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第32話 レピア

「どの人が気になる?」


「んー……」


 私は工房を見渡した。


「私はあの人と、あそこの人。あと、あっちの人も気になる」


 剣を作っているドワーフ族。

 小さな明かりの魔道具を作っているヒューマ族。

 それから、何度失敗しても作り直している鬼神族の女性。


「ふーん。あの子が気になるんだ」


「うん。だって全然諦めないし――」


「フリー?」


「ん?」


 レイを見る。

 レイは不思議そうな顔で私を見ていた。


「誰かと話してるの?」


「え?」


「さっきから誰と話してるの?」


「…………」


 私はレイを見る。

 それから、隣を見る。

 小さな何かが、ふわふわと浮いていた。


「…………」


『ん?』


 淡い光をまとった小さな子が、私と同じように工房を覗き込んでいる。


「あのドワーフもいい腕してるね」


「…………」


 私はゆっくり瞬きをした。


「…………っ!」


 小さな男の子?が宙に浮いている。

 背中には、濃いブルーの羽根。

 光を受けるたびにきらきらと輝いていた。


『せ、精霊!!』


『本物!! 初めてちゃんと見た!!』


 思わず声を上げそうになって、両手で口を押さえる。

 騒いじゃダメ。

 今は試験中だ。

 でも――。


『精霊だよ!? 目の前に妖精いるよ!?』


「私はレピア」


 そして、ガルドの方をちらりと見た。


「ガルドの友達だよ」


「…………!」


『友達!?』

 

 興奮を抑えきれず、私は少しずつ横へ移動した。

『レイには見えてない。』

 

「フリー?」

 

 フリーが離れてくからレイがさらに首を傾げる。

 レイに今はちょっと待っての合図

 ガルドから見える位置まで移動すると、私は大きく両手を振った。


『ガルドー!』


 しばらくして、ガルドがこちらに気づいた。


「?」


 眉を上げ、自分を指さす。

 ――どうした?


 そんなジェスチャーを返してくる。

 私は隣に浮かんでいる精霊を指さした。

 それから目を指して――。


『この子! 見えるの!』


 もう一度精霊を指さし、今度はガルドを指さす。


『ガルドの精霊!?』


「…………?」


 ガルドが眉間にしわを寄せた。


『伝わってない!』


 目を指す。

 精霊を指す。

 ガルドを指す。


 もう一度。


『見える! この子! ガルド!』


 すると、ガルドの視線が私の指さす先へ動いた。


 そして――。


「……!」


 ガルドの目が少し見開かれた。


『伝わった!?』


 ガルドは私と精霊を交互に見ると、今度は自分の目を指してから私を指さした。


 ――見えるのか?


 私はものすごい勢いで何度も頷く。


『見える! めちゃくちゃ見える!』


 ガルドは一瞬目を丸くしたものの、すぐに「分かった、分かった。あとでな」とでも言うように片手を上げ、試験会場へ戻っていった。


 私もレイの隣へ戻ろうとした、その時――。


 すぐそばから、くすっと笑う声がした。


「面白い子だね」


 振り向くと、濃いブルーの羽根の精霊が楽しそうに私を見ている。

 そこで初めて、声の主をちゃんと見た。


「…………っ!」


「……友達ってことは、ガルドと契約してるの?」


「そうだよ」


 レピアはあっさりと頷いた。


「ガルドは僕と契約してる」


「……!」


『やっぱり!』


 また興奮しそうになって、ぐっと声を抑える。


 精霊を見たこと自体は、これが初めてじゃない。


 これまでにも二度、ちらっとだけ姿を見たことがある。


 でも、ほんの一瞬。

 見えたと思った次の瞬間には、もういなくなっていた。


 こんなにはっきり姿が見えるのは初めてだ。

 しかも――普通に話してる!


