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銀の髪の少女B10

 あの赤い猿のような造形をしている化け物が、翼も推進器も持たずしてどうやって飛翔しているのか。


 なんて考えるのは野暮だ。それならアンノウンだってどうやって飛翔しているのかという理論を解明しなければならない。


 2回目となる邂逅。あの赤い化け物はアンノウンと類似点が多いが、アンノウンと敵対している。


 今回などアンノウンの母艦3隻を同時運用したくらいだ。アンノウンにとってもそれほどの脅威らしい。


『追い込め! 全機、近接戦に切り替えろ! ただしいつものフォーメーションは崩すな! ビーム兵器によって敵を殲滅する!』


「いや、殲滅する必要はありません。要は熱を奪えばいい。海に叩き落とせば、それでこっちの勝利です」


『そうか。お前たちはそうやって攻略したのだな。聞いたな? 各機、海に向かって敵を誘導しろ!』


『了解!』


 近接戦と聞いて瞳を輝かせたハーモン、コウ、ユリン。パイロットチームのなかでも近接戦に特化した前衛が、ロングソードを携えて赤い猿に突撃する。


『くっ………相変わらず早え!』


『これじゃ、こっちが遊ばれてるみたいでイラついてくるわぁ。引き裂いてやりたいくらいねェッ!!』


 3機が同時に仕掛ける。タイミングをずらした剣戟。しかし赤い猿は飄々としながら身を翻す。その様にユリンが早々にブチギレた。


『落ち着け! 手数を増やす! エース、ソータも前衛に加われ! 俺も行く!』


 俺たち3人も加わることでビームの刃が増える。ソータは最初から二刀流で仕掛けた。


 とはいえ、やはり───大気圏専用高機動装備であるイーグルジャケットを改修機に備えてみたとしても、ファイターモードと比較して、推進力がどうしても低下する傾向にある。


 これまで赤い猿に肉薄できたのは、飛翔に特化した戦闘機形態、つまりファイターモードであったからこそだ。元の姿になってしまうと、この前のタキオンのように全身で空気の抵抗を浴びてしまい、失速してしまう。


 その点、赤い猿は小柄で細身。空気を切り裂くように飛翔する。


 いかに天才たるソータの操縦であっても、ワンテンポ遅れてしまうのだ。


「………どうして、奴は変身しない? タイミングなんて、いくらでもあるはずだ」


 ローマで遭遇した赤い化け物は、赤いタキオンへと変身した。


 今回もおそらく、そのような形態になり、最終的に肥大化して触手を生やすと思っていた。


 ところが赤い猿は、9機に包囲されても踊り続けていた。


 反撃も受ける。すべて殴る、あるいは蹴るなどといった、原始的な攻撃である。それは人型に変形したガリウスGならビームシールドで数回は流せる。


 学習しているはずなのだ。距離を何度も取って、ここで変身───なんてことも考えたが、その気配はない。


「学習………まさか、こっちの推進剤が尽きるのを待っている? それとも俺たちの消耗か?」


 それも否定し難い。前回の赤い化け物は、学習した末に俺たちの対策を講じて───


「………そうか。学習する暇がないんだ!」


 赤い猿に猛烈な攻撃を仕掛ける途中で、前回の戦いを振り返った結果、とある仮説にたどり着く。


 ローマで遭遇した赤い化け物は、タキオンの内部に侵入したのだ。レイライトリアクターに触れ、タキオンを理解した。その上で封印され、36時間後に学習した結果を出した。


 今回は赤い猿がタキオンにもガリウスにも侵入する気配はない。9機で追い込んでいるから、その暇がないということだ。


『そこ!』


『うまいよシェリーちゃん!』


 タキオンが赤い猿をロングソードで斬る、というよりも殴りつけて通過した瞬間、上空からビームが赤い猿を直撃する。


 ヒナの六号機は未だファイターモードで、その上に片膝立ちしているシェリーの五号機が足早を安定させて狙撃したのだ。


 なるほど、可変機ゆえに2機が組むと役割分担ができるんだな。ヒナの操縦技術なら、十分にシェリーに狙撃を集中させられるだけの環境を提供できるだろう。


「いける………っ!?」


 赤い猿が落下する。やはりビームが有効だ。シェリーはロングライフルを担いでいる。カートリッジによって実弾とビームを切り替えられる優れもの。優れた狙撃力で左側面の真芯を捉えると、華奢な手足が焼かれてちぎれた。


