第18話 透き通った子
(……きれい)
思わず見つめてしまった。
触れたら壊れてしまいそうな……。
そのとき、後ろで扉の閉まる音がした。
男の子がその音に気づいて、こちらを振り返った。
ドキッとした。
目が合ったからではない。
その子の目の色が——アイリオン先生と同じ、オッドアイだったから。
目が合っているのに、反らせない。不思議と、嫌な感じはしなかった。
男の子が、静かに微笑んだ。
またドキッとした。
今度は、胸の奥で鼓動が鳴る感じだった。
月明かりの中で金色に見えていた髪が、よく見ればシルバーだった。
月が、その色をきれいに見せていただけだ。
声をかけようとした、その時。
「ここにいたか、レイシオン」
廊下の向こうから、がっしりとした影が現れた。
先ほど会ったばかりのブロムだった。
「紹介したいやつがいる。ちょっとこい」
男の子——レイシオンが、静かに頷いた。
ブロムが歩き出しかけて、ふとこちらに気づいた。
「フリージア。お前もこい」
「え」
思わず声が出たけれど、何故かそのままついて行った。
連れて行かれた先は、応接間だった。
「フリーもいたから連れてきたぞ」
ブロムが扉を開けながら言った。
部屋の中には、お父様、お母様、アイリオン先生、サルヴァニア、エルドが揃っていた。そこにブロムとレイシオン、そして私が加わった。
お母様がこちらに気づいて、柔らかく微笑んだ。
「フリーちゃん、こちらへおいで」
私はちょこんとお母様の隣に座った。
アイリオン先生が口を開いた。
「先程の話だが、フリージアは——」
「漏れている。魔力がな」
サルヴァニアが静かに割って入った。
お父様とお母様の表情が、わずかに動いた。
アイリオン先生が続ける。
「このまま漏れ続けると、周りにも影響が出てくるかもしれない。強い魔力に当てられて、近くにいる人が疲れたり、体調を崩したりすることがある」
「……安定してきたのでは?」
お父様が静かに聞いた。
「前よりは安定してきている」
アイリオン先生が答えた。
「ただ、それぞれの属性の使い方がまだできていない。魔力はあっても、行き場がないから漏れてしまう。魔法を発動しなければいいが、使ってる時に漏れ出てることが多い。」
少し間があった。
「年齢的にはまだ早い。だが、もう始めていいと思っている」
また間があった。
「……というか、少し始めている。すまない」
お母様がアイリオン先生を見つめた。
珍しいものを見るような目だった。
(先生が謝った……)
「幸い、お前たちの家族はそれぞれ属性を持っている。だから、家族でやり方を教えてやってくれ」
アイリオン先生が続けた。
「私も頻繁には来られない。ちょうど学校も休みに入る。その間に基本を教えてもらえると助かる」
お父様とお母様が頷いた。
「ただ、一つ……」
アイリオン先生が言いかけたところで、サルヴァニアが静かに口を開いた。
「闇だな」
アイリオン先生が頷いた。
お父様とお母様の表情が少し固まった。
サルヴァニアが続ける。
「お前たちの家族には、闇の属性を持つ者がいない。だから、私にお願いしたいだろ」
「他に信頼できて頼める者がいない」
アイリオン先生が淡々と言った。
サルヴァニアが呆れたように息をついた。
「アイリオン、お前はいつもそうだ。淡々と物事を語って、自分が全て正しいと思っている」
「……断る隙すらない」
静かな怒りとも、苦笑ともとれる声だった。
お母様が穏やかに口を開いた。
「つまり……」
「引き受けるよ」
サルヴァニアが短く言った。
それから、腕を組んで続けた。
「ただし、条件がある。俺の部屋を用意しろ。いちいち通うのは面倒だ」
お母様が少し笑った。
「それくらい、たやすきことです。全て整えますわ」
アイリオン先生が、静かに肩の力を抜いた。
