表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第六章 牛丼を作ろう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/45

第39話 魔法発動

「サントールって水魔法も使えるんだね」


 一連の動作を見ていたトキがふとそんなことを言った。


「使えるぞ。てか何度も見せてるだろ」


 水を出すときは大体水の初級魔法を使っているので知っているはずなんだが、なぜ今更その話をするのだろう。


「人間で魔法を使えるだけでもおかしいのに、なんで複数の属性の魔法を使えるの?」


 不思議そうな顔をするトキの質問に俺は小首を傾げた。


「そりゃ使えるだろ。魔法が使えるんだから」


 何を言っているんだろう。属性が違う魔法だって根本は同じだ。ならできないわけがない。


「エルフのみんな、大体ひとつの属性の魔法しか使えないよ。他の魔物だってそう」


「野生の魔物に関しては法力回路に一つの術式しか刻まれていないからな。ただエルフもできないのか?」


 おかしいな。俺の知っている情報だとエルフは魔法のプロ。ケツァールほどでなくとも多様な魔法を扱えたはずだが。


「できないよ。やっている人見たことない」


「まじか」


 では俺の記憶違いだろうか。


「普通に使えるんだけどなぁ。ただ術式を変えるだけだし」


「そういうものかな……」


 トキは疑うような視線を送るが、本当にそれだけなのだ。


 魔法とは術式によって発動される現象が異なる。逆に言えば術式の構造さえ知ってしまえばどんなものでも作れるし扱えるというわけだ。


「トキもやってみるか?」


「『太陽の腕』以外の魔法ってこと?」


「そう」


 どうせ待っている間暇なので、トキの魔法練習に時間を使うことにする。


 そう決めた俺は紙とペンを持ってきてとある魔法術式を記す。


「ほれ、これでやってみろ」


「これは?」


 一見すると意味不可能な文字が記された紙を手渡すと少女は小首を傾げた。


「俺がさっき使った人間用の水魔法だよ。初級のもので名前すら付けてない」


 先程使ったものだが、これは俺が転生してから魔法を扱えるようになってから作ったものだ。


 人間用に回路への負担を無くしたもので、汎用性が高く生活する上で重宝している。しかし攻撃には使えないし、ただの練習用として作ったものなので『太陽の腕』のように名前は付けていない。


 『太陽の腕』よりは簡単だと思うので、今のトキでもできると思う。


「やってみる」


 トキは一瞬紙を見つめて黙りこくってしまったが、やがて顔を上げて頷いた。


 少女は俺と鍋から少し距離を取って、魔法陣を作り始めた。


 この数日で随分魔力操作が上手くなったらしく、形を崩すことなく魔法陣を作ることができていた。


「魔力を込めすぎるなよ。今回はごく僅かでいい」


 沸騰してきたので火を止めながら、魔法陣を形成中のトキに告げる。


 魔力に愛されている奴は大体魔法を扱う時に出力を間違えて大惨事を引き起こす。


 店を吹き飛ばされたら困るからな。釘を刺しておく。


「わか……った……」


 魔法は繊細な作業なので集中しているらしく言葉を詰まらせるトキ。


 慣れたら話しながら魔法を放つこともできるが、まだ練習中だから仕方がない。


 だがやはりこの子には才能がある。


 教えてまだ数日で魔法陣をほぼ完成させるくらい上達するとは思わなかった。


 俺は一から魔法を作ったようなものなので参考にならないが、それでも魔法陣を作るのに一週間は要した。


 ここまで来たなら後は術式を書くだけなので魔法は完成したと言ってもいい。


「で、できた……」


 トキは魔法陣に術式を記して、俺の言った通り少量の魔力を通した。


 そうすることで水が生成される。


 今回は指向性を付与していないので重力に従ってその場にパシャっと落ちた。


「おめでとう。初の魔法発動だな」


 パチパチと拍手をして祝いの言葉をかけると、トキはなぜか固まっていた。


「トキ?」


 様子がおかしいので声をかけてみると、少女はゆっくりと視線を上げた。


「私、魔法使えたの?」


「ああ。そうだぞ」


 信じられない、といった顔をするトキに笑みを見せる。


「そっか。……そうなんだ」


 徐々に実感が湧いてきたのか、少女は驚きから笑顔へと表情を変えた。


 莫大な魔力に振り回されていた少女がその力を制御した。それは本人だけでなく俺も嬉しいことだった。


「やっぱりお前は魔力に愛されているな」


 頭を撫でながらフッと笑う。


 まだ実用レベルにまではなっていないが、このペースであればすぐに日常でも使えるくらいにはなるだろう。


 まだトキの本来の魔力量をコントロールすることはできないだろうが、数年もすれば完全に制御できるだろう。


「このまま練習を続けたら、サントールみたいに魔法を使える?」


 その質問に俺は良い返答が見つからなくて少しの間黙りこくってしまう。


「……そうだな。できるかもしれない」


 そうして出た回答はなんとも曖昧なものだった。


 魔法において俺という存在は異質だ。だからトキには俺を目指してほしくない。


「ケツァールとか、良い見本になるかもな」


「だれ?」


「魔人だよ。この前会ったんだが、アイツの魔法は凄かったぞ」


 アイツは魔人だからエルフのトキと似ているだろうし、アイツ以上に魔法を使える奴を今のところ見たことが無い。もしかしたらお手本として最適かもしれないな。


 だが残念な点を挙げるとするなら、今俺とアイツが敵対関係にあるということだ。


「私はサントールと同じようになりたい」


「ハハッ、それは辞めとけ」


「なんで」


「俺が人間だから」


 人間となり、俺にとっては良い事尽くめだった。だがここにきて人間であるということがデメリットになるとはな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