アリスランドB07
如実として現れたのが、ヒートナイフの損耗率。数回の打ち合いで2枚目を換装する俺。しかしアークのタキオンのヒートナイフは、半分ほどしか損耗していない。余裕がある。
彼の余力を削り取る手段を、俺は知らない。
同じ機体。同じ装備。異なるのはダメージの度合いと、パイロット。
どちらも劣る俺が、アークに勝つためにはどうすればいい?
以前の邂逅では、アークの性格を利用して、圧倒的に不利な状況で辛勝してみせた。その時点で俺の手札はゼロとなった。アークは同じ失敗を繰り返さない。
また、アークの言動から、少なくともビーツを信用しているようにも感じられた。
ビーツはアリスランドクルーの男性を奴隷のようにこき使っている。そのなかにはアークもいて、同じ扱いを受けているのではと思いきや、やはりアリスランドのエースパイロットであるだけあって、待遇は異なるらしい。
信奉こそしていないが、一応艦長として認識しているということか。
『滑稽だね。タキオンすら使いこなせていない。ビーツ艦長の方が、まだうまく使う』
「冗談きついぜ。こちとらアリスランドの主砲を浴びた直後だってのに、そんな余力があると思ってんのか」
『機体のダメージを言い訳にするの? いいよ。それが遺言なら、墓標にそう刻んであげるよ』
言ってくれるね。これだから天才ってやつは。
防戦一方となった俺のタキオンを、容赦なく詰めていくアークのタキオン。
やはりアリスランドのレイライトブラスターを浴びた直後に、同系列の化物を相手にしたのがいけなかった。
わずかな差が開くと、瞬時に詰められて大きな差となってしまう。
『落ちろよ………落ちろ! しつこいんだよ! 前からあんたが気に入らなかった! ソータとやっと再会できたのに邪魔をした! ドローンカメラ程度に追い詰められて、煙幕を仕込まれて、本当に屈辱だった………でも今日はいい日だ。あの時の鬱憤を倍にして返してやる!』
『させない!』
『え………!?』
しまった。とアークだけでなく、俺も失態を悟る。
ビーム機銃がタキオンとタキオンの間に割り込み、漆黒のタキオンを俺から引き剥がす。
『………ソータ』
『は? 誰だよお前。それよりよくもエー先輩をやろうとしてくれたな。ここからは俺が相手をしてやる。相手がタキオンだろうと関係ない。覚悟しろよお前』
開幕からブチギレたソータが、俺を庇うように一号機をホバリングさせる。
さらにソータが来た方向。グラディオスが浮上していた。全員を収容し、各ポジションに戻ったのだろう。ソータだけでなく、パイロット全員が順次グラディオスから発艦した。
『タキオン同士の戦いを俯瞰するだけで、我々の浮上を許したのかは知らんが………ビーツ艦長代理。いや、もうすでに正式に艦長になったのか。我々も特務でここを訪れた。問い合わせなら本部に行え。これ以上の戦いは無意味だ。しかし、それでも本艦を攻撃するというのなら、我々も無抵抗で落とされるわけにはいかぬのでな。正当防衛を執行させてもらう!』
『いいでしょう。以前から、グラディオスとアリスランドが衝突した場合、どちらが勝るのかが気になっていたのです。お相手しますよ。クランド艦長』
高度を上げるグラディオス。アリスランドも応じるように高度を下げる。
思えば、アリスランドには十分なインターバルがあった。レイライトブラスターのチャージには十分な時間が。ここでグラディオスを落とそうと思えば、いつでも落とせたのである。
どちらが勝るのか。原作を忠実に再現するつもりは毛頭ないだろう。敵艦側に転生した者として、徹底した環境の改造と、戦力の増強を施した強敵として立ち塞がり、グラディオスを上回って世界を救う救世主に立つつもりなのか?
『楽しんでいるのかね? 私的な理由で対艦戦をするなど馬鹿げている! 連合軍の理念に反する!』
『これは失敬。なにもすべて楽しんでいるというわけではないのです。こちらも特務として動いている以上、グラディオスを制圧して捜査する権限を持っているだけのこと。抵抗するというのなら、実力行使をさせていただく!』
あくまで正当性は自分にあると謳うのか、こいつは。ふざけやがって。
クランドの指摘は否定したが、絶対に楽しんでやがる。調子に乗っている。
ならば、俺もグラディオス勢として、ビーツのライバルとして、楠木美壱との因縁ありき者として。
現実というものを、どちらが上なのかを、この世界の原作への愛の大きさを教えてやる。
ただ、それを実行するには難関があった。
アークのタキオンである。
俺はどうしても、アークとソータを争わせたくはないのだ。これにはとある重要な秘密が絡んでいる。ただ、それを今、ソータに教えていいものかどうか、迷ってしまうのだ。それを知った時、ソータの操縦は鈍る。そして躊躇いが発生してしまう。躊躇えばいかにソータとはいえ、アークの敵ではなくなってしまう。
それなら、俺が相手をする方がまだマシなのだ。
「下りなソータ。ここはタキオン同士でやるのが最適なんだよ」
『なに言ってんのエー先輩。タキオンの状態見た? 動いてるのが不思議なくらいの損傷だよ。ここは俺に任せて、エー先輩こそ下がってて。俺はエー先輩をこんなにしたこいつをボコしてから、アリスランドに一発ぶち込んでくるから』
なんて凶悪な口調だこと。
俺のために怒ってくれているソータが、たまらなく愛おしくなる。あとでキスしてやろ………違う。そうじゃない。
『エー先輩!』
対艦戦が本格化する前に、俺たちがいる空域にナンバーズの改修機が集合する。グラディオスはすでに戦力の布陣を開始していた。ナンバーズ後半の未改修機も甲板に配置している。
『おうテメェ、アークとか言ったな! なぁにまた好き勝手やらかそうとしてやがるんだぁ? ァアッ!?』
『お前とは因縁があったな。だが、今回はエー先輩の制止を聞くつもりはない。今度こそ落としてやる』
『そうねぇ。まずはこの前の続きといこうかしらぁ。その色違いのタキオンの首、叩き切ってあげるわぁ』
グラディオスのハンガーで一戦交えたハーモン、コウ、ユリンが、シドウや俺の合図を待たずに仕掛けた。
「よせお前ら! そいつのタキオンが本気を出したら、いかに改修機とはいえ勝機が薄い!」
『なら、その勝率を底上げするだけだ』
ソータまでアークのタキオンに仕掛ける。
『エースはポイント維持! アリスランドはグラディオスに仕掛けるつもりだ。その状態で戻れば、砲火に巻き込まれる。ヒナ、シェリーはエースを保護。アイリは俺に続け。アリスランドの砲塔を潰す!』
『お待ちください! アリスランドよりさらに熱源の射出を確認! これは艦載機………ガリウスHです! 数は10!』
『くっ………あれがグラディオスへ向かうのはまずいか。エース、済まないがそのまま飛べ! このメンバーでガリウスHとやらを抑える!』
早速混戦に突入した。
すべてビーツの布陣だ。アークが単身で4機を抑えれば、シドウたちは少ない手数で多くを相手にするしかない。
どうする。どうすればいい?
ビーツをアリスランドごと落とせば勝てる。しかし今、それをやると今後に支障が出る。アリスランドもまた、地球防衛の戦力の一端を担っているのだ。それを失うことは、本編の流れの阻害となりかねない。
ビーツもそれを理解しているはずなのに、まったく意に解さないつもりか、沈黙したままグラディオスへ攻撃を開始した。
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