因縁との決着B08
「第3フェイズが防がれた!」
「だが、こちらもガリウスを出せば、また優位になれる!」
「そういうわけだ! 気合い入れろよテメェらぁっ! イレイザーから先に出す! 二号機から準に射出開始! あと、補給部隊もエレベーター前で待機! 九号機、十三号機を押し上げ、戻ってきた十二号機の補給と換装を同時に行うぞぁっ!」
「おう、おやっさん!」
ハンガーで、カイドウの怒号じみた指揮が飛ぶ。
見慣れたハンガーは、戦闘中とあっては鉄火場のような熱がこもる。
一番と二番のカタパルトからは順次ガリウスGが発進し、エレベーターを使って九号機と十三号機が上昇していく。
なぜこの2機のみなのかといえば、キルカの十号機とナリヤの十一号機がついに改修され、可変機となったからだ。
背後のドイツ支部でも、このふたりは戦闘機乗りだったが、年々戦闘機の需要が低迷し、ガリウスFのパイロットに鞍替えしたのだ。
すでにコウの四号機とトレードしたマイアは改修型に乗り換えて空を飛んでいる。戦績は3人のなかでもトップだったが、実質その差は数値でいえばほんの少し高いのみであり、キルカとナリヤの腕前も劣らない。
海の上というだけあって、長時間の飛翔が可能な改修型なら、腕前を発揮できるだろう。
私はイレイザーの最終チェックを済ませて、クレーンの移動許可を出したばかりだ。だが、これで仕事が終わりなわけではない。これからコウが乗る十二号機がエレベーターで降りてくる。整備と補給と換装を同時に行うための人員として、急ぎブースから飛び出した。
唯一の気掛かりだったライラは、今回に限っては役目がない。この第21話においてアンノウンの奇襲はない。メディカルルームにて留守番だ。レイシアに監視してもらえれば、私も安心できる。
「十二号機、来るぞぉ!」
カイドウの弟子のひとりが叫ぶ。
九号機と十三号機と入れ替わりでエレベーターで降りてきた十二号機。ブラスタージャケットの影響でかなりの発熱を帯びていたが、その程度で怯む私たちではない。カイドウを筆頭に、灼熱のなかに飛び込んでいく。
「シーナ!」
「はい!」
「お前は整備はいい。コウのケアをしてやれ!」
「………はい!」
カイドウめ。粋な計らいをしてくれる。
十二号機の前にスタンバイしていた私は、ターンしてアイスボックスからペットボトルに入ったスポーツドリンクを手に取ると、急いで戻る。
その頃には十二号機はクレーンに懸架され、ブースに戻っていた。
数十人がかりで行う整備と補給と換装。時間にして数分だが、その数分というのがパイロットにとってはもどかしいものだ。
足場を駆けのぼり、開いたコクピットに全身を潜り込ませる。小さくて凹凸のない体だから引っかかるところがない………誰が貧乳だコラァ。
「コウ!」
「シーナか。状況は?」
「第3フェイズは防がれた。総力戦に移行。けど、それでも劣勢に陥ることはない。まずはコウの補給が優先。飲め!」
「………ありがとう」
「あとでおっぱい飲ませてやるから元気出せ!」
「ブッ───お、お前。平然と下ネタぶち込むのやめろよ」
戦況を聞いて、ペットボトルを受け取るコウの眉間の皺は取れない。まだ余計な力が入っている。整備の時くらいリラックスしてもいいのに。いや、コウにとってもエースの弔い合戦だ。緊張状態はどうあっても取れないのだろう。
だがそれでは体力も精神ももたない。そこで私は、いつもどおりコウの大好きなものを叫んでやると、案の定いつもの彼に、私が一番の推しのキャラであるコウに戻ってくれた。初々しいやつよのぉ。
つなぎのファスナーを降ろして、ペローンと胸の間を晒してみると、まぁ面白い反応をしてくれること。スポーツブラだから色気なんてないのにさ。なにがいいんだか。
コウは咽込みながら赤面する。途端にマシンガンの連射音みたいな舌打ちが連鎖したけど、無視だ無視。彼女が欲しいなら自分からアタックしろってのチキンどもめ。尻を掘られる覚悟がないのに嫉妬すんなっての。コウを見習えよ。
咳払いしながらスポーツドリンクを飲むコウ。手を伸ばし、私の平たい胸に触れるかと思いきや、しばらく葛藤した末にファスナーを上げやがった。別に、下着の下に指を突っ込んで好きにまさぐってくれてもいいのにな。それでコウがリラックスできるなら易いもんだ。
