第五章 人喰い絵画 ⑫
とにもかくにも絵画を巡る騒動は、こうして終幕を迎えた。
ジャックはエドワードと再び友情を確かめ合った後、気まぐれにどこかに消えてしまったらしく、俺とは再会できなかった。
ナイトメアはエドワードの、かなり恨みも籠った力によって、消し去られた。彼女の断末魔は憐れにも聞こえたが、しかし何人もの命を奪ったのだと思い直して、同情心は捨てている。
ナイトメアによって絵画に取り込まれた使用人は、生きてこちら側に戻ってくることはできた。しかし、そのほとんどが心を壊してしまっており、今は療養施設でゆっくりと治療をしている。
そして俺達はスコットランドウイスキーを堪能するなど観光を楽しんでから、ロンドンの店へと戻って来た。
「いろいろあったけど、楽しかったなぁ」
「そうだね。また行こう。あんまり待たせていると、フィリップもうるさそうだし」
「はは、そうだな」
フィリップとエドワードの仲は、少し進展した。他人行儀な兄上呼びから、もう少し親密な名前呼びになったのが大きな変化である。エドワード救出に尽力したことで、互いの距離が縮まったのだろう。
俺との距離もちゃっかり縮まり身内認定したようで、フィリップは俺のことも気に掛けてくれるようになった。グレンアーモンド家に相応しい人間になれるようにと、来月からマナーやダンスなどの先生を派遣してくれるらしい。どうせ暇なので、有難く受けることにしている。
俺はエドワードの隣に立てる人間になりたい。
だが、そのために解決しなければならない大きな問題があることは分かっていた。
そしてそれは向こうから、否応なしに突き付けられることになる。
「悠大! ああ、よかった。帰ってこないから何かあったのかと思ってたよ」
「白狐、どうしてここに?」
「大変なんだ。黄泉醜女が、境界を越えた!」
店の前でうずくまっていた旧友から告げられた言葉は、俺をどん底に叩き落とすのに十分すぎる言葉だった。