珍しい。先生がほっとしているのを見たのは初めてかもしれない。
話しが簡単にまとまったみたいだ。
しばらく、部屋に沈黙が流れた。
やがてお父様が、ゆっくりと口を開いた。
「ところで……エルド、ブロム」
二人を交互に見る。
「その子は……いったい、誰だ?」
視線がレイシオンに向いた。
「名はレイシオンじゃ。恐らく、な」
エルドが静かに答えた。
「……恐らく?」
「待て待て、順を追って説明する」
エルドが腕を組んだ。
「こいつに会ったのは最近じゃ。あの石(フリージアの石)を見つけに、昔お前らと旅をした封印の森の近くに行ったんじゃが……そこで見つけたんじゃよ」
「見つけた?」
「倒れておった」
部屋が静まり返った。
「こんな幼い子が、あんな危険な森に一人でいるとは思えなかった。じゃが、周りには誰もいなかった」
封印の森。Cランク以上の魔物がうじゃうじゃいると聞いたことがある。大人でも容易には入れない場所だ。
「声をかけたら、まだ息をしておってな。急いで家に連れ帰ってケアをした。身体に大きな怪我はなかった。ただ、一週間ほど眠り続けておった」
ブロムが続ける。
「目が覚めた時に驚いたわい。確かにきれいな顔をしておってな、エルフかセラフィムのどちらかの子だと思ったんじゃが……瞳を見たら、お主とそっくりで」
エルドがアイリオン先生を見た。
「それ以外はお主というよりセラフィムの顔に似ている感じじゃがな」
サルヴァニアが静かに口を開いた。
「だが、羽根が生えていない」
「そうなんじゃ」とブロムが続ける。「耳が長いわけでも、羽根があるわけでもない。見たことのない子でな」
「最初は話もまともにできなくてな。半年ほど経った頃に、ようやく会話ができるようになった」
「何があったか聞いたが、何も覚えていないと言う。それどころか、自分がどこの誰かも分からないと」
エルドが低い声で言った。
「嘘をついている感じはしなかった。俺の精霊もそう言っておった」
精霊は人の嘘を見抜くのが得意だと聞いたことがある。
お父様が口を開いた。
「でも、さっき名前を……」
「うむ、それはこれじゃ」
エルドがレイシオンの腕をとり、手首のブレスレットを見せた。
細工が丁寧で、わずかに魔力が込められている。きれいな形をしていた。
お父様、お母様、アイリオン先生の表情が変わった。
「それは……セラフィムが子供に贈るやつでは」
「そうなんじゃよ」
「表には親からのメッセージだろう。裏には——レイシオン、と刻んであった」
ブロムが静かに言った。
「でも、セラフィムやエルフにこんな子がいるなんて、聞いたことがないわ」
お母様が言った。
部屋の中に、重い沈黙が落ちた。
「この子を見捨てるわけにもいかずな。この一年ちょっと、一緒に生活しておった」
ブロムが静かに言った。
「ただ、そうもいかなくなってきておる」
エルドとブロムが、アイリオン先生とお父様を見つめた。
「お主らに頼みたいことがある」
アイリオン先生が、静かに眉をひそめた。
「……いい感じはしないが」
「お主にしか頼れん!」
ブロムが身を乗り出した。
お母様たちと言うよりアイリオン先生に向けて
「この子を、預かってくれ!」
三人が目を見開いた。
「わしらはこのまま側に置いておいても構わない。それは本当じゃ」
「じゃあ、いいじゃないか」
アイリオン先生がすぐ言った。
「待て、聞け」
エルドが静かに制した。
ブロムが続ける。
「わしの国で、反乱が起きるかもしれん。他の国との交流なんてバカバカしいと、特に若い連中の数人が言い出してな。揉めそうなんじゃ」
「だからって、何でこの子が——」
お父様が言う。
「この見た目じゃ」
ブロムが言った。
「こんな顔のやつが、ドワーフにいるか?」
