アリスランドB11
「な、なんっ………なんだと!?」
ビーツは驚愕せずにはいられなかった。
なぜなら、スモークのなかから落下するパーツというのが、どうもよく知るものだったからだ。
グラディオスから剥離したにしては小さい。細々としたものばかり。
同時に、脳内チップで処理する情報が少なくなった理由も判明。
「く、くそ………クソが! グラディオス………いや、小此木かァッ! まさかこちらのガリウスが無人機だと知って、ハッキングを仕掛けて乗っ取りやがるとはなァッ!」
アリスランドの艦載機たるガリウスHはパイロットを温存するため無人機として運用していた。所詮は名もなきキャラクターだ。モブキャラどもに、ネームドキャラが扱う主人公機と同等の機体を任せられるはずがない。結果など目に見えている。敵に滅ぼされるわけではない。自機に殺されるのだ。
ゆえに無人機として運用するしかなかった。パイロットたちは完熟訓練の途中だ。まだ早い。
そしてビーツの失態はここでも発覚する。ガリウスHの操縦はオートに設定。かつ交戦記録とアークの操縦をインプットしている。時としてはビーツが脳内チップで接続して動かす時もあるが、さすがに10機同時接続は難しい。よって1機に接続し、設定を更新した直後に全機にフィードバックさせる設定にしていた。
アリスランドの高性能AIによる統制もかけているが、アリスランドにはそのすべてを管理できるグラディオスのような人材が揃ってはいない。どうしても見落としがちになってしまう。
ビーツの怠慢が招いた結果とも言えた。
「やってくれたなぁ………それを促したのは、どうせお前なんだろ。俺よりも劣っているくせに………のうのうとグラディオスに居座りやがって………許さねえぞ、小此木ィッ!!」
《許さねえぞ、小此木ィッ!》
と、脳内チップを介して、やっとビーツの怨嗟を感じ取ることができたのだった。
いやぁ、クズの泣き言じみた断末魔ってのは、こうも心地よく聞こえるんだなぁ。是非ともアラームに設定したい。
俺たちがやっているのは、第12話と同じだ。
この第15話も、原作から大きくかけ離れた。
今回だけは自然にそうなったのではなく、ビーツの奇策によるものだから仕方ないのだけど。
そのかけ離れた展開を、どう処理していくのか。『オペレーション・フォールグラウンド・アリス」を熟知しているビーツが対策を練っていないはずがない。よって事前に、様々な要点をクスドに伝えて、あらゆる対策による対策を講じさせた。
クスドは大した奴だ。本当にすごい。成長の度合いで言えば、ソータとなんら遜色がない。これでもしブリッジで覚醒しちゃったらどうしよう。とあるロボットアニメのピンク髪の歌姫みたくなるのかな?
そんなクスドが考案した俺にとっては「オペレーション・フォールグラウンド・アリス改」は、まさに画期的かつ、即興で組み上げたにしては練度が高い作戦となった。
第12話と似ているのは、覚醒したアイリがその能力をフルで行使し、捕縛したガリウスHにハッキングを仕掛け乗っ取ると、瞬時にコントロール権をアイリが持っていき、彼女の統制の下に置いた。
それをクスドに伝えると、すぐにフェイズと作戦を修正。捕縛したガリウスHをデコイにしやがった。アイリはガリウスHをアリスランドに特攻させようとしていたのだが、クスドはもっとエゲツない有効活用手段を見出したのである。
それがスモークとフレアを大量に持たせること。10機に余すことなく積載させ、グラディオスを模したのだ。
必死になっているビーツは、そのデコイにまんまと釣られた。スモークとフレアを抱える自軍の艦載機たちをグラディオスであると認識したのだ。
その間、グラディオスはなにもしないわけではない。偽装によって欺かれたのなら、偽装で返す。
スモークを常に焚き続け、冷却剤を散布した。これで視界と熱源があらかた騙せる。レーダーは熱源を追うはずだ。
《貴様っ、俺のガリウスを占領し囮にしたのか! 認めない………お前が俺を出し抜くなど、あり得ない!》
《あり得るんだよ。ああ、それからな。俺が全部やったわけじゃない。お前と違って、全員の力でお前を出し抜いたんだよ。作戦を練ったのもクスドだし、お前んとこのガリウスを動かしてるのもアイリだ。無様だねぇ、楠木。お前、仲間ちゃんといるの? 信頼できる味方は? いねぇだろ。だからこうなる。お前はグラディオスに負けたんだ》
《っ………そうか。なら、お前だけに出し抜かれたわけではないのか。………情けないやつ。仲間に頼らなければなにもできないんだろ! 俺は違う! 俺だけですべてを乗り切ってみせる! グラディオスにしてやられたのは認めよう。だがな………これは、俺がお前に負けたわけではない! お前は卑怯にも仲間の手を借りたんだからな!》
《あ、そう。どうでもいいよ。そんなこと。そんな小さい勝ち負けにこだわってるから、負けるんじゃねぇの? 知らねえけど。そうやって自分だけの世界に浸ってろよ。そうしている間に、俺はどんどん前に進むから》
ビーツからの直接の通信に答えるだけでも気持ちいい。
『フェイズ4、発動!』
スピーカーからクスドの声が聞こえる。
それと同時に、スモークを切ったグラディオスが、アリスランドの斜め下から現れたのだった。
アリスランドはグラディオスの斜め上を飛翔し、反転しながらも前進。すべてはグラディオスを模したデコイを追わせてのこと。
そのデコイもすでに無意味だ。またもや覚醒を使ったアイリが9機のガリウスHを遠隔操縦していたが、アリスランドの砲火で粉々になった。抱えていたスモークやフレアもともに落ち、風に流れてなにもいなくなる。
すべては「オペレーション・フォールグラウンド・アリス」のために。アリスランドはクスドの策により、自ら背中を見せてしまったのだ。
グラディオスも冷却剤が流れて偽装が剥がれる。同時にレイライトリアクターを緊急停止させていた九から十三号機が再起動。確実性を上げるために一時的に機能を停止させていたのだ。
『撃てぇえッ!!』
クランドの号令により、グラディオスが艦の武装とガリウスGの武装を一斉射撃させる。
俺たちミチザネ隊も斜め右から突入。アリスランドがどれだけの武装をしていようが、直掩機を失ってしまえば接近が可能だ。
『っ………来い! アーク! このっ、みっともない出来損ないを、撃ち殺せぇえええ!!』
焦ったのかビーツがオープンチャンネルで呼びかける。
ソータたちと単身で交戦していたアークはすぐに反応した。腕を失った三号機と、片足を失った四号機、頭部を破損した二号機を振り払う。そしてアリスランドに迫る俺たちへ急接近した。
「行ってください!」
『エース!?』
『な、なにしてるのエー先輩!』
「タキオンを止められるのは、タキオンだけです!」
隊列のなかから外れて急制動をかけ、反転する。シドウとヒナまで巻き込むわけにはいかない。
『そんな機体で、タキオンを止められるか!』
「あっちも同じくらいいじめられてますよ。これで条件は同じだ!」
灰色のタキオンで、すぐに迫る漆黒のタキオンを受け止める。ともに最後のヒートナイフを、これで失った。ヘビィガンを至近距離で撃ち合う。殴りつけるように。それもすぐに切れた。あとは本当の殴り合いだ。
負けるわけにはいかない。化け物は化け物でしか止められないのだから。
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