因縁との決着B18
「ぶっ壊れたおもちゃみたいな笑い方だな。どうした? 俺が戻ってきたことが、そんなに嬉しいか?」
『ああ………実を言うとだな、かなり嬉しい!』
「………脳内チップの副作用で、脳みそがイカれたか」
『これまではそうだった! だが今は少し違う。やっと正気を取り戻した気がする。なんだか、長い夢を見ていたようだ。だがお前がここに来たお陰で、それも覚めた。感謝するぞ死に損ない。今度こそ完全な勝利を、俺のものにすることができる!』
なにを言っているのかはわからないけど、とにかくこいつなりに悩んでいたということか。
『あの時………お前を殺すことで確かな充足感を得た。だが長続きしなかった。自己分析した結果、海に落ちた影響で、お前の確かな死という敗北を、目の当たりにできなかったからだと結論を得た。………よく、よくぞ戻って来たな。褒めてやる。何度だって。俺の計画を邪魔するお前を、俺の目の前で八つ裂きにしてやらないと満足できない体になってしまったようでなぁ! さぁ始めるぞ小此木ィッ! 第2クール終盤で勃発した、グラディオスとアリスランドの最終決戦を、俺とお前で彩る!』
「気取ってんじゃねぇよ。もしかして中二病かお前? 彩るつったって、俺とお前の衝突なんざ、この世界全体で見た時の歴史のひとつに過ぎねぇじゃねぇか。なにかの革命とかの契機ならわかるけど、俺たちの勝負程度でそれが塗り変わるとは思えねぇな。まぁいいや。どうしてもっていうなら、その勝負受けて立ってやるよ。来な」
先手はくれてやるつもりだった。
ダランと両腕を垂らしたノーガード状態で迎え撃つ。
ビーツはすぐに誘いに乗った。かなりの距離がある上に初速から全速力に達する漆黒のイレイザーが、猛然と迫る。数々の悲鳴が炸裂した。逃げろだの避けてだのと。いらないんだよな。そういうのは。これは俺にとっても試験だから。最初の試練。これをクリアできなければ勝てない。
『なにっ!?』
「おお、案外うまくやれるもんなんだな」
漆黒のイレイザーがどこを狙うのかは知っていた。リヴァイヴの正中線。コクピット辺りか。
だから漆黒のイレイザーに合わせて、リヴァイヴも全力で後退する。ビーツにとって、マニュピレーターの先端が届きそうで届かない、もどかしい距離を保って挑発する。
『逃げるのか小此木ィッ! 俺が怖いのかァッ!』
「実を言うと結構怖いよ。マジで殺されかけたしな。でもそれだけじゃない。お前が焦りまくってる姿を見るだけで面白くなってきてな。ほら、どうした。もっと気合い入れて加速しろよ。いつまで経っても俺に届かないぞ」
『吐かせ、ぬぐぉあ!?』
「おっと。今のは流れ弾かな? それとも意図的な狙撃かな?」
リヴァイヴを猛追する漆黒のイレイザーのマニュピレーターから、パイロット殺しのワイヤーが放たれる寸前のこと。そのワイヤーを消し飛ばすビームが放たれた。漆黒のイレイザーは失速し、また距離が開く。
『馬鹿な………今のは』
「ソータのイレイザーだな」
『ビーム兵器………あのジャケットか! どうせあれもお前が設計したのだろうが………』
「おお。よくわかったな。原作にはない、イレイザー専用のジャケットだ。ほら、どうせお前もイレイザー作ってるだろうなって思ったし。わざわざヒントまでくれるし。だから差別化するためにプラスワンしといた」
『高速飛行中に直撃させるなど』
「ソータが当てられないとでも? お前、忘れてるな? この世界の主人公は俺でもお前でもない。ソータだ。世界最強のパイロット。その主人公補正は半端ない」
ソータはアークと戦っていた。そのさなか、ビームにまたお礼参りしやがった。
それでもまだまだ足りないだろう。どうせまた撃つ。
「ソータのスペックを活かすジャケットを作ったんだ。実際、苦労したよ。………んで? お前はどうなの? そのイレイザー、無駄にしてんじゃねぇのか?」
『無駄? 無駄だと? この俺がイレイザーを活かせないなど、ありえない!』
