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無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第四章 王に謁見しよう

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第28話 牛丼にトッピングって大事だよね

「……なにこれ」


 王への謁見を済ませた俺達は預けたトキを迎えに来た。のだが……


「あっ、サントール。もう終わったの?」


 カチャカチャと食器が当たる音を響かせながら、大量の皿の真ん中にトキが頬を膨らませて座っていた。


 膨らんだ頬の中にはいったいどれほどの量の食事が詰め込まれているのだろうか。考えたくもないな。


「クリス……提供する量には気を付けろと言っただろ」


 トワは呆れた様子でいつの間にか少し後ろに立っていたメイドさんを叱る。


「申し訳ございません。あまりに可愛かったもので」


 確かに給仕する人からすれば食べっぷりの良いトキはとても嬉しい存在なのかもしれない。


「こちらこそすみません。ウチのが我儘を言ったようで」


「いえ、私がお預かりした身で勝手をしてしまったので。申し訳ないです」


 確かに朝食を作り損ねたが、まさか昨日の今日でここまで食べるとは。


「サントール様ですね。初めまして。メイド長のクリスティーンと申します。クリスとお呼びください」


 なぜかお互いに謝罪をしあうという不思議なやり取りを済ませた後、メイドさんが深くお辞儀をしながら自己紹介をしてくれた。


 どうやらこの人がこの国の中心で給仕のトップを務めている人らしい。


「サントール・クロムスです。何度もトキを預かっていただきありがとうございました」


「いえいえ。トキちゃん、とても良い子で私も楽しく過ごさせていただきました」


 まるで保育施設に預けた子を迎えに来た時のような会話をする俺達。といっても子共なんて作ったことないんだけど。


「トキ。お礼」


「クリスばいばーい!」


「はい。またね」


 俺は感謝の言葉を伝えろと言ったんだけどな。まあクリスさんもニコニコで手を振っているしいいか。


「さっきなんの話していたの?」


「んー。まあつまらない話だな。聞く必要もないくらい。それでも聞きたいか?」


「いいや。面白くないなら」


 城に来た時と同じように馬車に乗り、興味津々といったトキの気持ちを鎮めることに注力する。


 あんな話子供に聞かせるようなものではないからな。なるべく興味を失うように誘導していく。


 それをトワも理解しているのか、何も言わずにただこちらを眺めていた。


「そういえばサン。これからはどうするつもりだ?」


「というと?」


「店だよ。金は十分貰っただろ。後はアシヤミくらいだと聞いたが」


 確かに金はたんまりと貰った。


 といっても前貰った金が数日で溶けたことを考えるとまだ足りないと考えてもいいかもしれないが。


「アシヤミは勿論最優先だが、他にも欲しいものができた」


「ほう?」


 顎に手を当てながら今後の計画を組み立てつつ告げると、トワは興味深そうに前のめりになった。


「ノーマルだけだと面白くないからな。トッピングを付けようと思って」


 昨日の夜ふと思ったのだ。ただの牛丼だけ売ると最初こそ新鮮さから売れるとは思うが数日もすれば飽きてしまうのではないか、と。


 だからトッピングも何種類から揃えようと考えた。


 日本で俺が働いていた店舗ではチーズ牛丼やキムチ牛丼、ねぎ玉牛丼といった定番のトッピングがありつつ期間限定で奇抜な牛丼も提供されていた。


 それをここでもやろうという話である。


「まずはチーズ……乳を色々して固めたものとか欲しいな。何かないか?」


 牛丼といえばチーズ牛丼は外せない。俺が日本で最も好んだ牛丼だ。あの肉とチーズのハーモニーがたまらない。


 「そしたらブラッド・ブルの乳を固めたロッピーなんてどうだ?」


「そんなものがあるのか」


「ああ。その辺の市場で買えるぞ」


 なるほど。チーズのようなものがこの世界にも存在するのか。それは良いことが聞けた。


 それなら牛丼界のスーパースターをこの異世界でも提供することができそうだ。


 ただの牛丼ですら革命を起こすことができそうだというのに、チーズ牛丼まで作れてしまったらもうこの世界の人々はどうなってしまうのだろうか。


「牛丼とやらに合うかは分からないけどな」


「大丈夫。絶対合うから」


 牛丼とチーズの相性は抜群だ。それは異世界産チーズのロッピーとやらでも変わらないと思う。


「ははは、それは期待できるな」


 楽しそうに笑うトワ。そんな彼の顔を見て俺はひとつの案を思いついていた。


「トワ、暇な日ってあるか?」


「暇な日?」


「ああ。プレオープンってやつをしようと思ってな」


 その名の通り、本開店の前に行う試験的な開店のことだ。友人などを招待するらしいので、せっかくならやってみようと思った。


 それがこの世界にある文化なのかは知らないが、無いなら無いで新鮮だろう。


「それは楽しみだな」


「トーさんとかも誘ってみようかな」


 店を譲っていただいたんだ。最初の客はトーさんが良いな。それがあの店舗を譲っていただけるかどうかのテストってことにしよう。


「もはやパーティになりそうだな」


「そんな人は集まらねえよ」


 誘うのはきっとこの王都に来てから知り合った人たちだけだ。だからそこまでの人数にはならないと思う。


 サントスレア家の人を誘う予定は無い。なんたって今の俺達は親子ではないからな。伯爵と知り合いの新米冒険者とかおかしなことになってしまう。


「追って連絡すっから。空けとけよ」


「仕方ないな。王子だって忙しいんだぞ?」


 多忙だというのは分かるが、トワの来店頻度を考えるとどうしても忙しそうには思えない。ここ数日で俺達は何度顔を合わせたのだろうか。



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