アリスランドB08
交戦ポイントは大きく分割して3つ。
ひとつ。アークとソータたち。
ひとつ。ガリウスH部隊と俺たちミチザネ隊。
ひとつ。グラディオスとアリスランド。これに限っては対艦戦だ。近接戦にはならず、レーザーとキャノンと誘導弾で遠距離戦を行った。
『な、なにこいつら!?』
『くっ! これが………ガリウスGの次世代機だと!?』
『当たらない………アンノウンより速い!』
ヒナ、シドウ、シェリーがガリウスH部隊と交戦に入り、1分で異変に気付いた。
初撃はシェリーが行った。スナイパーライフルで狙撃を行う。
シェリーはすでに覚悟をしていた。アリスランドと交戦するかもしれないと理解していた。アリスランドには艦載機がいる。その艦載機を操るのは、自分と同じく人間だ。
人間同士が戦うのだ。いや、戦うという表現では生温い。これは試合でも模擬戦でもない。殺し合いなのだ。
ガリウスHにアリスランドのパイロットが搭乗していようが、構わずトリガーを引く。スナイパーライフルの銃弾がコクピットに直撃すればパイロットはミンチとなる。殺してしまう。だが撃たなければ自分が撃たれるのだ。
『くそぉっ! 手数増やしても避けられるなんて!』
シェリーは叫びながらスナイパーライフルの銃身を折り畳んだ。ショートバレルに変更し、銃弾もビームに切り替える。ガリウスGのレイライトリアクターから供給されるエネルギーを手のひらを伝ってビームに変換する仕組みだ。ショートバレルに切り替えたことでマシンガンモードになり、乱射によって動きを止めることにしたのだ。
だが、それさえも避けるガリウスH。
「おかしい………なにかが、おかしい………」
俺のタキオンも左腕のヘビィガンを発砲する。しかし寸でのところで躱される。神がかった紙一重だ。
その回避率が異常だった。いかにこちらが弾幕を張っても避けられてしまう。並のパイロットの技量ではこうはならない。
そしてアリスランドに、アークと同等の技量を持つパイロットは存在しない。存在しないはずなのに、今こうして俺たちと交戦している。
ライフルを撃ち合い、剣をも交えた。
ひとつ世代が前のガリウスGを相手にするなら次世代機として可能なのだろうが、信じがたいことにタキオンとの交戦を可能にしていた。
俺のタキオンはアリスランドのレイライトブラスターを受け、アークのタキオンとの交戦で、かなりのダメージを負っているとはいえ、まだ一戦交えるくらいには余力を残している。全力で加速こそできないが、6割ほど落としたギリギリの加速をかけてもガリウスを圧倒できる推進力を得られるはずなのに。
それでもガリウスH部隊は、タキオンに劣らない加速をかけて飛翔しているのだ。
「こいつら………まるで殺意を感じない」
アンノウンは独特な動きをすることがある。有機生命体の一種であるとされるそれは、自らの意思を持って行動していると学者は述べた。メタファーではあるが、この世界を作った「天破のグラディオス製作委員会」もそのような設定と意図を持っていただろう。
パイロットが乗るガリウスもそう。パイロットの癖を正確にトレースする。
しかしだ。俺が3機のガリウスHを相手に交戦していると、とあることに気付いた。まずは殺気。パイロットの交戦するぞという意思表示。それがまったくない。まるで事務的に銃を撃ち、剣を振るい、こちらの攻撃を躱しているよう。
「………行動原理がパターン化されている?」
特にライフルを撃つ時がそうだ。高速で動き回っているがゆえ、目視しにくいのだが、脳内チップを有している俺が分析をかけると、とある仮説が浮上する。
それがパターン。ライフルを撃つ時の姿勢。これがパターン化されているのだ。プログラムの一種のような。
俺だってナンバーズの優れた行動パターンをプログラムしている。タキオンにトレースさせていた。
それに似ている───いや、これは、
「ライフルを撃つ時の姿勢が、すべて統一されているのか!」
まるで作画が面倒になって、ライフルを撃つガリウスの全体図をコピーして使い回しているような姿勢。それが全機にトレースされているのだ。
ガリウスHはイーグルジャケットを模した、いやそれそのもののようなバックパックを背負って飛翔している。空力特性を活かしたフォルムで姿勢を安定させつつも、優れた狙撃力を確保しているような。
「ガリウスGの次世代機、第八世代ガリウスHがすぐにロールアウトされるはずがない! つまりこいつら、次世代機を謳った無人機かよ!」
第七世代機と第八世代機の違いを分析し、そこまで差異がないことが判明する。それでも第七世代機を正確にトレースしたフレームと、似たような装甲を完成させたところは舌を巻くし、素直に感服できる。
けれども無人機だと判明した今、それが仲間たちに伝わった瞬間、趨勢が動き出す。
『無人機だと!?』
「はい! こいつら、アリスランドのタキオンのパイロットの動きを学習したAIをパイロットの代わりに搭載しているに違いありません! それが分かれば………話は早い!」
俺は対人戦とあらばと、躊躇してしまうところがどうしてもあった。それは自覚しているし、たったひとりだけ未だに覚悟ができていない弱い自分を恥じていると自負している。
それが今、無人機である仮説が有効になると、躊躇いが消えて、タキオンの機敏に冴えが発生する。
パターンの学習は完了している。伊達に脳内チップを脳に移植しているわけではない。弾幕の間隙を縫うように接近。すると接近された1機のガリウスHごと、周囲の射線軸が集合する。フレンドリーファイアをまったく恐れていない。
パターンの合間を攻略した俺のタキオンが、その1機の頭部を掴むと握り潰し、コクピットプロックに手を伸ばす。
マニュピレーターで強引にハッチをむしり取る。
「………やっぱり。こいつら無人機だ! そりゃそうだ。仮に有人機なら、アークの動きをそのままトレースした瞬間に潰れて即死だ」
フレームの骨格がガリウスGと同一ならば、コクピットプロックも同じ場所にある。装甲の厚みもほぼ同等。タキオンの先鋭化したマニュピレーターで抉り取ると、コクピットが露わになる。そこに座っているはずのパイロットは───やはり不在。その代わりにコンピューターらしきものが鎮座していた。
そこにタキオンの抜き手を放つ。パイロットの代わりを務める機材を潰して放り投げた。
頭部を失い、胸を貫かれたガリウスHは無反応であった。日本人が居住していた区画からも離れているし、ガリウスHが落下しても被害は出ないだろう。
瓦礫の上に落下して爆発四散したガリウスH。弱点が露見する。
『よくやったエース! 全機、聞いたな? ガリウスHは無人機として運用されている! もう遠慮することはない!』
『待ってください隊長! 私に考えがあります。エー先輩、手伝ってください!』
「お? おお。わかった。なにをすればいい?」
珍しいこともあるもんだ。迎撃に移ろうとしたその時、シドウをも止めに入ったアイリが、俺に提案をするなんて。
『エー先輩の脳内チップで、やってほしいことがあります!』
「………いいぜ。言ってみな」
彼女の特性を活かした、イカれたプランが提唱され、俺はまた舌を巻いた。
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