「そうか? せっかくグラディオスから情報パクっておいて、せっかくのツインリアクターシステムを搭載したのに、元来のイレイザーのスペックしか使えてないじゃないか。それで満足するとか、お前の限界が見えたな」
『お前の作ったジャケットの方が無駄だ! 余計な背負い物をしているせいで、イレイザーの俊敏性を殺すなど!』
「それは否定しない。でもタキオンくらいの速度は出せるだろ。敏捷力を犠牲に火力の底上げ。それが俺が導き出した、ソータの真価だ!」
今度はリヴァイヴから仕掛ける。日本支部跡地で製造された新兵装、試すには絶好の的だ。
それは2丁のショートライフル。火力でいえばヘビィガンより少し上。せっかくの大型レイライトリアクターを積んでいるのだし、これにリアクターから供給されるエネルギーを使う。
両手に提げるショートライフルを連射しながら距離を詰め、最初こそ回避しつつも応戦する漆黒のイレイザーがロングソードを振り上げた時、ショートライフルの銃身の下に設置した特殊な結晶体を削り出して作ったブレードでロングソードを受け止め、空いた右手のショートライフルのブレードを一閃。
『ぬっ………!』
「すげぇ切れ味だろ。宇宙で作られたものでな。レイライトリアクターとの相性はバッチリだな」
『なぜ、お前がそれだけのものを!? ………待てよ? 確か中国支部に充てられた物資が宇宙から降下し、しかし軌道が逸れて日本海に落下したという事件があったが………まさか!』
「当たり。それ、俺」
『どこまでもふざけやがって………』
「ふざけてねぇよ。真剣にやったんだよ。お前を今度こそわからせるためになぁ!」
これまで俺が積み上げてきたものを否定させないために、ビーツが怒りで耐性を失い、序盤から全力を投じたのならば、俺も本気で迎撃する。
ネイキッド状態とはいえ、やはり主人公の後継機を模した機体なだけある。これで対峙するのは2度目だが、以前と変わらぬプレッシャーを湛えていた。
そうであったとしても、俺が弱気になってはいけない。それは勝負を、命をも放棄すること。ここで俺が折れればすべてが終わる。今まで俺以外のなにかを原作とは異なる方向に変化させてきた。時には破壊してでも。それが俺の業。原作破壊行為。
それらと比べれば、なんて楽だろう。他のなにかを変える必要はない。たったひとつ、俺が負けさえしなければいいだけなのだ。
「ハルモニ! 俺の脳内チップの解析は済んでいるな!」
『イェス。データベースにはない、状態異常を検知。メカニック・エースのバイタルに一定のなにかを付与しており、多大な負荷に直結しております。即座に戦闘を中止し、メディカルルームに搬送するようドクター・レイシアにコールします』
「それは後にしろ。状態異常なんて最初から知ってる。それよりも、その負荷とやらをガンガンかけていくから、情報処理頼む。ビーツの擬似覚醒に対抗するには、もうこうするしかねぇんだ!」
『………イェス。メカニック・エース』
タキオンの後継機、リヴァイヴに秘められた機能をフルで行使するには、俺が変わるしかなかった。
ビーツはおそらく脳内チップを2つ制御下に置き、擬似覚醒を発動するためにギリギリを攻めている。脳みそまで機械化されていくような、死ぬまで効率性を求める代わりに、人間らしさや、人間であるためのなにかを失っていく。
だからこんな凶行に出た。海に向かってレイライトブラスターを放つなんて多大な犠牲を出す選択を平然としてしまうのだ。
そんなビーツに勝つためには、俺が無傷で済ませるわけにはいかない。
強大な力というのは、いつだって犠牲や代償が必要とされているのだから。
『うろちょろと………いい加減に八つ裂きにされろ小此木ィッ!』
来た───ビーツからザワッとした、禍々しいプレッシャーが放たれる。異物混じりの擬似覚醒。漆黒のイレイザーの挙動が段違いとなる。
「来た………カウンター起動! 感覚を………フルに!」
擬似的だろうが覚醒には違いない。
覚醒を使えない俺の、逆襲が幕を開ける。
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