因縁との決着A01
「失われた帰る場所。取り戻せない時間」
───これは、毎回次回予告を担当するアイリ様のボイスではありませんか。
「誰もいない箱。使い手を失った器。その器たちはいったい、どこへ行くの?」
ブヒィィイイイイ!
この謎ポエミーな感じ、たまらねぇな。
で、毎回ポエムの詠唱を終えると、感情的なシャウトになるのだ。
「私たちの前に現れたアークの正体は、まさかソータの生き別れの弟だった。そんな、そんなのないよ。なんで兄弟で殺し合わなきゃならないの!? アリスランドが突き付けた日程まであと少し。こっちの戦力は低下したままなのに。こんなので、勝てるの?」
いやいや、その心配はありませんぜアイリ様。なぜならグラディオスには13機のガリウスGがあるではありませんか。原作では、もう6割くらいになって、ハナもこの話しで悪魔のシステムで自爆して死んでしまうけど。
「私たち、こんなのいつまで続けなきゃならないのかな? 辛いよ。悲しいよソータ。お願い。ひとりにならないで。私をひとりにしないで! 私の声を………聞いて欲しいのに。届かないのかな? もう、諦めないといけないのかな………次回、第21話。因縁との決着。もう誰にも死んでほしくなんか、ないよ………」
死ぬなぁああああああ!!
絶対に俺が、誰ひとりとして死なせねぇええええ!!
そんでもって、アイリにソータを諦めなんかさせねぇええええええ!!
「させねぇえええええええ!!」
「おごぉっ!?」
「………あ?」
俺は自分の声で目を覚ました。
なんて不快な目覚めだろう。勢い余って、なんか変なの蹴っ飛ばしたような感触があったけど………うん。多分気のせいだ。
「よし、二度寝しよ」
「ちょぉっと待ってよー、エースくーん。二度寝しないでぇ? ひとのことベッドから蹴り出しておいて、なんでそんな呑気にできるのかなー? え、それってもしかして才能だったりする? 化け物になるための秘訣なのかなー?」
「………そんなところでなにしてんだトーマス。ベッドがあるのに床で寝るとか変わった趣味だな………待て。わかった。そんな目をするな。悪かったって。変な夢見てたんだ。謝るから」
軽いノリでとぼけてみると、珍しくトーマスが開眼してギョロッと睨んでくるものだから、つい気圧されて謝ってしまった。
それでもしばらくジトーと睨んでいたトーマス。彼はこうして、先行投資と称して甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。それには感謝しているのだけど、それにしたってベッドをいつも隣接させて並んで寝るというのは、そろそろやめてほしいものだ。
だってさ。ね? 下品なんですけどね? 夜にひとりじゃないと、できないことだって………あるだろ?
そのすべてを完封してくれるトーマスに、フラストレーションが蓄積する一方だったのもあり、事故とはいえ蹴ってしまったと理解した時、ちょっとだけスッキリしたとは口が裂けても言えないな。半殺しにされるかもしれない。
「あれ? ………そういえばエースくん。その足………」
「え? ………あっ」
トーマスが指で示す先、俺の足を見る。
拷問によって肉を抉られ、骨を取られ、炙って止血された場所。それをオペと医療ポッドで回復させ、傷口も塞がったがどうも動きに難があったところも含め、指の開閉から膝の折り曲げなど、各関節に異常がないどころか、完全に回復していた。
「………どうやら、治ったみたいだな」
「マジで化け物過ぎるでしょエースくん。普通さ、何週間、何ヶ月って待ちながら治療したり、リハビリも回避できないような怪我だったんだよ? なんで平然としてるわけ? なんで普通に治しちゃうわけ?」
「それはこの前も説明しただろ。俺の体内にいるナノマシンが傷を塞いで、異常がある場所を回復させたんだって」
「それに適応しちゃうきみがすごいんだって。人間超えてるわ。ハァ。心配してた僕がバカらしくなってくる。もう寝よ。そろそろ僕の介護も必要なくなるみたいだし。………もう蹴らないでよ?」
