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因縁との決着B06

「回避ぃ!」


「しかし、本艦が回避すると下の友軍に当たります!」


「馬鹿めよく見ろぉ! 射線軸、グラディオスとアリスランドの角度、どう考えてもアメリカ支部の艦隊にはどれも直撃しないだろうがぁ!」


 ビーツは脳内チップで一瞬で計算を終え、指示を出す。


「グラディオスが一枚上だったか。間に合うか!?」


「間に合わせるのがテメェの仕事だろうが、この穀潰しのグズが! とっととやれぇっ! でなけりゃこの艦に乗ってる全員が死ぬぞぉ!」


 操舵士の男が冷や汗を浮かべながら舵を切る。ビーツはグラディオスが初手からレイライトブラスターを選択する蛮勇な行為に肝を冷やした余り、艦長らしくない口調で操舵士を罵りながら回避運動を優先させる。


 右へと転進するアリスランド。上昇という運動を開始していたゆえ、回避運動へ移行するだけの余力はあった。


 しかしその初手は本来ならビーツが講じていた策だったのだ。グラディオスの攻勢を封じることによってドイツ支部の人間の士気を削り取るのだ。


 右へと剃れるアリスランド。次の瞬間、猛烈な振動が艦内を揺さぶった。


「左舷に被弾! 姿勢制御、間に合いません!」


「左舷火器管制システムに異常!」


「これは………機関科より報告! 左舷のレイライトリアクターブロックにて、爆発が発生! 推進力が低下!」


「だぁあ! クソッ! あの野郎が不在でもこれか! 原作以上の抵抗をしやがって! ………下降しろ! 被弾した左舷ブロックに注水! 冷却と同時に誘爆を阻止する! 機関科の連中には、それまでなんとかもたせるように言っておけ!」


「そんな! しかしそれでは機関科のクルーが逃げられません!」


「必要な犠牲だ。それに………もう何人も残っているとは考えられない。レイライトブラスターの直撃を受けて、周囲が爆発を起こしているというなら、左舷メインスラスターを管理している者は、もう少ないだろう。注水と同時に脱出を許可する。根性がある者なら、被弾した穴から泳いで脱出してみせろと言っておけ」


 ビーツは非情だった。


 そして本人はまったく気付いていない。


 その指示は追放したはずのテンプスに似ていると。


 オペレーターたちは愕然としていたが、エマは意を決して「早く伝令しなさい!」と叫び、やっと非人道的な指示を機関科に通達する。


「クソッ。後れを取った………巻き返すには………アメリカ支部、ワプス支部長を呼び出せ!」


「は、はい! メインモニターに出します!」


 ビーツが怒鳴ると、歳がひとつ下のオペレーターが、慌ててアメリカ支部の旗艦のひとつに繋げる。


『ビーツ艦長。被弾したようだが、まだやれるのかね?』


 すぐに応答するワプス。


 二回りほど歳が下の小僧であっても艦長として、そして総司令として認知していたが、その口調はどこか冷たい。


 ビーツはそこに嫌味が含まれていたとしても、苛立ちよりもグラディオスに先手を取られた屈辱と羞恥が勝り、より非情で冷徹な命令を下した。


「当たり前だ。勝つためにはアリスランドは堕ちるわけにはいかない。これより降下するが、着水してからは無防備になる。ワプス支部長。第2の、レオ大隊をアリスランド前方に展開させろ」


『………なんですと?』


「聞こえないのかワプス支部長。返答はどうした!』


『しかしそれは、レオ大隊をアリスランド死守のための壁とすると………聞こえたのですが?』


「ああ。それで間違っていない。とっととやれ」


『馬鹿な! なにを仰っているのですかビーツ艦長。私の大切な部下に死ねと仰るのか!』


「勝つためなら手段は選ばない。俺は何度も言っているし、応じたのはお前だろう? 忘れたとは言わせないぞワプス。お前………2年くらい前の事故、忘れたか? お前の杜撰な管理体制のせいで、俺は死に目に遭った。アメリカ支部に恨みを抱くテロ連中の活動を許し、アリスランドを降りてテメェに会いに行く途中で爆発に巻き込まれた俺が、右半身を焼かれて、部下も恋人も奪われた! それに対し、お前はなにをした? お前は………またなにもせずに後ろで見ているだけなのか?」


