アリスランドC02
「………俺も正直なところ、アークがどこの誰なのかは、わからない」
「けどエー先輩、アークと親しげに話してたじゃない」
「いや、からかってただけさ。すぐわかったよ。アークってのは、初期のハーモンよりもツンツンしてて、すげぇ扱いやすいクソガキだって」
「なにそれ。ふふふ………」
ソータにとって久しぶりの対人戦であったにも関わらず、その面持ちは案外明るい。
機体越しだったとはいえ、誰かと剣と銃とで命のやり取りをしていたのだ。
アンノウンの時とは違う。アリスランドがちょっかいを出してきた時とも違う。
アークと熾烈な殺し合いを演じたソータの精神に異常がきたしていないか心配であったが、杞憂に終わってくれて安心する。
「………なんでアリスランドを沈めなかったの?」
「艦長の決定だろ」
「さっきクスドが言ってたよ。クスドは前からエー先輩に、アリスランドと交戦することを想定してシミュレーションさせられてたけど、絶対条件として制圧が課せられていたって。撃沈じゃなくて、制圧。あるいはアリスランドの戦力を極端に低下させて、戦闘不能にすること。それって、撃沈させるより難しいよね。今回はうまくいったけどさ。………なんで?」
クスドが口を滑らせたか。いや、別に問題はない。いずれ、どのタイミングかはわからなかったが、みんなに知られることだったし、知られても問題はなかった。クランドも同意してくれた。
「俺たちが今、なにと戦争をしているのかって考えろ。人間同士じゃない。アンノウンだ。こんなご時世だ。人類みな手と手を取り合って………なんて綺麗事をほざくつもりはないけどさ、ある程度は一丸となって対抗すべきなのに、人類同士で戦っても無意味だろ。アリスランドも、あれで一応連合軍の主力艦なんだしさ」
「………また襲いかかってくるかもしれないよ?」
それは決定事項だ。グラディオスとアリスランドの因縁は、原作ではここから始まる。この先、何回か合間見える時がある。
そして、その決着も。ただ今はその時ではないし、原作で訪れる、遠くない未来でアリスランドにも重要な役割がある。その時、グラディオス1機では到底勝てない敵もいる。活躍してもらわなければならない。
それをビーツはわかっているのだろうか。仮にこの先、あの決着をつける戦いのさなかで、ビーツ率いるアリスランドが、グラディオスを破壊するようなことがあれば。アリスランドは単騎であの敵に戦いを挑まなければならない。勝てるとでも思っているのだろうか?
「その時は、その時だ。みんなでビーツを、わからせてやろう」
「アークって奴もね」
「殺し合うなって言った手前、こう言うのもなんだけど………うん。頼りにしてる」
「うん。いいよ」
あどけない顔をして笑うソータ。
こんな可愛い子がグラディオスのエースパイロットであり、主人公でもある。熾烈な戦いのなかに身を置き、敵のみならず人間に追い詰められて精神を病んで壊れていくのだ。
今は安定しているが、この先───なにがあるかは、わからない。
俺の推し活は、まだ終わってなどいない。ソータとアイリを幸せに導くのが俺のすべて。これまでは順調にいったが、ついに因縁の戦いを始めてしまったビーツが、邪魔でしかない。
………やめよう。こんな不純な動機でソータを見つめたいわけじゃない。俺はソータに笑っていてほしいから、今こうしてここにいるのだ。
なんなら、ここでソータを愛でるついでにいじり倒してみよう。
「ふぅ………やることないって、暇だな。仕方ない。一眠りしに部屋に行くかな。ソータももう戻れよ。今晩はここに停泊するしかない。機体が壊れたからって、戦いになれば、なにもできないなんてことはないからな」
「まだ全然眠くないんだけど」
「戦いが終わって3時間は経つのに、疲れを感じないってか。すげぇな。………仕方ない。お前専用の抱き枕………いや、抱き枕にしてくれる奴でも呼ぶか? ほら、アイリとか」
「お、俺………抱き枕にされるの?」
「あー、そういえばお前プライベートがあんまりないから、そういうのわからないんだっけ? 悪い悪い。貸すって言っておきながら、まだ俺の部屋貸してなかったな。よし。アイリ呼んでやるよ。で、3時間くらい俺の部屋でイチャイチャしておいで。抱き枕にされるの、結構気持ちいいから。ふたりともリラックスできるよ」
「そ、そんないきなり………」
「へぇ? されたくないと? 抱き枕」
「そうは言って、ないけど………」
可愛いなぁ、こいつ。
これでシーナが発狂する非童貞だっていうんだから、信じられないくらいのリアクションだよな。
よしよし。もっと攻めてやろう。
「思い出してみ? アイリと初めて向き合って、幼馴染だけじゃない特別な感情をぶつけた日をさ。どうだった? 柔らかかったか?」
「う、うん。とても、柔らかかった………」
「ほうほう。どこ触った?」
「胸………って、なに言わせるんだよエー先輩!」
「チッ。もう正気に戻りやがった」
つまらんのぅ、つまらんのぅ。
もっと卑猥なワードをソータの口から聞きたかったのに。
あ、そういえばだけど、偶然にもふたりの会話と姿を見届けるために設置した監視カメラとマイクの前で、おっ始めやがった映像があったじゃないか。それ見てなかった。あとで絶対にチェックしないと。
クソゥ………なんで俺は、ドイツ支部で請け負った特務を執行している期間中に、そういう貴重なものを持ち込まなかったんだか! せっかくひとりきりになれたんだ。そういうものこそ鑑賞するべきだったのに!
完全に失念してた。むしろ今思い出した。ソーアイ変態ソムリエとして、一生の不覚………っ!
「エー先輩。なんか変なこと考えてるでしょ?」
「ゥエ!? そ、そんなこと………ナイヨ?」
「嘘だ。エー先輩、なにか誤魔化す時は絶対に相手の顔を見ないから」
「そりゃお前、統計学的に言えば誰だってそうだよ? 男は目線を逸らす。逆に女は相手を見つめる。そうやって嘘をつくんだ」
「へー、知らなかった。じゃあエー先輩は、嘘をついてるんだ?」
「しまった………」
まさかこの俺が墓穴を掘るなんて!
それからソータにしばらく尋問されたけど………相手はあのソータだしな。
すぐに俺のペースに引き込んで、俺のターンにしてやった。
ソータにしては珍しく完璧な誘導尋問だったけど、詰めが甘い。
本当の誘導尋問ってやつを披露してやったところ、簡単に追い詰められたソータは今度こそなにも言えなくなった。
とても可愛かった。で、ソータの記憶のなかにいるアイリは、最中の声がとても可愛かったと知った。照明を消して欲しいと懇願されても無視したと聞いてギョッとしたが、アイリはすぐ羞恥心を忘れ、もうそれどころではなくなったと。
やるじゃないか。ソータの奴め。
とにかく仰天するくらいのたくさんのリアクションありがとうございます!
お陰様で、たった1日で150件を超えるリアクションをいただきまして。合計で1600を突破しました! すげぇ。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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