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再起動B04

 本編から逸脱していることは、すでに承知している。


 いったいどこで、なにが狂った?


 ヒナを助けたところから? 俺の原作破壊行為が始まったのは、そこから………ではないな。


 第3話でもそう。ソータの代わりに出身コロニーであるサフラビオロスを大破させた。


 その前ではこの世界の基となったアニメで顔が出なかったケイスマンと対面したり。俺は裏方から常になにかを変えた。


 アイリの負傷を請け負い、戦死するはずだったコウを救った。


 その代わりにアリスランドが宇宙空間にいて、ビーツと出会った。


 第11話ではEタイプという第1クールのラスボスが2体、それも異常進化した個体に挟撃された。


 こちらが原作を壊すと、世界が呼応するように俺に反発し、試練を与える。


 語られざる第12話と第13話の幕間。空白の半年間では、本編に登場するはずのないアンノウンではない敵と戦った。


 そして今、俺は尋常ではなかった敵に、単独で戦いを、殺し合いを挑もうとしている。


 無茶なのはわかっている。


 ここは山岳地帯なのだ。


 ローマでは海上で決戦を演じ、赤い化け物の推進能力を奪ったゆえに海底に沈めて、二度と這い上がれないようにしてやった。


 海ほど熱を奪える環境ではない。


 ならどうする? 単独でオフェンスとディフェンスをこなし、コアを探りあて、破壊するしかない。


 グラディオスが消火弾を放つ。水ではなく、粉末と泡で炎を覆って押し殺すタイプだ。


 タキオンに追従し、軌道を変えて落下。山間の火災現場へと着弾。ほぼ炎は消えた。グラディオスはすでに次弾を放っている。ついでにビーコンを送り、正確な座標を示すと、火災現場を通過して、その奥へと到達した。


「ハルモニ! サーモグラフィーで周囲を警戒! 特にこのクレーターの底に注意しろ!」


『イェス。メカニック・エース』


 タキオンは急停止しホバリングしながら周囲を警戒する。レーダーを可能な限り広げて、索敵を行った。


 心臓がやけに大きく、そして早く脈打つ。口から飛び出そうなくらいの緊張で、軍服にこれ以上とない汗を吸わせた。


 呼吸が浅く、早くなる。


 それでもタキオンの性能と、俺の感覚をフルにして、索敵を続ける。


「………いない?」


『メカニック・エース。ローマで交戦した赤いエネミーに類似する熱源は感じられません』


 ハルモニがそう判断するなら間違いない。


 眼下に広がるクレーターは、とても小規模だった。


 山ひとつを内側から消しとばしたようにも見える。それだけでも途轍もない広範囲なのだが、ローマは街ひとつだ。ローマそのものがクレーターとなった。それと比較すれば、規模も小さく見えてしまう。


『エース! 敵はどうだ? いるか?』


「反応は………ありません。でも、そうやって油断を誘っているのかも。ローマでも油断した隙を狙われました。グラディオスは警戒を厳に。現中域を迂回してください」


『承知した。エース、必ずあとで合流するように』


「はい。俺はこのままこの場所を調べ、殿を務めます」


 決して油断はしない。いつでもフルスロットルで離脱できるように感覚を鋭敏にしながら、タキオンをクレーター内に降下させる。


 その間にグラディオスは航路を変える。またもや北京から遠ざかる。ほぼ西へと進むしかない。これでは戻っているようなものだが、別に今日中に中国支部に到着しなければならない理由などないのだ。


「ハルモニ。サーモグラフィーはどうだ?」


『温度は一定を保っています。電波、大気の振動、音源、特に無し』


「………」


 タキオンは降下を続け、ついにクレーターの底へとたどり着く。


 ローマではこのポイントが赤々と光り輝いていた。しかしこのクレーターは輝くどころか熱源すらない。


「油断すんな。ローマではクレーターに注いだ海水を冷凍弾で凍らせても、あの赤い化け物は生きていた。極低温にしても潜伏できるなら………こう、するしかない………なっ!」


 再戦の覚悟を決める。


 蜂の巣を突くように、タキオンはヘビィガンをフルオートでクレーターの底へ乱射する。


 同時にフルスロットルで加速。上昇。あの赤い触手に捕縛されればひとたまりもない。


 極度の緊張と興奮。


 これは愚策であり、勇気ある挑発行為だ。


 もしあの赤い化け物が本当に潜伏しており、見逃してグラディオスに合流しようと背を向けた途端にズドンとやられる可能性も否めない。


 叫びたくなるような恐怖を噛み締め、ガチガチと歯を鳴らしながら狂気を湛える。


「あぐふぅ………っが………来るなら………来いよぉおおおッ!!」


 クレーターから離脱する。ただし、正面を向いたままの逆噴射で。


 カイドウが言ったとおり、パイロットスーツ無しの搭乗は負担が大きい。心臓どころか内臓すべてが口や、穴という穴から飛び出るほどの苦痛に耐え、絶叫する。


「ハァ、ハァッ………熱源は!」


『感知できません』


 クレーターで土煙が舞う。これだけ撃てば破壊された穴から、赤い光が見える───はずだった。


 タキオンを強風が襲い、流されそうになるのをサブスラスターで姿勢制御しながらポイントを維持する。ロングソードを構えながら、強襲を待った。


 だが、その強風で土煙が取り払われると、ハルモニの言うとおり、熱源どころか赤い光源すら無い。


「………ただの、クレーター………なのか?」


『そう判断するのが最適であるかと思います』


「………1分待つ。それを過ぎても変化が無い場合、グラディオスと合流する」


『イェス。メカニック・エース』


 進路を変更したグラディオスは、まだレーダーに映っている。2基のスラスターの光も見える。1分待っても合流は容易い。


 嫌な1分だった。


 どうか勘違いでありますようにと願う自分と、来るなら来いよと興奮する自分。両方とも俺なのだ。


『───1分が経過しました』


「………わかった。戻るぞ。ただし、このクレーターに絶対に背を向けない。ハルモニは引き続き周囲を警戒」


『イェス。メカニック・エース』


 ただのクレーター、あるいは抜け殻だったか。


 まだ安堵こそできないが、戦いは避けられた。今さらだが、左手が震えていることに気付く。


「………戦わなくてよかったと、思うべきなんだろうけどさ」


『戦わずして済むのなら、なによりです。あの赤いエネミーは未知数です。仮に同規模のエネミーと会敵した場合、タキオン短期で勝利する確率は5パーセントを下回っています』


「最悪な数字だな………」


 命拾いしたと、考えるべきなのだろう。


 タキオンはずっと後方を見ながら逆噴射で加速する。グラディオスの直掩に入り、帰投命令を受け入れずに甲板に降り立つと、数分ほどクレーターのあるポイントを警戒し続けた。










 その数分後。ヘビィガンの銃弾を受けたクレーターは、強風の影響か、異音が地の底で微かに鳴っていた。







『テン………セイ………シャ………』







ブクマ、リアクションありがとうございます! 総合評価が800に到達しました!

ホラーチックな終わり方です。

次回は15時を予定しております!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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