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銀の髪の少女B04

 ひとの気配のない通路にて。


 ピッ、ピッと微かになにかが鳴る。誰かが端末を操っているのだ。


 一定のリズムとは呼べないが、かなり早いタイピングである。


「………送信できない?」


 メッセージを打ち終え、送信を押しても取り消される。3度ほど続けると、なんと送信しようとしたメッセージが消去されてしまった。


「チッ………故障か? こんなところで………まずいな。修理しようにも………くっ。まさか邪魔が入った? 気付かれた? いったい誰が………?」


 その現象に焦り、恐怖する。


 一旦端末を閉じて、周囲に監視の目がないか調べたあと、足早に去っていく。


 それを、俺が新たに設置した小型の監視カメラがばっちりと撮影していた。


《ハルモニ。消去したメッセージを回収しろ。こっちに回せ。あと、端末には侵入したままにしろ。同様の内容、送信先はすべてブロック。暗号に切り替えるようだったら解読。メッセージを消去して没収。これを繰り返せ》


《イェス。メカニック・エース》


「ノギ少尉………おい。エース。どうした?」


「あ、失礼しました。少々脳内チップが発熱しておりまして。意識が飛びかけていました」


「戦闘後だ。それは仕方ない。だがこの会議はどうしても必要だ。耐えてくれ。その後、パイロットチームには数時間の休憩を言い渡す」


「頑張ります」


 会議の途中だったのに、とある描写の懸念から、対策を入念に行った結果、クランドたちとの会議中にも関わらず意識を飛ばしてしまっていた。


 けれども、これでしばらくは大丈夫だ。決着をつけるのはそう遠くはない。


「彼女の名前が必要だな。なにか言っていなかったか?」


「世話役として頑張っている、整備士のシーナが協力するでしょう。ひょっとすると、名前くらいは思い出せるかもしれません。そうならなかったら、この艦にいる間だけは、名前を与えてもいいかもしれません」


「了解した。そちらはきみの判断に任せる。処遇は一般人と同様。サフラビオロスの時のように、偶然収容した難民として扱うが、彼女の容態も考慮して、行動範囲は広げてもいいだろう。それらの管理は引き続きシーナ・サクラに一任するとする」


 ついにクランドの指示に、シーナの名前が出始める。


 補充要員にして整備士。なんてこともないキャラクターだったはずが、もう無視できないくらいに重要なポジションへと出世していた。本人に言うと調子に乗りかねないので、あくまで秘密であるが。


「さて、エース。重要なのはここからだ。これを見たまえ」


「………これは」


 クランドのパソコンのモニターが浮上し、俺たちに見える場所まで上がる。


 そこに映っていたのは、中国支部のバリアの外よりも荒廃した大地があった。ひとが住めないほどである。


「中国支部で急遽改修型のドローンカメラを出撃させたことにより、その有用性も示せたからな。こうして無人偵察機として先行させてみた。結果がこれだ。これは韓国のソウルだ。………迂回するべきだと思うかね?」


 推進器をジャイロに切り替えたドローンカメラで大気圏内でも飛翔を可能にしたドローンカメラで撮影した映像には、心臓が跳ね上がるほどの衝撃的な光景があった。


 あのクレーターである。以前も見たが、あそこにはなにもなかった。


 もしここにあの赤い化け物がいるようであれば、タキオンを出撃させるべきだ。単騎にして決死の覚悟で挑まなければならない。


 しかし、ここで気になるところがひとつあった。


「そのドローンカメラは、無事に帰投したんですか?」


「ん? ああ。敵襲はなかったからな」


 カイドウが答える。


 俺はその回答でほぼ安心した。回答はひとつだった。


「なら、小さく迂回するべきかと。罠である可能性も否めません。しかし、あの赤いなにかが潜伏している様子もありませんし。消耗は最小限にするべきかと」


「なぜそれがわかる?」


「最初にあの赤い化け物に遭遇した際、大量のアンノウンに囲まれました。それらと交戦にはなったものの、半数が俺たちよりも赤い化け物と敵対行動をするような動きをしていました。人間とアンノウンの敵であるなら、アンノウンがいても不思議ではない。ドローンカメラが飛んでもアンノウンに襲われなかったというなら、まずあの赤い化け物が潜伏している可能性は、ほぼゼロと見て間違いないかと思います」


 そう。例えばビーツの野郎が、俺をビビらせるために作った人工的なクレーターだったりしてな。あいつならやりかねない。


 それにクレーターも小規模だ。ソウル全域を陥没させるような規模でもない。あたかも爆発させてそうなったような形状をしている。一見見間違えてしまいそうだが、突貫で製造したのか、よく観察すると荒が目立つ。


 すでに心理戦に突入しているということだ。


 原作でアリスランドがグラディオスを迎撃するポイントから、かなり離れている。ビーツはそれを見越して、ソウルを通ると偽装工作をしたのか。


「………ビーツは、グラディオスの航路を把握している?」


「なんだと!?」


「あ、いえ。確証はないのですが、こういう偽装があると、どうにもビーツに誘導されている気がしまして。もしかすると、今回小さく迂回することも想定しているかもしれない。………ああ、くそ。なにが正解なのかわからなくなる! 小賢しい野郎ですねぇ、ビーツって野郎は!」


「きみがそこまで感情的に悪態つくとは珍しいな。………疑心暗鬼になるものわかる。私も同様に、なにが正解なのかがわからない。レーダーを封じられて雲のなかを進んでいるような心境にもなる。だがなエース。そういう時こそ、一旦落ち着け。きみはひとりではない。ひとりになどさせない。私もともに考える」


「………はい。失礼しました」


 ビーツのこととなると、俺もついにヒステリック気味になってきた。クランドの目の前で、つい取り乱してしまう。


「クランドよぉ。いくらこいつが規格外だからつっても、進路のことまで考えさせるのは荷が勝つんじゃねぇのか?」


「いつものことだ。少尉もそれを理解して、ここにいる。とはいえ、年相応の反応を見れたのは意外だったな。いささか新鮮味があって面白かった」


「それは言えてるぜぇ」


 くそぅ。


 ついにカイドウだけでなく、クランドまで甥っ子でも見るような目をしてきやがる!


 俺はそんなに可愛くないぞチクショウ。


「まぁ、アリスランドはいずれ仕掛けてくる。それがわかっているなら、先手をくれてやり、即反撃に転じられるよう整えればいいはなしだ。そこまで気負う必要はない。足労をかけたな。そろそろ休みたまえ。少尉」


「はい。失礼しま───」


「ああ、ちょいと待ちなエース。お前のタキオン、いつまでもネイキッド状態じゃそろそろ辛いだろ。ジャケットの件で話がある。ハンガーに寄っていきな。イリスが待ってるぜ」


「あ、はい。わかりました。では行ってきます」


 大気圏内でのタキオンはネイキッド状態がデフォルトだ。というかタキオンにジャケットを付けるという発想がおかしい。原作では登場しなかった。


 しかしここにいるのは超天才にして超優秀な超一流メカニックのカイドウ。転生者の俺でさえ度肝を抜く発想ができる。


 ジャケットのことなら嬉しい限りだ。俺はその足でハンガーに向かうのだった。


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この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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