因縁との決着B13
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「あああああああああああああああああ!!」
絶叫する両雄。
両者ともに覚醒を用いて衝突する。
ソータとアーク。生き別れとなった双子の兄弟。イレイザーとタキオン。元はタキオンに対抗するために作られたイレイザー。
装備は決戦を思わせるものに変更。
漆黒のタキオンはアリスランド製のバスターソードと、足にレールガンを提げていた。
徹底された物理的な武装。アンノウンではなく対ガリウス戦を想定したもの。アークの命令でイレイザーを粉々に打ち砕くために作られた。
バスターソードはその重量から機体の推進力を停滞させてしまうが、タキオンの爆発的な加速力なら問題なく、そしてこの時のために天才メカニックが各関節部をチューンした。長期戦にも対応できる。
対するイレイザーは新造ジャケットを背負う。シーナ式ツインリアクターシステムの恩恵で、最新鋭機たるガリウスG以上のエネルギー生産量を確保し、火器に確保した。マルチプルジャケットと冠されたそれと、両腕にマルチプルシールドという新造武器を懸架。複合兵装であるそれは、シールドを基本に、バラフライナイフを思わせる動きでキャノンとソードを展開する。
これにより漆黒のタキオンが繰り出す猛攻を、シールドで受け止めても一撃で破壊されることはなかったし、ソータの実力ならばシールドで受け止める機会の方が少ない。
接近しては剣で切り結び、離脱しては砲台で撃ち合う。鎬を削るどころではない戦いを繰り広げていた。
本来ならこれが頂上決戦となる。原作でもそうだった。グラディオスとアリスランドのエースパイロット同士が戦い、それにより決着となる。
ところがソータとアークの決着がついたとしても、この決戦の雌雄が決することはない。まだアリスランドには後続がいるのだ。まずはアークの問題を解決し、そちらにも集中しなければならない。ここですべてを出し尽くすわけにはいかない───と自分自身に言い聞かせるも、ソータは全力を出さざるを得ない。
やはりアリスランドのエースパイロットと呼ばれるだけあって、アークは手強い。一瞬でも油断すればどこかが破壊されてしまう。防げずに掠めただけでも命取りとなりそうだ。
最大の警戒と集中を持続させなければ戦いにもならない。
強い。アークは強い。イレイザーに乗っても、戦いを繰り広げること数分、未だに活路が見いだせず、決定打ともなりそうな攻撃さえも与えられていないのだ。
「これだけの力を持っていながら………なんでお前はビーツなんかの言いなりになる!」
『ビーツさんは僕の恩人だ! 僕に必要ななにもかもを提供してくれたし、奴隷のような扱いをしたことは一度もない!』
「じゃあさっきのはなんだ! あんな奴隷以下の命令をする艦長なんかに忠誠を誓うなんて、あり得ないだろ!」
『いつもはあんなじゃない。いつもはもっと飄々として、小馬鹿にするような態度だけど、間違ったことなど1回も言ったことがない! ビーツさんは正しい! グラディオスにいたエースって男は悪だ! あんな口先だけの男、ソータに相応しくない!』
「勝手を言うな! お前にエー先輩のなにがわかる! 俺はビーツの全部をさっき知ったよ。お前は違うって言うけど、結果がこれだ! 下を見ろよ。俺たち、いやグラディオスとアリスランドの戦いに巻き込まれたひとたちが死んでいる! それも大勢。お前はそれさえも是とするのか!? それが理想の上司なのか? 言っておくけど、エー先輩は絶対にこんなことをしない。俺たちだけじゃない。周りにいる誰もが犠牲になることを嫌がる。それが理想だ! 俺が、あのひとの弟に生まれればよかったのになって思った理由だ!」
『目を覚ませソータ! お前はあいつに騙されていたんだ!』
「お前こそ目を覚ませよ! 常識が通用しない。他人の不幸どころか死さえもなんとも思わない奴なんか、信用しちゃいけないんだ! もう一回聞くぞ? お前、本当にそれでいいのか!?」
『ぐ、く、ぎっ………』
アークは激しく逡巡した。狼狽し、困惑し、それでも反論しようと言葉を探す。