不貞寝するトーマス。
足が治ったことで、もう車椅子も必要ないし、義手も元通りになったことで、俺の体は全快に近くなっている。あとは筋肉を再び最短で鍛えつつ、新しい機体を完成させ、そして───
『これで、きみの体内にいた医療用ナノマシンがすべて消えた。反応の消失とともに、きみの血肉となった。私を作った私が生前に見ていたら、言葉を失っていただろう。こんな人類がいたのかと』
頭のなかにケイスマンの意思の賞賛と、現状を報告する声が響く。
『今のきみは器だ。なにかを満たすだけのもの。そこになにを新たに注ぐのはきみ次第。しかし、改めて警告する。成功する可能性は限りなく低い。成功したとしても、どんな副作用があるかもわからない。前例がなさすぎる。そして拒絶反応も多く出るだろう。私を作った私が設計した脳内チップで、すべて制御できるとも思えない。考えを改めるなら、今のうちだ。神経接続型のガリウスと脳内チップ。そして新設計された装備。それで十分に事足りると思うがね』
技術者としては当然の見解だな。
無茶で無謀。そんなことは最初から、提案者である俺も承知しているんだ。
けれど、もうやるしかない。
戦いは、俺たちの因縁の決着をつける時まで、1週間もないのだから。
だから俺は、今日中に決行する。
すべては勝つために。
ビーツにできなくて、俺ができないことなんて、多分ないはずなのだ。
ビーツだって多くを得るために多くを代償として支払った。その覚悟、推し活の申し子たる俺ができなくてどうする?
常に痛みが伴うことくらい、耐えてやるよ。
数時間後。昼食を終えて、作業に取り掛かる人員たち。グラディオスの整備士にも劣らぬ技量を持つ職人たちが、フレームの製造と装甲の製造を、ドックとは別の場所を行うために離れていく。
連合軍日本支部に所属していた彼らは、この数年で日本の地下でなにもしなかったわけではない。
この富士ドックを中心に、各地にトンネルを張り巡らせたのだ。
地下鉄よりもより深い場所を掘り、計算を重ねながら、東京だけでなく東北や西まで手を広げていた。
オードリアインジェクション社が降下させたコンテナは、富士ドックの西に落下したが、彼らはそのトンネルを利用することで、そのすべてを回収してくれた。
追加された新素材を惜しみなくフレームと装甲に使い、そしてもうひとつ、それらを構成するナノマシンをサンプルと銘打って、カプセルと注射器を送ってくれた。それは実験用だと説明したが、高田たちは納得しても、トーマスには隠し通すことができなかった。
その日、久しぶりの二足歩行で移動したことで疲れてしまったというと、もう製造段階に入っては俺はやることがないからと、快く休憩を打診してくれた。
それに甘えて、俺は貸してくれた地下の部屋に戻る。医務室で寝泊まりするのは昨日でやめた。
「………きみが新人類になるか、人間の形を留めない化物になるか、それともここで終わるのか、見定めさせてもらうよ」
「じゃあ、その手に持ってる注射器はなんだよ」
部屋に入り、ベッドに座る。介護は終わりと言っていたくせに、平然と俺のあとをつけたトーマスは、壁に背を預けて、鋭利な視線を俺に突き付けた。
「………中和剤さ」
「なんだって?」
「きみがなにをしようとしているのか、なんとなく予想ができる。サンプルとしてナノマシンを送りつけろだなんて言ったけど、まさか僕に秘密で発注書を改竄してくるなんてさ。お陰で重量が増して、怒られてしまったじゃないか。その液体サンプルと注射器。………体内にぶち込むんなんて、どうかしてるよ」
やっぱり誤魔化せなかったか。
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最近なのですが、赤ワインにはまっております。渋みと香りが好きになってきました。執筆に欠かせませんな。
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