『すごい! 羽根までちゃんと見える!』


 濃いブルーの羽根が動くたび、つい目で追ってしまう。


「そんなに見られると照れるんだけど」

 やっぱり気になって、ちらっ。

  私は興奮をどうにか抑えながら、そっとレイの隣へ戻った。


「フリー、どうしたの?」


「あとで話す」

 

 レピアはガルドのもとへ戻ると、そのそばをふわふわと飛びながら何かを話していた。


 ガルドも時折頷きながら、作業を続ける十三人へ視線を向けている。


『何話してるんだろ?』


 気になって見ていると、レピアが一人の受験者をじっと見つめた。


 そして――。


 両腕を頭の上にあげ、大きな丸を作る。


『……まる?』


 ガルドがそれを見て、小さく頷いた。


 しばらくすると、別の人を見て、また丸。


「…………」


『もしかして、レピアも見極めてる?』


 妖精は、人の嘘を見極めることができる。


 ガルドは作っている物だけじゃなく、その人がどう取り組んでいるのかをずっと見ていた。


 そしてレピアは、その人自身を見ている。


『ガルド……最初からレピアの言葉も含めて決めるつもりだったのかな』


 城の中にある工房だ。

 これから新しい魔道具や技術にも触れることになる。


 腕がいいだけでは駄目なのかもしれない。


 私はレピアとガルドを交互に見たあと、再び十三人の作業へ視線を戻した。


 隣のレイも、何も言わず真剣に作業を見ている。


 やがて日が傾き、工房の中に夕日の色が差し込み始めた。


「そこまでじゃ!」


 ガルドの声が響いた。


 十三人が一斉に手を止める。


 完成した人もいれば、まだ途中の人もいる。


 ガルドは一人ずつ作品を確認し、何を作ったのか、なぜそれを作ろうと思ったのかを聞いていった。


 その間もレピアはガルドのそばにいる。


 時々何かを話し、丸を作ったり、首を横に振ったり。


『やっぱりレピアも一緒に選んでるんだ』


 すべての確認が終わると、ガルドは弟子たちと話し合った。

 そして最後にレピアとも何か言葉を交わす。


 しばらくして――。


「決まったぞ」


 ガルドが十三人の前に立った。


 一人ずつ名前が呼ばれていく。


 一人、二人、三人――。


 そして。


「以上じゃ」


『……あれ?』


 もう一度、頭の中で数える。


『九人だ』


 十人ほど採ると言っていたけれど、選ばれたのは九人。


 どうやらガルドは、人数を合わせるためだけに誰かを選ぶつもりはなかったらしい。


 こうして、ガルドの新しい弟子九人が決まった。

 九人の名前が呼ばれ、合格者が決まった。


 安堵した顔をする者もいれば、嬉しそうに拳を握る者もいる。


 けれど――ガルドはまだ終わりとは言わなかった。


「さて。喜ぶのはまだ早いぞ」


 九人の表情が再び引き締まる。


「最後にもう一度、お主らに確認しておく」


 ガルドは九人をゆっくり見渡した。


「ここはエルフ族が治める国じゃ。お主らの中には他国から来た者もおる。それでも、これからここでやっていく覚悟はあるか?」


 誰も答える前に、ガルドは続けた。


「それともう一つ。わしの工房には、幼い子供が出入りする」


『私とレイだ』


「この工房で作られた新しい魔道具の中には、その二人の発想から生まれたものもある。わしと共に形にしたものもな」


 ガルドが私たちのいる方をちらりと見る。


「つまり、その二人がお主らより上につくこともある」


 九人の中から、わずかに驚いたような空気が流れた。


「子供だからと侮る者はいらん。種族が違うからと見下す者もいらん。わしの工房では、年齢も種族も関係ない」


 ガルドの声が少し低くなる。


「それが気に入らんなら、今ここで出ていけ。今なら何も咎めん」


 誰も動かなかった。


「まだ決めるな。最後まで聞け」


 動きかけた空気を、ガルドが制した。


「ここで働き始めてから、どうしても辞めたいと思うこともあるじゃろう。その時まで縛りつけるつもりはない」


 そこで一度、言葉を切る。


「ただし、辞める時には秘密保持の契約を結んでもらう」


 九人の顔から、少しずつ喜びの色が消えていった。


「しかも、一番重い契約じゃ」


「…………」


「工房で知った技術を口にしない。それだけではない。書いて伝えることも、誰かに見せることも、行動で意図的に伝えることもできん」