部屋の全員が、静かにレイシオンを見た。
誰も声に出さなかった。
でも、心の中では全員が同じことを思っているのがわかった。
(……いない)
「お主ら、分かりやすいのぉ」
ブロムが苦笑した。
「だから、この子の面倒を頼みたいんじゃ。このままだと襲われたりするかもしれん」
少し間があった。
「何故か分からんがこの子を見てから、アイリオンに預けなければいけないと思ってな」
アイリオン先生が、静かに口を開いた。
「私は子供なんて分からんぞ。エルたちに頼め」
エルドが首を振った。
「エルたちは王族だ。見知らぬ子を預かっているなんて変な噂が立っては、周りに申し訳ない」
アイリオン先生の顔が、ぐっと詰まった。
ぐぅの音も出ない、という顔だった。
「だからお主に頼んでおる」
ブロムが畳み掛けた。
「お主はずっと一人じゃろ。好きな女もいないじゃろ」
「……」
「セラフィムの知り合いなんてアイツしかおらんが、あいつは嫌いじゃ。エルフで信頼できるのはお主だけじゃ」
ブロムが深く頭を下げた。
「なっ、頼む」
もう断れない状況だった。
そこへ、お母様が穏やかな声で口を開いた。
「では、この子をうちの城でお預かりしましょう」
部屋の空気が、一瞬で変わった。
「でも、親代わりはアイね♡」
アイリオン先生の顔が固まった。
「フリーちゃんとも歳が近そうだし、一緒に教育していきましょう。フリーちゃんよりは少し大きいから……そうね、小さな護衛隊見習いみたいな感じで住まわせて」
お母様が楽しそうに続ける。
「アイもここで暮らせばいいわ♡」
アイリオン先生の顔が、げっ、という表情になった。
エルドとブロムは、顔を見合わせて深く頷いていた。
感謝の顔だった。
(……先生、完全に詰められてる)
お母様が楽しそうに続ける。
「んー、周りには遠い親戚の子を預かって育てているとでも言えばいいでしょ。その子も魔力が強そうだし」
にこにこと笑顔で言う。
「それにしても、この子アイにそっくりね」
お母様がレイシオンのほっぺをつんつんと突いた。
「親友の誰かにも……」
お母様が静かに言った。
「親友なんていたか?」
お父様が尋ねる
「あれ? いたような気もするのよねー」
お母様が首を傾けた。
「この子は私たちの側にいなきゃいけない感じがするのよねー」
それからアイリオン先生に向かって、にっこりと微笑んだ。
「アイもそう思うでしょ?♡」
先生はずっとレイシオンを見つめていた。
しばらくして、ぽつりと呟いた。
「あ゛ぁ」
でも、その目は優しかった。
レイシオンはお母様にほっぺをつんつんされながら、困ったような顔をしていた。
「レイシオンくんの話は終わりだな」
お父様が静かに切り出した。
「じゃあ、あの件についてだが——」
「フリーちゃん、レイシオンとそっちに行って遊んでて」
お母様が優しく言った。
話しはきになるが大人しく席を外した。
レイシオンと部屋の端の方へ移動した。
テーブルの上にお菓子が置いてあった。二人でそれをつまみながら、少し話をした。
「レイシオンのこと、レイって呼んでいい?」
レイシオンがこくりと頷いた。
「レイは嫌いな食べ物ある? 私はね、ないよ。何でも食べられる」
レイがしばらく考えてから言った。
「じゃあ、これくらいの芋虫も食べられる? 少し甘くて美味しいよ」
「げっ……そ、それは無理」
レイがふふっと小さく笑った。
「だと思った」
軽くいじわるをされた。
(でも、笑った顔がすごくかわいい)
私はさっきのことを聞いた。
「さっき、なんであそこにいたの? 空を見てたの?」
レイが少し考えてから答えた。
「よく分からないけど、空を見るのが好きなんだ。見てたら、飛べそうな気がして」
その瞳は、純粋にそう思っているのがわかった。
「レイがそう思うなら、いつか飛べると思うよ」