しかし、どうしても出てこない。いつもならいくらでも長所を述べられるのに。信奉し、忠誠を誓った艦長なのに。どんなことをしてでも勝つ。勝った方が正義。敗者はすべて従う義務が生じる。小競り合いの末に後退したとしても、それは敗北ではない。本当の勝利を得るための勇気ある行動なのだ。かつてのビーツの教えが心のなかに彷彿する。
かつて賜った教えが終盤に差し掛かった時。
フルフェイスヘルメットというアークを隠し守っていた仮面を外し、正体を明かした上で初めて取り組む兄弟喧嘩の原因を思い出す。
もういなくてもいい。
確か、そんな感じだったか。いてもいなくても同じ、だったか。
信頼していたビーツから突然告げられる見限り。裏切り。理不尽。
『わかってる………ビーツ艦長が、少しずつおかしくなってきているのは、わかってる。乗せてもいいって言っていたソータを殺せなんて、あのひとが言うはずがないんだ』
「なら!」
『だからこそなんだよソータ! この戦いに勝って、ビーツさんの正気を取り戻す! そうすればさっきのおかしなオーダーを撤回してくれる! 僕はそう信じている!』
「この………馬鹿野郎!!」
なんて頭が悪くて愚かな信奉者だろう。ソータは途中から聞いていられなくなり、何合目か忘れるほどの切り結びの途中でフェイントを交え、漆黒のタキオンに回し蹴りを入れて遠ざける。
そして距離が開くと、ノールックでジャケットの照準を合わせ、ビームキャノンを回転し背負わずに発射。
もちろん漆黒のタキオンへではない。イレイザーの背後、2キロメートルほど真後ろにいたガリウスHへ。アイリの八号機へ襲い掛かる寸前に、両足を消し飛ばす。
『ソータ! 真剣勝負の途中で、僕以外を見るなぁあ!』
「ああ、お前しか見てねぇよ! 他にちょっかい出されるのが嫌なら、俺をとっとと止めてみろ!」
『そっちがその気なら、うっ!』
落下途中で停止し、急接近をしかける漆黒のタキオンが急制動をかける。
イレイザーのマルチプルジャケットの唯一の物理武器、マイクロミサイルポッドが一斉発射したのだ。
凄まじい弾幕に、漆黒のタキオンはヘビィガンを連射しつつも後退。複雑な軌道を描いて旋回しながら追尾するマイクロミサイルを躱しては迎撃する。
その間にソータが支援射撃を行う。エースパイロットとして広い視野で戦場を見ていた。
ビームキャノンがアリスランドを護衛しているガリウスHに直撃する。ビームシールドで防がれたが、2機分のエネルギー生産量を誇るシーナ式ツインリアクターシステムを搭載しているイレイザーは、ひとつのレイライトリアクターが空になるほどの出力でビームの照射を続け、すぐにビームシールドの許容値を振り切り、撃墜。その後ろに控えていたアリスランドの装甲に直撃する。
「チッ。ブリッジには届かなかったか」
『やめろソータァァアアアア!』
漆黒のタキオンがマイクロミサイルを迎撃し、イレイザーに最接近する。両腕のソードでバスターソードの剣戟を流し、背部に回し蹴りを繰り出して遠ざけ、がら空きの背中にキャノンを撃ち込む。
「今の感情が、エー先輩を失った時の俺たちの気持ちだ! 辛いだろ? ビーツはもっと酷いことをお前にさせるかもしれないんだぞ!」
オフェンスのガリウスHが撃墜し、ディフェンスの4機の撃墜に取り組むミチザネ隊をレーダーで捉えながら、ソータは動きが鈍くなったタキオンを睨む。
『違う! ビーツさんは、そんなことをしない!』
「大量虐殺をしても平然としている艦長の、なにが信頼できる!」
『ひとの精神に入り込んで掻き回してくるような奴よりマシだ!』
「エー先輩はそれがすべての目的をしていな………なにっ!?」
突然のことだった。
レーダーから、ミチザネ隊の半数のアイコンが中破を示す黄色へと変色したのだ。
それを確認したソータは、アリスランドを振り返る。
『なにをチンタラしているんだ? アーク』
悪魔が囁く。
その周囲にもがく二号機、五号機、六号機がいた。見えないなにかに捕まっているようにも見える。
他の機体はすべて落ちた。まだ生存こそしているが、イーグルジャケットや推進器をやられている。
いったいなにがあった? この一瞬で。
それはイレイザーのビームキャノンがアリスランドの装甲に直撃した直後のことだった。
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