銀の髪の少女B09
第14話「銀の髪の少女」での結末はどうだったか。
Eタイプこそ現れなかったが、初めてFタイプが登場したような。遠距離攻撃を仕掛けられ、弾幕を潜るのも精一杯だった。ソータが先行スることで初めて穴が空き、それを広げるようにシドウが続く。しかし指揮官が離れてしまったことにより指示に数秒の遅れが生じた。数体のアンノウンがグラディオスに襲撃を仕掛ける。阻止しようとしたハナでは間に合わず、あと少しでアンノウンの脅威がグラディオスを襲おうとした時。ライラが干渉して止めるのだ。アレンがそのアンノウンを倒すことで難を逃れる。
今さらFタイプが出たところでソータたちの敵ではない。そのくらいの敵が出るなら、俺だって安心してソータたちと出撃した。
でも、この赤い化け物は別格だ。
手応えはあったはず。それでもまだ生きている。
ヒートナイフを掴んで止めて、体のどこかにあるコアに刃が届かないようにしているわけか。
そのヒートナイフもメキメキと音をさせてひしゃげる。熱量で負けた。赤い猿が四肢で触れている部分が溶断されていく。
舌打ちしてヒートナイフをパージ。
剥離したヒートナイフに左腕のヘビィガンを連射する。
「物理攻撃は通用しないとか、相変わらずチートだな!」
ヒートナイフを溶断した赤い猿は、ヘビィガンの銃弾を受けても平然としていた。
まるでスライムを撃っているようだった。手応えがあったのはそのせいだ。猿のような外見をしているが、あまりにも柔らかい体をしているせいか、銃弾が体表面に触れた途端に運動エネルギーを奪われ、停止したあとに吸収されるように溶かしてしまう。
銃弾は飲まれてしまう。実体剣は止められる。
ならばと右腕からヒートチェンソーを出現。振り翳して上から叩きつけるような剣戟を放つ。
その攻撃は通用した。真剣白刃取りとスライムのような粘性をもってしても、回転する刃を前にしては掴むこともできないし、運動エネルギーを奪おうにもモーターの勢いを止めるには難しいのだろう。
両手で掴もうとするが止められず、結局は腕をクロスして防御する形となる。
だが、そうであったとしても、
「硬ぇな………!」
タキオンの半分しかない体躯の、どこにそんな力があるのか、今度はヒートチェンソーが受け止められたのだ。
どれだけ回転する刃で削ろうとも、両腕を切断するまでにも至らない。
そこで左腕のビームシールドを展開。全面にではなく前方に集中。ビームを拳に纏わせるように歪曲させ、赤い猿を横から殴った。
ビチャッとした感触。まるで水風船を拳で叩いたようだ。
横からの攻撃で赤い猿は弾かれて、その勢いのまま距離を取る。
「逃がさねぇよ!」
変身はさせない。する前に倒す。全推進器をフル稼働させ、赤い猿を猛追した。
まるで殺人的なGがコクピットを襲う。パイロットスーツが過負荷を軽減しているはずなのに、これに限ってはまるで無制限。遠慮というものを知らない化け物のような推進力で赤い猿との距離を詰める。
ヒートチェンソーを突き出す。赤い猿は左腕を突き出して拮抗。
赤い猿は防戦一方だ。
だが、そうであったとしても赤い猿は不気味な笑顔を絶やさない。それが不安を煽り、心を消耗させる。俺にとってのトラウマにも等しい。
「う………おおおおおおおおおおおお!!」
恐怖を押し殺すべく、絶叫しながら次のアクションへ移行。
左腕で殴ろうとすると、右の拳で応戦される。こちらのビームを軽減してしまうリスクもあるが、ヘビィガンを連射する。ビームシールドを貫通して、赤い猿が銃弾を肩や腹で受け止めた。
「………ん?」
タキオンのメインカメラが、一瞬だけ発生した異変らしきものを捉えた。
ヒートチェンソーが、より深く食い込んだのである。どれだけ回転する刃を押し付けても切断すらできなかった。数センチ削るだけが限界だったのである。それが左手の掌が、人差し指と中指の間を割くようにチェンソーが食い込むと、そこで止められてしまった。
