アリスランドC01
あれから3時間が経過した。
結果だけ述べよう。俺たちは勝った。負けたアリスランドは残存する推進器を総動員して、大海原へと敗走した。ビーツ、ザマァ。
そして今、グラディオスは日本支部跡地を拠点として隠居していた日本人たちの生活の復旧に、尽力していたというわけだ。
ビーツが率いるアリスランドとの戦いは、アリスランドが日本人たちが生活していた場所にレイライトブラスターを初撃でブチ込むという常軌を逸するもので、俺が緊急出撃してタキオンで防がなければ、日本人は全滅し、グラディオスも痛手を被っていた。まだ退避途中だったクランドたちも死んでいたかもしれない。
そのレイライトブラスターによって偽装ドーム兼バリアが突破され、バリアを発生させる装置も故障してしまった。
まずはその復旧をしなければならない。クランドは砲雷科を派遣した。
なぜ整備科ではないのか。原因はアリスランド戦で被った被害が、予想を上回ったからだ。
艦へのダメージではない。問題はガリウスだ。
「急げぇっ! クソアリスは当分戻って来れねえだろうが、アンノウンが出てくる可能性もあんだ! 中破、大破した機体はあとででいい! 小破したガリウスから修理にかかれぇ!」
「はい! おやっさん!」
カイドウは整備士全員を集め、指示を出す。
整備科が持ち場を離れられない理由が、アークが操るタキオンで腕や足、装備や頭部を失った二から四号機の修理、五から十三号機の整備と補給にあった。
全機をスクランブル発進させるのはいつものことである。前回のイレギュラー戦でも同じような被害を被ったが、カイドウはここまで焦らなかった。
だが今回は話が違う。
グラディオスは日本支部跡地の復旧が終わるまで、この場を離れられないのだ。
もちろんそんなことは原作にはない。アリスランドとの初戦を終えると、すぐにアメリカ支部まで発進する。
現在、日本支部跡地は丸裸の状態だ。アンノウンに狙われれば、ひとたまりもない。
その時の防衛の要がグラディオスとガリウスGである。機体が損壊していては話にならないし、壊れたままの機体に乗せるのはカイドウのプライドが許さない。ここ最近、第2クールに突入してからというものの、いよいよアンノウンも物量差で攻めてきた。原作の倍以上の規模で。
今は1機でも余裕が欲しいのだ。こちらも物量差を覆す戦力を揃えるために。よって艦外には、整備もできる砲雷科が派遣された。
「あ、あの。おやっさん。俺もなにか手伝い───」
「うるせぇ! テメェらは引っ込んで大人しく休んでろクソパイロットども! ………あ、いや。違うんだエース。クソは余計だったな。ハハハ………」
コンプライアンスを損なった指導で俺がまた暴走するのではないかと危惧して、すぐに訂正するカイドウ。
整備士とパイロットは一丸になって機体の整備と調整にあたっていた。
そんななかで、久しく待ちぼうけを食らう俺───と、ソータ。
「とにかくだ。とんでもねぇ仕事をしてきたお前らの出番は、当分ねぇと思いな。よくもまぁ………無事に帰ってきたもんだぜ。機体が無事でもパイロットが怪我したなんて最悪だからな」
アリスランドの主砲を阻止した俺。
化け物の異名を持つアークのタキオンを中破したソータ。
これだけの戦果を挙げるには、やはりリスクが高すぎた。
ハンガーに収容されている俺のタキオンとソータの一号機は、最低限の人員だけで応急処置が施されている。レイライトリアクターを停止し、オイル漏れを止め、破壊された場所から崩れないよう固定するなど。
グラディオスはアリスランドを阻止するために、タキオンとガリウスG一号機を大破に近い中破をさせてしまったのだ。
化け物とエースパイロットが乗る機体が、使い物にならなくなってしまったのである。
俺のタキオンはオーバーホール確定。
そして肝心なソータの一号機は、オーバーホールで済む話ではなかった。
やはり、ワンオフ機であっても量産を目的とした機体だ。オリジナルガリウスを中破させるには、機体そのものをぶっ壊すくらいの覚悟で挑まなければならなかった。
「エースのタキオンはともかく、ソータの一号機は………最近、お前の操縦に機体がついていけていなかったからな。運動性を限界まで引き上げてたってのによ。………大仕事が待ってる予感がするぜ」
正解だよ。
ある意味、大仕事が待っている。
今はまだいい。ナンバーズを修理すれば、今度こそタキオンと一号機だ。
幸いにも、九から十三号機までを改修機にするためのプランに用意した予備パーツのストックがある。ハナたちには申し訳ないが、すべて一号機の修復に使えば、ソータはまだ戦える。一号機が修理されるまでそうかからないだろう。
だが、根本的な問題が解決されていない。
カイドウの言うとおり、ソータの操縦に一号機が耐えられなくなってきた。実はこれは次の話で露見する問題点なのだ。なぜ早まったのかといえば、ソータが予期せぬ早期の覚醒を遂げたからだ。
それも過去3回も使っている。ここぞという肝心な戦いの時。味方が、誰かが劣勢に陥った時。怒りを爆発させた時。なにより守ると強く決意した時。ソータは誰よりも苛烈に、荒々しく一号機を振り回す。
一号機が限界を突破するまで秒読み状態だ。カイドウが見抜けないはずがない。
「とにかく、お前らの機体はこのあとで直す。………あれだけの戦いの後なんだ。お前らは休みな。パイロットだって、休むのも仕事なんだぜ」
「………そうしてきます。行こう、ソータ」
「うん。わかった。じゃあカイドウさん。あとはお願いします」
「あいよぅ」
俺とソータはカイドウに見送られて、ハンガーをあとにした。
隔壁を抜けてしばらく歩き、行くあてもないことから、揃って展望デッキに出る。
「………直るかな。バリア」
「直るさ。アリスランドのレイライトブラスターは、バリアだけを貫通させた。タキオンで受け止めたから、地表へのダメージも少ない。バリアの発生装置は………ああ、あれだ。やっぱりほぼ無傷だったな。お前たちがアークをうまく引き剥がしたからだよ。よくやった」
「ん………」
展望デッキの大きなガラスの前に立つ俺とソータ。並んで外の景色を俯瞰した。
ソータを褒めながら頭を撫でる。ソータはいつもよりも大人しくしていて、されるがまま、髪の上を通過する俺の手の感触に浸っていた。
とはいえ、地上はすべてが無傷だったわけではない。やはり荒れてしまったところもある。小規模ながら火災もあった。ガリウスを動員して消火活動に従事した甲斐あって、被害も小さい。
俺たちが日本人と交流し、食事をしていた広場が特に
メチャクチャだ。食べ物が散乱し、その中央にはタキオンがパージしたパピヨンジャケットが廃棄されたままドーンと打ち立てられていた。
「ね………エー先輩」
「うん?」
「聞きたいことがあるんだ」
「………アークのことか?」
「………うん」
原作でもそうだ。この第15話の終わりで、ソータは展望デッキからアークの駆るタキオンを、そしてアーク自身を疑問に思っていた。
「俺………なんか、アークって奴がエー先輩を攻撃してたところを見たら、無性に腹が立って………でも止めてから戦いになって、それから………ずっと気持ち悪かった」
「今はどうだ? 気持ち悪いならメディカルルームに行くか?」
「ううん。今は平気。本当、なんなんだろうね。あいつ」
ソータがグラディオスクルー以外で、ここまで疑問に思うことは珍しい。
だが、言うべき………ではない。言えば苦しむだけだ。
俺は知っている。アークの正体を。ソータの感情の正体を。
それは、あまりにも残酷なものだった。
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