私は満面の笑顔で答えた。
レイの頬が、ほんのり赤くなった。
レイとたわいもない話をしながら、私はずっと耳をそばだてていた。
お父様たちの会話が、聞こえてくる。
「お前に言われて調べたが……やはり、裏で手を引いている者がいる」
サルヴァニアが低い声で答えた。
「そいつは各国で噂を広めている。他の国との交流なんてバカバカしい、自分たちだけで暮らせばいい、他の国なんていらない——そういった話が、特に若い者たちの間で広がっている」
少し間があった。
「反乱を起こそうとする集団ができつつある」
「やはり、そうか」
お父様が静かに言った。
「アイの調べでは……そいつは薄暗い肌をしていたと。魔族ではないかと思っている。しかも人を惑わすほど流暢に話せるなら、上位の者かもしれない」
部屋の空気が、重くなった。
サルヴァニアが低い声で言った。
「封印が……封印が解けてきたのかもしれん」
「サネカゲがなくなって、封印が一つ取れたと思われる」
お母様が静かに呟いた。
「サネカゲがなくなったのって、一年ちょっと前よね」
「そうだ。魔獣が増えた頃だ」
ブロムが口を開いた。
「待て。レイシオンに出会ったのも、ちょうどその頃だぞ。しかも封印の森の近くだ」
誰も何も言わなかった。
でも、その沈黙が答えだった。
「近いうちに見に行った方がいいな」
「私が行ってくる」
サルヴァニアが静かに言った。
「その子の訓練が始まる前に、行ってくるのがいいだろう」
そう言いながら、サルヴァニアは少し離れた席にいる私へ、静かに視線を向けた。
けれど、そのことに私は気づいていなかった。
『ちょ、ちょっと待って……』
今聞いた話を、頭の中で必死に整理していた。
『反乱に魔人!? しかも上位の!?』
『封印が解けてきてるかもしれなくて……レイが現れたのも、同じくらいの時期!?』
『私、とんでもない話聞いちゃったんじゃ……』
さっきまで楽しかったお披露目会が、急に遠い昔のことみたいに感じる。
私は思わずレイを見る。
でも、本人は何も知らないような顔でそこにいる。
『……レイ』
偶然――なのかな。
そう思いたかった。
やがて、お父様たちの話が一段落したところで、お父様が笑顔のまま何かを取り出した。
――魔誓契約だ。
それを見たエルドが眉を上げる。
「なんじゃそりゃ、契約か?」
ブロムも覗き込む。
「お主、わしらを信用しておらんのか?」
「違う」
お父様は笑顔のまま答えた。
「これは娘のためだ。娘を守るためなら、なんだってやる」
『お父様……』
「それと、フリージアのことを後々説明するのも面倒だから、先に話しておく」
お父様の表情が少しだけ真剣になる。
「フリージアの属性は、闇だけじゃない」
「はて?」
エルドが首を傾げた。
「複数属性など、お主らエルフには珍しくもなかろう。わざわざ秘密にするほどのことか?」
「それがな――」
そこからは、アイリオン先生が説明してくれた。
私の属性のこと。
魔法を使い始めた時期。
詠唱をせずに魔法を発動させたこと。
最初こそ三人とも驚いていたけれど、話を聞き終える頃には、なぜか妙に納得した顔をしていた。
『……なんでそんなに納得するの?』
お父様は続けて、レイシオンにも視線を向けた。
「それから、レイシオンにも署名してもらいたい」
「これからフリージアと過ごすことになるなら、いずれ知ることになるだろう。それに、歳の近い者がフリージアのそばにいてくれるのは、私としてもありがたい」
そこで少し間を置く。
「ついでに、レイシオンがどこで、どのような状態で見つかったのか。それも契約の対象にしておこう」
エルドとブロムも異論はないようで、すぐに頷いた。
エルドがレイシオンの前まで行き、魔誓契約について簡単に説明する。