 ガルドが九人を鋭く見据える。


「言動も行動も、すべて契約の対象になる。――意味は分かるな?」


 今度は誰もすぐには答えなかった。


 ガルドも急かさない。


「だから今、よく考えろ」


 静かな工房に、ガルドの声だけが響く。


「ここに残ると決めたなら、わしはお主らを弟子として扱う。知っておることも、技術も、教えられることは教える」


 そして腕を組んだ。


「じゃが、その代わり守るものは守ってもらう」


「今ここで辞退するなら、それで終わりじゃ。誰も責めん」


 ガルドは九人から少し離れた。


「よく考えて決めろ」

 ガルドは九人を見渡した。


「……とはいえ、今すぐ答えを出せとは言わん」


 そう言って、腕を組む。


「今日は朝から試験で疲れとるじゃろ。風呂にでも入って、飯を食って、一晩ゆっくり考えろ」


「一晩……」


「そうじゃ。ここで働くということは、お主らのこれからにも関わる。勢いで決めることではない」


 ガルドは九人を順番に見た。


「覚悟が決まった者だけ、明日わしのところへ来い」


 それで話は終わり――かと思った。


 九人が会場を出ようとした、その時。


「……すみません」


 一人が足を止めた。


「なんじゃ?」


「一つ、お願いしてもよろしいでしょうか」


「言ってみろ」


 その人は少し迷ってから口を開いた。


「もし可能でしたら、その幼いお二人に会わせていただけませんか?」


「ほう?」


「これから自分たちより上に立つ可能性がある方々なら、一度お会いしてから考えたいのです」


 すると、別の一人も口を開いた。


「私もお願いしたいです」


「俺も、できることなら」


 ほかの人たちも同じように頷き始める。


 ガルドはしばらく九人の顔を見ていた。


 それから――ニヤッと笑った。


「そうか。なら、ちょうどええ」


『……ん?』


 嫌な予感がした。


 ガルドがこちらを向く。


「フリー! レイ! こっちへ来い!」


『やっぱりぃ!』


 隣のレイと顔を見合わせる。


「行こ」


「うん」


 私たちは隠れていた場所から出て、ガルドのところへ向かった。


 突然現れた私たちを見て、九人が驚いた顔をする。


「紹介しよう」


 ガルドが私たちの方へ手を向けた。


「この二人が、さっき話した者じゃ」

 

「こちらが、この国の姫君――フリージア・フェリア様じゃ」


「……!」


 その言葉を聞いた瞬間、九人が一斉に姿勢を正した。


 さっきまで職人としてガルドの前に立っていた時とは明らかに違う。


『うっ……急に空気が変わった』


 私は教わったばかりの作法を思い出しながら、姿勢を正して挨拶をする。


「フリージア・フェリアです」


「そして、こっちがレイシオン殿」


 レイも静かに頭を下げる。


「レイシオンです」


 ガルドは私たち二人を見てから、九人へ向き直った。


「この二人が、わしと一緒にドライヤーを作った共同開発者じゃ」


 今度は九人の表情に、別の驚きが浮かんだ。


「このお二人が……」


 小さな声が漏れる。


 九人の視線が私とレイへ集まった。


 姫君であることにも驚いているみたいだけど、それ以上に――こんな幼い二人が共同開発者だということに驚いているようだった。


『まあ……そうなるよね』


姫君であることにも驚いているみたいだけど、それ以上に――こんな幼い二人が共同開発者だということに驚いているようだった。


『まあ……そうなるよね』


 九人は私とレイを見たまま、しばらく何も言葉を返せずにいた。


 さっきまで自分たちより上につくかもしれない『幼い二人』としか聞かされていなかったのだ。


 それが、この国の姫君と、その隣に立つレイ。

 しかも二人とも、あのドライヤーの共同開発者だという。

 驚くなという方が無理なのかもしれない。

 やがて、一人が我に返ったように姿勢を正した。


「……お会いさせていただき、ありがとうございました」


 それに続いて、ほかの八人も頭を下げる。


「それでは、今回はこれで失礼いたします」


「おう。じゃあ、ゆっくり休め!」


 ガルドがいつもの調子で手を上げる。


 九人はもう一度私たちに一礼すると、それぞれ何かを考えるような表情を浮かべながら、会場をあとにした。

 明日ここへ戻ってくるかどうか。

 それを決めるのは、九人自身だった。

 


