狂う「僕」
5月14日早朝。起きると僕は部屋にいた。昨夜のことは今でも覚えている。普段は見ないテレビをつける。昨夜の全世界自身は不思議なことに被害は出なかった。
ここ三上崎以外は。
あの後、どうしたかは知らないが、僕はここに居て、山も消滅している。しかし、外に出て見ても、特別警戒もされていない。何故か。
『それは次元の干渉であろう』
脳裏に響く奴、カイザリオン。鎧神慨装とかいう奴。昨夜は奴とリンクして、脳に情報と言う情報が厭と言うほど流れ込んだ。
「お前の言う、大いなる意思か」
『左様。次元に干渉せし不穏分子又はその被害を元に戻す、ということだ。もっともそれも今ではあまり働いていないがな』
取り敢えず、状況をまとめよう。
僕はこの鎧神慨装に「搭乗」し、天使を殺した。天使は次元破壊者の僕であり、この次元を破壊しようとした。僕はどうやら、選ばれた(カイザリオンの言う大いなる意思に)。どうやら僕の役目はこいつに乗ることらしい。曰く、鎧神慨装と言っても、所詮ロボット。操縦者なしには満足に動けないらしい。確かにこんな兵器がヒトなしに動いたら、この世界のバランスは崩壊だ。詳しいことはまだ分からないが、
「今日は休むか・・・」
取り敢えず、今は眠りたい。
ところが、だ。
『すまぬが主よ。この次元に飛来する物体を感知した』
僕は起きざるをえない。カイザリオンの次元転移により、僕の体は世界を超え、次元を超えた。莫大な情報にあてられて、僕もおかしくなったのか。いや、カイザリオンと体を共有しているのか。
空間の中で魔人は浮遊する。すると空間に切れ目ができて、中より異物が出てくる。
『破壊者の僕、合金の体を持つもの、ケツァルゴス』
蛇にも似た頭部をもつ機械の化け物。それを見ても僕は何とも思わない。麻痺している、思考が。頭が。僕は腕を動かす。リンクするように巨人もそれに合わせて。
駆けだす。機械の化け物に向かって。両手を突き出し。カイゼルブレードを起動させる。
ヴゥゥゥゥゥ・・・
唸る刃をその頭部に叩きつける。緑の鮮血。悲鳴。冷酷に僕は奴の口を両手で力強く開いた。そして、それを裂く。
がぁぁぁあぁぁぎゃぁあああぁぁぁぁぁ・・・・・・!!
怪物の、絶叫。それを見つめる、赤き瞳。顔を血から庇うように腕で覆う。僕はただ、それを見る。
次元を超える怪物たちを誰が統べるのか。
『統治者、ヴァーウル。その目的は次元の統一。その正体は不明』
「奴を倒せば…?」
肯定の意を返すカイザリオン。
「柄じゃない。けど、やってやるさ」
そう言うと、カイザリオンは廻を元の次元に帰した。
気がつくと、廻は夕闇に染まり始めた空をマンションの部屋から見ていた。ふと、視線を落とし、階下を見る。
彼女だ。
赤茶がかった短い髪を風に揺らし、マンションに立つ、幼馴染。ナツキ・エリクソン。
僕はたぶん、彼女が好きなのだろう。
だから、僕は彼女を遠ざけたいのだ。
矛盾した考え。されど、彼はそれを貫く。それは贖罪。
中学入学直前。彼とナツキの間にあったこと。彼女も、誰も知らない、彼だけの記憶。
「俺はナツキを殺したんだ・・・」
その時、既に運命は狂い始めていたのかもしれない。
ウルゴリエル・・・形式ナンバーXXX-1233。ヴァーウルたち次元破壊者の使う量産機。天使と思われる外観。武装は口内に装備された加速粒子砲。
ケツァルゴス・・・形式ナンバーXXX-1245。量産機。偵察・潜伏用の機体で光学迷彩等の装備を持つ。戦闘能力は皆無。