「シーナ。頼みがある」
「おう。下も脱ごうか?」
「やめろっ! そうじゃない。カイドウさんに伝えてほしい。換装は無しだ。どちみち、艦と艦が離れていては、俺の機体ではそう役に立たないだろう。ならばハーモンの助力を得て、アレンの十三号機とともに支援砲撃に徹したい」
「あ、そういうこと? わかった。ちょっと待ってな」
コウが望むなら、誰かが見ててもパンツごと脱げる自信くらいあったのに。じゃあそれは別の機会にとっておこう。
コクピットから這い出ると、今まさにブラスタージャケットを外そうとしていたカイドウを呼び止める。パイロットのオーダーを伝えると、大気圏内用のガリウスG専用フライトユニット、イーグルジャケットへの換装を中断することとなった。
カイドウはパイロットの意見を重んじる。そりゃ、最初だったら「なにほざいてんだテメェは」とコウを叱りつけるだろうが、今のコウ含めサフラビオロスというコロニー出身の学徒兵パイロットは、パイロットリーダーを務める息子が一人前と認めたのだ。酔狂で言ってはいない。勝つための選択をしたなら、カイドウも無下にしない。
「換装は中断したよ。他には、なにかある?」
「………早く、出たい」
「もうちょっと待ってな。今、機種側のレイライトリアクターからエネルギーを充填してっから。あー、もう。そわそわしちまって。落ち着けない? 仕方ないなぁ!」
「いやだから脱ごうとするなモゴォッ!?」
精神過敏になりつつあったコウを黙らせるには、やはり刺激が一番ってね。
つなぎの上をまた脱ぐ───と見せかけて、阻止するべく両腕を伸ばしたコウのそれを回避しつつ、私からも身を乗り出して、強引に唇を奪う。ズギュゥゥウゥウン! ってな具合に。
最近、一緒にいられる時間がなかったし、グラディオスではそんなプライベートな空間はないしで、慰める時以来だったんだな。触れあうのが。
だから免疫が薄れていたらしい。ディープなキスくらいで思考が停止しやがった。初奴よのぉ。んふ、でゅふ。
思考が穢れてるって? うっせぇ。知ってるわんなもん最初からなぁ。
「っぷはぁ」
「あぅ、ぅあ」
「よーし。リラックス完了。良い感じに力が抜けたな? んじゃ、これが終わったら大人のキスをしようね………あ、もうやっちまったか。んじゃあエースが大好きとかいう赤ちゃんプレイ風オイルエステでもしてやるから。必ず帰って来いよ。な?」
「あう、いあ、お、お、お………」
「シーナァ! 十二号機の補給が終了したぞぁ! イチャついてねぇで出て来ぉい!」
「はーい。じゃ、頑張れよコウ」
………私にできるのは、このくらいだから。
斥候に出たのがコウでよかった。コウ以外にキスはできない。メスなんて論外。
コクピットから出て、ハッチが閉まるまで口をパクパクと開閉させているコウを見送る。ブラスタージャケットを背負ったままクレーンに懸架され、再びエレベーターに乗せられて上昇していく。
あとは順次、補給に戻ってくるガリウスを出迎える準備をするだけだ。
いくらか余裕ができる。まだ大勢が動くなか、私はハンガーの壁にある巨大なモニターへ目を移した。
漆黒のタキオンに向けて、白銀のイレイザーが立ち向かっていく。原作どおりの展開。
「でも、黒いイレイザーが出てきたら………また戦況が変わる。………エース。お前、本当に生きてるんだろうな? 生きてるんだったら………早く来いよ。ビーツにいつまでも調子に乗らせてんじゃねぇ」
小さく呟くと、またカイドウに呼ばれたので駆け足で向かう。
希望はまだある。そう信じなければ、いつ戦況がひっくり返るかわからない戦争において、全力を出せるモチベーションが、いつまで続くかわからなかった。
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さて、4回目ですが………15時に更新できそうです! 5回目は気力次第ですが、なんとかします!
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作者からのお願いです。
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