すると、工房は一気に静かになった。


 私はさっそくガルドの前に座る。


 レイも隣に腰を下ろし、ダリアンは少し後ろに立ったままだ。

 ランは今日は私の部屋の片付けをしてくれているので、ここには来ていない。


「フリー、さっき誰と話してたの?」


「そう! まずそれ!」


 私はレイの方へ向き直った。


「精霊がいたの!」


「……精霊?」


「うん! 濃いブルーの羽根の妖精! レピアっていうの!」


 レイが私の顔をじっと見る。


「あそこに?」


「いたよ! 私に話しかけてきたの!」


「…………」


 レイはさっき私が一人で話しているように見えた場所へ視線を向けた。


「僕には何も見えなかった」


「ダリアンも?」


 振り返ると、ダリアンも頷いた。


「はい。私にも何も見えませんでした」


「でもいたの!」

 思わず身を乗り出す。

 

 私は今度こそガルドへ勢いよく向き直った。


「だからガルド! 聞きたいこといっぱいある!」


「やっぱりそうなるか。ガハハッ!」


 ガルドは楽しそうに笑った。


「でも本当に精霊だったんだよね?」


「そうじゃ。レピアはわしの契約精霊じゃよ」

 ガルド本人に肯定され、レイの目が少しだけ見開かれる。

 レイは少し考えるような顔をした。


「以前、精霊について書かれた本を読んだことがあります」


「本?」


「はい。ですが、その本にも、実際に姿を見たことがある者はほとんどおらず、存在そのものを疑う者も多いと書かれていました」


「そうなの?」


「はい」


 レイは私を見て、それからガルドへ視線を移した。


「でも、フリーのこの興奮ぶりと、ガルドさんのお話を聞く限り……本当にいらっしゃるんですね」


「おう。ちゃんとおるぞ」


 ガルドは当たり前のように答えた。


「レピアは、わしの契約精霊じゃ」


「やっぱり!」


 分かっていたのに、ガルドの口から改めて聞くとまた興奮してしまう。


『本当に精霊と契約してるんだ!』


 さっきまでレピアがいた辺りを見ても、今はもうガルドのそばにいるはずなのに、レイにもダリアンにもその姿は見えていない。

 聞きたいことは山ほどある。

 