レイシオンは嫌がる様子もなく、
「分かりました」
と答えた。
「では、ここにサインを」
お父様が契約書を差し出す。
するとエルドが、呆れたように笑った。
「お主は昔から、突拍子もないことばかりするのう」
「ほんとじゃ」
ブロムも大きく頷く。
「昔、こやつのせいで死にかけたこともあったな……」
「ああ、あれか!」
「こいつが突然、『あれはミュネラだ!』とか言って走り出した時じゃろ?」
「そうそう。すぐ下にガルヴェスの巣があるとも知らずにな」
『ミュネラ……』
確か、図鑑で見たことがある。
月の光を浴びると花を開き、淡く輝く珍しい花。
その蜜は美容にいいらしく、特に女性に人気があるとか。
そして――ガルヴェス。
『でっかいスズメバチみたいな魔獣だ……』
しかも、毒持ち。
「『ルミナスに似合うぞ!』とか言って、そのままの勢いで取りに行ったんじゃ」
「そしたらガルヴェスが気づいて、大群で襲ってきてな」
「ありゃ本当に死ぬかと思ったわ。毒針まであるから、避けるのも大変で」
「そうだったわね」
お母様が懐かしそうに笑う。
「私もあの時、刺されて腕がパンパンに腫れたのよ」
「ああ、そうじゃった!」
「でも、すぐ浄化魔法をかけてもらえたから、ひどくならずに済んだのよね」
「そうそう。アイのおかげで――」
「……待て」
アイリオン先生が眉を寄せた。
「私は、あの時浄化魔法など使っていないぞ」
「……え?」
お母様が目を瞬かせた。
「違った?」
「ああ」
「じゃあ……誰だったかしら?」
「…………」
一瞬。
妙な沈黙が落ちた。
エルドも、ブロムも、サルヴァニアも。
誰も答えない。
『……?』
「まあ、いい。サインしてくれ」
お父様が何事もなかったように魔誓契約を差し出した。
「別に書かんとは言っておらんわ」
「まったく、相変わらずじゃのう」
エルド、ブロム、サルヴァニアの三人が、それぞれ素直に署名していく。
誰も文句を言わなかった。
何も言わなくても、それがわかった。
長い旅を共にした仲間というのは、きっとこういうものなのだろう。
さっきの妙な沈黙なんて、最初からなかったかのように。
でも私は――。
『……浄化魔法、誰がやったんだろ?』
ほんの少しだけ、そのことが引っかかっていた。
お別れの際、ブロムたちはレイシオンに、一度荷物を取りに戻ることを説明していた。
レイシオンは静かに頷いた。
そして帰り際。
サルヴァニアが私のそばまでやってきて、静かに呟いた。
「そなたが、私を怖くないと言ったのは二人目だ」
「ふたりめ?」
「そうだ」
サルヴァニアは少し懐かしむように目を細めた。
「昔にも、誰かに同じことを言われた記憶がある」
「だれ?」
「……忘れた」
「わすれたの?」
「ああ。誰だったかは思い出せん」
不思議なくらい穏やかで、優しい言い方だった。
「では、訓練の時に会おう」
「はい!」
サルヴァニアはお父様たちにも挨拶をすると、大きな翼を広げ、そのまま空へと飛び立っていった。
皆を見送ったあと、私たちは廊下を歩いていた。
私は隣を歩くレイシオンを見る。
「ねぇ、さみしくない?」
レイシオンは少し考えてから答えた。
「……少し寂しいかも。でも、ブロムさんたちはいい人」
少し間を置いて、続ける。
「ブロムさんたちが、アイリオンさんたちもいい人だって言ってたから。だから、大丈夫」
『なんて素直で純粋な子なんだ』
淡々としているのに、言葉は真っ直ぐだった。
その話し方を聞いていると、なんとなくアイリオン先生を思い出す。
『先生も、こんな感じだもんなぁ』
私は前を歩くアイリオン先生をちらりと見た。
先生は前を向いたまま、何も言わない。
『……やっぱり似てる』
こうして、レイシオンとの新しい生活が始まった。