「今のは………そうか。こいつ熱を操作して、ぐっ!?」
いきなりだった、赤い猿がヒートチェンソーを押し返した。それだけではない。チェンソーに負荷をかけ、へし折ったのである。
ヒートナイフは通用しない。迎撃手段がまた限られた。ここは防御に徹するしかない。右腕でもビームシールドを展開しようとコアを起動し───
『エー先輩、下がって!』
ソータの声が聞こえた。
ノーマルな操縦では不可能な反応速度を可能にするのが神経接続型だ。ラグのないダイレクトな操縦で、赤い猿に逆噴射を行い、距離を開く。
すると間髪入れずに多数の誘導弾が叩き込まれた。
どうやら今ので制限時間を使い切ってしまったらしい。時間にして数十秒しかなかったが、それがソータたちを巻き込まず、赤い猿を変身前に叩き潰す唯一の好機であったのにも関わらず。俺が無力で凡夫なせいで、ここから全員を危険に晒してしまう。
「っ………よく聞け! 銃弾は使うな! ビーム兵器だけで応戦! ロングソードはビーム部分だけを使わなければ折られる! 物理的な武器は受け止められると思え!」
情報を瞬時に共有する。それが生死を左右するというなら、躊躇っている場合ではない。
『つまり、今みたいにミサイルなら有効なわけだ』
タキオンの隣をソータの一号機が通過する。
赤い猿は、猿楽の舞を披露しているつもりか、ミサイルの爆炎から逃れるとソータを挑発するように笑い、上空へと誘う。
一号機は両翼に懸架しているミサイルを放つ。これで懸架しているものはすべて撃った。そのミサイルと追走する勢いで飛翔する。赤い軌跡と青い軌跡、誘導弾の白煙が空に複雑なラインを描いた。
それからソータを追う二から八号機。高機動なドッグファイトを仕掛けつつ、フォーメーションを組んで赤い猿を猛追する。
『なんだこいつ………マジで当たらねえ!』
『こっちの誘導弾も切れた! こうなったら全員で追い込むぞ!』
ハーモンとコウは短気な性格をしているので、どちらかといえば誘導弾に頼る戦闘は好まない。積載数も最小限で、むしろドッグファイトのためにスペックを振っているとも言えた。重荷が無ければ速度も上がる。
『密集するな! 狙われるぞ!』
赤い猿が空中で急制動をかけ、ガリウスG改修機のフォーメーションに突っ込んだ。
機首部分にあるビーム機銃で迎撃するも、それらの弾幕を軽々と避け、不気味な笑みを浮かべながら飛び蹴りを放つ。
『こいつ………やるじゃない!』
飛び蹴りの対象とされたのはユリンだった。
左翼を狙われる。寸でのところで変形し、元のガリウスGとなると、ビームシールドで蹴りを受ける。ただし、タキオンの攻撃さえも止め、Eタイプでさえも一撃で屠るほどの蹴りだ。まともに受ければビームシールドなど紙切れも同然である。その点、ユリンは操縦技術も向上しているし、危機管理能力も優れていた。一瞬ビームシールドで受けると、そのまま味方機のいない斜め左へと流したのである。
「改修機でもダメか………くそっ!」
足のラックからロングソードを外して携える。
こうなったら赤い猿の弱点を見抜いて、海のなかに叩き落とす他なかった。
ブクマありがとうございます!
明日から土日なのです、が………いよいよ最終回に向けて、いやまだ中盤なのですが辻褄合わせをするのが苦労しまして、4回更新とさせていただきます。意味わからないです。ふたつの作品を同時に書いているようで。自分の作品の考察を自分で作って改善して変化点を作って………プロット無しで脳内で全部やるのは苦労します。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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