「それで! いつ契約したの? どうやって会ったの?」

 こんなにはっきり精霊を見たのは、初めてなのだから。

 こんな感じ。


「ガルド! どうやってレピアと出会ったの?」


「あいつと出会ったのは、ここに来る前……いや、正確にはここへ来た日じゃな」


 ガルドは昔を思い出すように腕を組んだ。


「その頃のわしは、採掘をしながら武具やら魔道具やらを作って暮らしとったんじゃ」


「採掘もしてたの?」


「しておった。じゃが、わしは採掘があんまり好きじゃなくてなぁ」


 ガルドが嫌そうに顔をしかめる。


だからここはこう直せばいい。


「もっと作ることだけに集中できんもんかと、ずっと考えとったんじゃよ」


 ちょうどそんな頃、旅に出ていたエルドとブロムが帰ってきた。


「あやつらが戻ってきたから、採掘の方も少しは任せられるようになったんじゃが……それでも、なんか物足りなくての」


「物足りない?」


「作ることは好きじゃ。じゃが、頼まれた同じもんを何度も作るだけじゃなくて、もっと好きなようにいろんなもんを作りたかったんじゃよ」


 そこでガルドは、エルドとブロムに相談した。


「そしたらあやつらが、『旅で知り合ったエルフたちの国で、工房の職人を探しているらしいぞ』って教えてくれてな」


「それでここに来たの?」


「おう! なんか知らんが、その話を聞いた瞬間、行ってみようと思ったんじゃ」


 ガルドはエルドとブロムに一筆書いてもらい、その手紙を持ってエルフの国へやって来た。

「それを持って、お主の父親に直談判じゃ!」


「お父様に!?」


「『武具でも魔道具でも作る! じゃから好きなもんを作らせてくれ! できれば採掘はしたくない!』とな! ガハハッ!」


「…………」


 後ろで聞いていたダリアンが、ぼそっと口を挟んだ。


「ずいぶん身勝手なお願いをして乗り込んだのですね」


「ガハハッ! 今考えればそうじゃな!」


『今気づいたんだ……』


「じゃが、お主の父親は手紙を読んで、わしの顔を見たあと、二つ返事で――」


 ガルドが少し姿勢を正し、お父様の真似をする。


「『では、お願いします』じゃ」


「お父様らしい……」


「あの時は嬉しかったのぉ。なんというか……やってやるぞ! って気持ちになってな」


 ようやく好きなだけものづくりができる。


 ガルドはその高揚した気持ちのまま、用意された工房へ向かったという。


「まだ誰もおらん工房じゃった」


 ガルドがそこで、ふっと笑った。


「道具を見て、作業台を見て……ここで好きなもんを作れるんじゃと思っとったら――突然、こいつが目の前に現れた」


「レピアが!?」


「おう」


 ガルドのすぐそばで、濃いブルーの羽根がふわりと揺れた。


「『ものづくりが好きなら、僕は君と契約する』――そう言われての」


「それで!?」


「わしもあの時はえらくテンションが上がっとったからな!」


 ガルドは豪快に笑う。


「『よし! 契約じゃ!』って、そのまま契約した! ガハハッ!」


「…………」


『そんな勢いで精霊と契約したの!?』


 もっとこう……運命的な何かがあるのかと思っていた。


 でも。


『ガルドらしいといえば、ものすごくガルドらしい……』


 レイとダリアンには相変わらずレピアの姿は見えていない。


 それでも、ガルドの話を聞いた二人は、もう疑っている様子はなかった。


「ガルドさんは素直でいい人ですから、きっと精霊の方も契約したいと思ったんですね」


 レイが少し羨ましそうに言う。


「なんだか、羨ましいです」


「おうよ!」


 ガルドが嬉しそうに胸を張った。

  『なんか、いい関係だなぁ』


 そう思っていた、その時だった。


 ――スッ。


 突然、私の目の前にレピアが現れた。


「君、すごーく不思議な魔力を持ってるね」


「……私?」


「うん。なんか、こっちから近づきたくなる不思議な感じ」


「近づきたくなる?」


 レピアは私の周りをふわっと飛ぶと、楽しそうに笑った。


「でも、まだまだだね」


「え?」


「僕たちと仲良くなるには、まだまだ」


「どういうこと?」


 けれどレピアは答えず、にこっと笑うと、そのまま姿を消してしまった。


「…………」


『また消えた』


 レイとダリアンを見ると、二人ともきょとんとした顔で私を見ている。

 もちろん、二人には今のレピアも見えていない。

 けれど私が突然何もないところに向かって話し始めたからか、


「……今、いらっしゃったんですか?」


 レイが恐る恐る尋ねる。


「うん。レピア」


「やはり……」


 ダリアンも、私が見ていた辺りをじっと見つめている。

 私はガルドを見る。


「……ガルド、どういう意味?」


「知らん!」


「契約してるのに!?」


「レピアはああいう奴じゃ! ガハハッ!」


『精霊って自由すぎる……』


『不思議な魔力ってなんだろう。それに、まだまだって……』


 気になることは増えたけれど、今日はガルドからレピアとの出会いも聞けた。


「ガルド、ありがとう!」


「おう!」


 レピアの話も聞けたことだし、私たちもそろそろ戻ることにした。

 ガルドに挨拶をして、私とレイは席を立つ。

 ダリアンも私たちの後ろについて工房を出た。

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