』


「正直にそうしていれば、まだ勝負はわからなかったんだよ。教えてやったんだから感謝しろよ?」


『ああ。お前の墓前で感謝の意を捧げてやるよ!』


 口の減らない勘違い野郎だ。まだ俺に勝てるつもりでいる。


 宣言どおり正面から突撃する漆黒のイレイザー。ソニックブームを纏う。リヴァイヴとて巻き込まれれば無傷では済まない。


「ふんっ!」


 壮絶な追いかけっこが始まる。リヴァイヴも全力で加速した。イレイザーという主人公が乗る機体を相手にするのであれば、遊び半分の加速ではすぐに死ぬ。


 空に複雑な軌跡を描く。


 リヴァイヴが猛進した雲は切り裂かれ、青空が頭上の半分を占めていた。


 レイライトリアクターが唸る。推進剤を容赦なく燃焼し、殺人的なGのなか、耐久レースがごとく我慢比べが始まった。


『エー先輩!』


『逃げるなソータ!』


 なんてことだ。いつの間にか、俺たちの空中武闘にソータとアークまで加わった。そういえば先程から、ソータのイレイザーとアークのタキオンは幾度となく衝突し、広い空を余すことなく駆け回っていたのだった。ふたりが加わると、乱闘となる。


 白銀のイレイザーが、シーナが以前から設計していたマルチプルシールドから展開されるキャノンを漆黒のイレイザーに発砲する。漆黒のイレイザーは強引なローリングで躱す。白銀のイレイザーを、漆黒のタキオンが追うものの、最早ヘビィガン程度では白銀のイレイザーを撃ち抜くことはできない。


「ソータ………合わせられるな!?」


『誰に言ってんの? 余裕だよ!』


 俺は眼球が潰れるかと思うくらい辛いのに、ソータはまだ叫べるくらいの余力があった。俺とは違って、Gに対する耐久性も高い。あんな小さな体のどこに、そんな力があるのだろうと不思議に思うくらいだ。


 かくしてソータの協力を得て、俺たちは同時に急制動をかけた。


 作戦を共有してもいない。合図だってしていない。ソータが俺に合わせた。機体の四肢を広げて空気の抵抗を受け失速。そんな機体がいきなり目の前に迫るのだ。漆黒のイレイザーとタキオンは左右に展開して回避する。


「やっちまえ!」


『もうやってる!』


 一斉射撃で漆黒のイレイザーとタキオンを追撃する。マルチプルジャケットのマイクロミサイルポッドからもとんでもない数のミサイルが放たれ、2機はより降下してミサイルを迎撃した。


「おいおい。逃げてばかりでいいのかぁ?」


『群れなければなにもできない虫けらどもめ!』


「あ、そう。じゃあ今、その虫けらとやらに狙われてるお前はなんだ?」


『なに? ぐぉお!?』


 それはビーツにとっても予想外の砲撃だった。


 グラディオスの艦載機は、大半がソニックブームに巻き込まれて中破した。可翔タイプとなったガリウスGに、ビーツを驚かせるだけの砲台を持つ機体はいない。重力下ではデッドウェイトだし、推進力の低下は飛翔の妨げとなる。


 だがそのなかでも唯一、条件の外にある機体があるんだな。それもフレッシュな状態で、このタイミングを待っていた。


 巨大なビーム砲が漆黒のイレイザーとタキオンを掠める。


「ナイスカットォッ!」


『まだ足りない。エー先輩を愚弄した罪を償わせるには、まだ足りない!』


『ってなわけで、遠慮なくこっちに寄越してくれていいっすよ。また頼ってくれると………本当、それだけで嬉しいっすから!』


『ヒャッハァァアアアア!! ミサイルシャワーの時間だぜぇええええええええ!!』


 グラディオスの甲板で機会を待っていた九号機、十二号機、十三号機だ。漆黒のイレイザーとタキオンが下降したことで、射程に入ったのだ。


 可変機となったことで関節が増えた改修型ガリウスGには懸架できないブラスタージャケットは重力下ではまともな運用ができない。よってハーモンとコウが支え合って砲塔を維持し、陽電子砲の照射を可能とした。


 それにしてもアレンは本性が覚醒してから、マジでうるせぇな。ソータのイレイザー以上の攻撃力があるから、玉に瑕だ。見てて面白いけど。


『ッ………本気で俺を怒らせたようだな! 俺がなにも用意していないとでも思ったか! アリスランド! モーリス! ジェノサイドジャケット、スタンバイ! 俺のイレイザーへ射出しろ!』


 意外なことに、ビーツも漆黒のイレイザーにジャケットを用意していやがったのか。


 それはアリスランドの後部ハッチから放たれた。かなり巨大だ。全長───20メートルはある。フルアーマー? 違う。ライドアーマーか。漆黒のイレイザーを搭乗、合体させることで巨大ロボットになりますってか?


「お前………そんな浪漫兵器を持ってやがったのか!」


『お前はなにもかもが中途半端なんだよ。機動力のすべてを削って火力を飛躍的に向上させる。改善っていうのは、こういうこと───』


「させねぇけどな!」


『───は?』


 ビーツの指示で射出されたジェノサイトジャケットとかいうデカブツに、リヴァイヴの両翼から懸架されるプレートが一斉射出され、デカブツにプスプスと突き立つと、一瞬でそれが崩壊した。


 爆発。きっとビーツは絶望を通り越して、唖然としているだろう。


ブクマ、たくさんの評価、たくさんのリアクションありがとうございます!

今週の日曜日は………うーん。たくさん更新できるか不明です。いつもどおり2回な気がします。もう終盤なので、色々と調節が難しいのです。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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