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無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第三章 クエストを受けよう

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第22話 魔人の腹パンは痛い

「サンッ!!」


 地べたに寝転がっていると、通路の方からアーリーの声が聞こえていた。


 ……おいおい、俺確か逃がしたよな。なんで戻ってきてんだよ。


「あー、アーリー。ご無事ですか?」


 ゆっくりと立ち上がって声の方向を見てみると、焦ったような顔のアーリーが駆け寄ってきていた。


「それはこっちのセリフだ! ……って、あの女は?」


 周囲をキョロキョロと見回して、アーリーが不思議そうに質問を繰り出してきた。


「どっか行きましたね。飽きたとかなんとか言って」


 そう、あの女は俺を吹き飛ばしてどこかへ消えてしまった。転移魔法でも使ったのだろう。だったらアーリーとすれ違うこともなく消えることができる。


「はぁー……生きてて良かった」


「まあ、元々死ぬ気無かったですけどね」


「アホ抜かせ! 流石のお前だってアイツのバケモンさには気づいてんだろ!」


 あの女を目の前にしたことで流石にやばさに気づいていたらしい。冗談を言ってみると本気の顔で叩かれてしまった。


「結果オーライ……っすよ」


 そう。終わりよければすべてよし、なのである。


 今回のクエストは俺たちの誰も欠けることなく終えることができそうだ。


 更に特異個体のキングゴブリンの発見と討伐、なんなら魔人と対面までした。


 これをこの人達の手柄として報告したらどうなるだろう。Cランクからの昇格は確実だ。


「アーリー! サン!」


 再びアーリーが何か叱ろうとしたとき、また通路の方から声が聞こえてきた。


「カルメ、マスキュル……」


 逃がしたと思ったのに逃げていなかったので当然俺は驚いたのだが、なぜかアーリーも驚いていた。


「アーリー、もしかしてマスキュルの制止を振り切ってきたんですか?」


 後から二人が来たこと、そして二人の姿を見たアーリーが驚いたことから、俺はひとつの仮説を立ててそれが真であるかどうかを彼らのリーダーに訊いてみることにした。


「……ああ」


 どうやらその仮説は正しかったらしく、アーリーは気まずそうに視線を逸らした。


「やっぱりですか。人のこと言えませんよ、それ」


「うっせ」


 ゆっくりその場に腰を下ろして、俺はクスっと笑った。


「サン、ご無事でしたか」


 近寄ってきたカルメが軽く俺の体を見回して怪我の有無を確認した。


 腹部を殴られた程度で、特に外傷というものはできていない。だからカルメが傷を見つけることはなく、彼女はホッと安堵したように息を漏らした。


「よく無傷で生還できたのぉ」


「無傷じゃないっすよ。腹思いっきり殴られてくそ痛かったです」


 鍛えているし普通の人間の拳程度なら痛くは無いだろうが、相手は魔人。しかも天魔という魔人のトップとなると話は別だ。


 死ぬほど痛い。これで無事なのがおかしいくらいである。人間の体というのは非常に脆いものだ。


「しかしあの魔人は何故ここに居たのだろうか」


 マスキュルが不思議そうに周囲を見渡しながらそんなことを呟いた。


「あのキングゴブリン、もしかしたら魔人が作ったのかも」


「そんなことができるのか?」


 カルメの言葉に驚くアーリー。彼の様子を見て、カルメは慌てて言葉を訂正した。


「あくまでも予想ですけどね。それが本当だったら一大事ですよ。人工的に特異個体を作る術を魔物が魔人が持っているということになる」


 特異個体というのは自然に発生する突然変異のこと。実際にある地方では『災害』と呼ばれるほど破壊の力に富んだものだ。


 それを望んで発生することができるのであれば、魔人側の戦力が計り知れないものになる。


 分かりやすくするなら、台風と噴火と地震を意図的に同時に起こすことができる、ということだ。


「これは、国に知らせるべきじゃないか?」


 状況の深刻さを理解したアーリーが顎に手を当てながらそんなことを言った。


「うん。そう思う」


 それに同調するカルメ。首を縦に振る俺とマスキュル。


「俺、王族に知り合い居るんで伝えときますよ」


 こういうときにトワを使わないでどうする。


 確かに奴の王子という肩書に興味はないが、この場合は話が変わる。国にとっても重大な案件だ。情報が伝わるなら早く簡潔な方が良い。


「お前……ほんと何者なんだよ?」


「王族と知り合ったのは本当にたまたまですよ」


 三人に得体のしれないものを見るような目をされたので、俺はあくまでも偶然であったことを訴える。


 トワに会ったのは偶然だ。


 そう、たまたまあの日に薬草採取に向かっていて、たまたまブラッド・ブルに用事があって、たまたまトワが俺のことを追跡していただけの話だ。


 ……あれ、本当にたまたまか?


「まあいい。今は好都合だ。頼めるか?」


「了解です。俺の連れを今アイツに預けてるんで、帰ったらすぐに報告しときます」


「おう。そうしてくれ。……王族に連れを預けるってどういうことだよ」


「しょうがないでしょ。金を稼がないといけないんですから」


 俺がこうしてクエストに来たのはトキの食費で飛んだ金を回収するためだ。


 こんな危険なクエストにトキを連れて行くわけにはいかないし、丁度そんなときに我が友人であるトワが来たし、たまたまである。そう、たまたま。


「そんじゃ、帰るか」


 アーリーがそう言って通路へ体を向けた時、カルメが彼の服を引っ張った。


「これはどうする?」


 彼女が指を差した方を見てみると、そこには先程倒した巨人の死体があった。


「ゴブリンは売れないしなぁ。頭でも持ち帰るか?」


「ヤダ。気持ち悪いです」


「だよなぁ。まあ腕でも足でも、軽く一部位だけ持ち帰ろうぜ。戦利品だ」


 ゴブリンはギルドに売ってもろくな金にならない。その理由は装備作成に使えないからである。


 ただ、顔を気持ち悪いと言われてしまうキングゴブリン君には同情だな。ドンマイ。


 体が大きすぎるので、結局指の一本を持ち帰ることにして俺達はようやくゴブリンの巣から出ることができた。


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