 だが、落下の途中でそれが発生した。焼き切れたはずの左側面が再生するどころか、以前よりも太く強靭となっている。右側面も同様に肥大化する。


 変身というより、強化に等しいかもしれない。


 俺たちを分析し学習する時間がないゆえの、苦し紛れの抵抗。もしかすると赤い猿にも余裕がないのか。


 つまり両者によるギリギリの駆け引きに発展しているのかもしれない。


 ハーモンとコウが両サイドから迫ると、ロングソードを強化した双腕で防ぐ。ユリンのハイドアタックは背で受けた。ソータとシドウの連携で前方から交互にポジションを入れ替わり、フェイントを交えて切り結ぶ。


 頭上からのビームの放射。アイリはグラディオスからドローンカメラを呼び寄せて支援機とし、頭部にビームを浴びせている。


 それでも赤い猿は落ちない。


 こうなったら、強引に押し込むか。


「みんな退け!」


 ある程度ダメージを与えると、両腕のビームシールドを揃えて突撃。


 赤い猿にタキオンが接触。弾丸のように現在のポイントから引き剥がす。目指すは海だ。斜め下へと降下しながら、韓国の焼けた大地から離れる。


『なにをしているエース!』


「こいつを海に突き落とします! タキオンなら、やれる!」


 前回はまざまざと推進器を作っていたので、それらを潰すことで勝機に繋がった。だがこの赤い猿はそれらがない。ならばタキオンごと海に突っ込んでしまえばいい。


『警告。タキオンの両碗部に深刻なダメージ』


 小柄だろうが内包している熱量は鉄をも触れれば融解させる。タキオンもビームシールドである程度の熱を遮断していなければ数秒ともたない。


 だがここで両腕が破壊されたとしても、この赤い化け物だけは海に墜落させなければならない。


 あと少し。あと数秒両腕が持てばいい。


「お前はここで、落ちろぉぉぉおおおおおおおお!!」


『テン、セイ………シャ』


「っあ!?」


『ミツ、ケタァ』


 またもやあの声が聞こえた。


 タキオンに化けた赤い化け物は、上から俯瞰するような、観察者のようなイメージだった。


 この赤い猿はどうか。俺の存在を知って、どこか喜んでいるような印象。


 不気味かつ不可解。俺を知ってどうなる。


 だが、それを契機に赤い猿がまたもや変動した。


 猿を模した口腔から、あの赤い触手が沸いた。


「くっ!」


 全速力に達しても急な軌道修正を可能にしているのがタキオンの特徴だ。


 赤い猿から離れると、タキオンがいた場所を赤い触手が通過する。


「あと少しってところで………みんな、あの赤い触手に捕まるな! 機体がもたない!」


『まさに化け物だな………お前、よくあんなのに勝てたな』


「遺憾ながら、あの時はタキオンが2機揃ってましたからね」


 原作から逸脱した展開。赤い化け物が変身すると、あのシドウでさえ戦慄する。


 タキオンを学習させる暇はなかったはず。接触したとはいってもビームシールドで遮断した。


 熱量を奪う海に落下すれば赤い化け物とて終わる。そんな間際にタキオンに侵入する余裕があるとは思えない。しかし変身するなにかを与えてしまった。


 俺が招いてしまった、なんらかの失態───そうか。学習したのはタキオンではなくガリウスだ。


 コウとハーモンは何度もロングソードで立ち向かった。あの剣戟を受け止めた数秒で、ガリウスに侵入したってことか。



明日、明後日と4回更新とさせていただきます。ご了承ください。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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