 降下するアリスランド。


 海上に着水するまで、あと数秒。その間にもビーツとワプスの無言の睨み合いは続く。


 やがて、口を割ったのはワプスだった。


『………レオ大隊に伝令。アリスランド前方に防衛網を展開! ガリウスFも出撃させろ! 本国に入電! 第3、ペガサス大隊もこちらに向かっているな。レオ大隊が抜けた穴を埋めさせる!』


「そう。それでいい。有能な支部長がいると、やはり効率が違うな」


『………もう、なにも仰らないでください。次の指示があるまで、こちらはこちらで応戦させていただく』


 メインモニターの向こうでは、ワプスが苦渋に満ちた面持ちをして、ビーツから目を背けた。ビーツはニタァと笑うと、通信が途切れる。


「ククク………グラディオス。お前たちはアメリカ支部とも面識ができた。知人が壁となっては、もう主砲は撃てまいよ」


「艦長! レーダーに反応! アリスランド直上、誘導弾です!」


「直上!? くっ………クスドの波状攻撃戦法か! 機銃掃射! ミサイルを迎撃! 弾幕を絶やすな! やはり第19話でなんとしてもぶっ殺しておくべきだった。厄介なネームドキャラが生きていると、本当に面倒だ………」


 本編どおりならグラディオスはハーモンのみならず、参謀のクスドもアークが暗殺して失うこととなる。


 これまで数多くの戦場でアイデアを出し、被害を最小限に留め、かつ与えるダメージは最大にする最善の作戦を練り続けたクスドこそ、ビーツが懸念するポイントだった。


 初手からレイライトブラスターを使用する戦略を思い付くのは、ビーツの他にクスドしかいない。クスドを失ったグラディオスは、かつての熾烈かつ果敢なモチベーションを取り戻すのは、数話先だったのだ。


 その先延ばしがなく、クスドやネームドキャラが健在で、たったひとりの名無しだったモブキャラクターへの弔いと復讐に燃えるグラディオス。ビーツは己が油断を悟る。


「誘導弾、迎撃完りょ………待ってください! アリスランド直上、熱源! 数は2! 熱紋照合………ガリウスGです!」


「第3の波状攻撃………やってくれるなクスド! だがたったの2機か。それならガリウスHを出撃させて迎撃しろ………待てよ? なぜたった2機なんだ? イレイザーを出せばいいものの………クスドがたったの2機でアリスランドに特攻させるなど講じるはずが………まさか!」


「ガリウスGに異常な熱源! これは………陽電子砲です!」


「ああ、クソッ! そういえはグラディオスが新規で獲得した武装があったか! 回避を、ぐぉおっ!?」


「きゃあああああ!」


 アリスランドにさらなる悲劇が襲う。


 それは予想できた結果であったが、ビーツはどこかグラディオスを過小評価する傾向にあったため、失態が形となって現れただけのことだ。


 明らかな油断である。


 理由はふたつ。


 グラディオスを魔改造しまくった元凶を、ビーツがその手で殺害し、画期的なプランはもう出ないと勘違いしていたこと。


 そしてその元凶、エースがグラディオスにとっての逆鱗となり、触れるどころかむしり取ったビーツへの怒りが、これほどまで無慈悲なものとなったこと。


 陽電子砲は右舷に直撃。メインスラスターのどちらも、機能を失いかける。アリスランドは姿勢制御を優先するあまり、まともな回避すらできなかったのだ。


 墜落速度が早まり、レオ大隊が到着する前に着水。大質量が海面に沈むと、浮上を優先するビーツの指示で全没こそ免れるが、後方に空いた穴の大きさに浸水が進み、アリスランドは海上に出ても後傾するのだった。


「機関、70パーセントが停止! 復旧間に合いません!」


「このままだと狙い撃ちされますよ艦長!」


「落ち着け馬鹿ども! ガリウスH発艦! 上空の小蝿を叩き落とし、追撃があればビームシールドで防衛! 急がせろ!」


 まさか真っ先に沈みかけたのがこの艦であるなど、羞恥の極み。だがその羞恥が、逆にビーツを冷静にさせた。


「グラディオス………本気のようだな。ならば、もう遊びは終わりだ。………アークのタキオンを出撃させる。防衛隊の後続で構わん。とにかく攻防一体化させつつ、厚みを作る。まだ戦いは始まったばかりだ。初手を成功させて調子付くグラディオスを、同じ目に遭わせてやる」


リアクションありがとうございます!

まずは1回目。2回目は12時を予定しております!

皆様からのブクマ、評価、感想などの応援があれば、私は今日は筆を加速させることをお約束します!

何卒、私に力を!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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