ラブコメ
羨ましい
ほのか「……ほんとにさ。
連絡くらいしてよ。
“帰った”って一言だけでいいんだから」
遼「……悪かったよ。
なんか、言いづらくて」
ほのか「言いづらいって何よ。
私、遼のこと怒ったりしないよ?」
遼「いや……怒ってたじゃん」
ほのか「それは“連絡しなかったこと”に怒ってるの!」
遼「……めんどくせぇな」
ほのか「はぁ!?
めんどくさいって言った!?」
遼「いや……その……」
ほのかはじっと遼を見つめる。
怒ってるようで、どこか嬉しそうでもある。
ほのか「……遼が帰ってきてるのに、
私だけ知らないのって……なんか嫌なんだよ」
遼「……嫌?」
ほのか「うん。
だって……遼は昔から、私の“隣”にいたじゃん」
遼は息を呑む。
(……隣、か)
ほのかは照れたように笑う。
ほのか「小学校の頃なんてさ、
毎日一緒に帰ってたし……
遼が転んだら私が絆創膏貼って……
遼が泣きそうになったら私が怒って……」
遼「……そんなことあったな」
ほのか「あるよ。
私、全部覚えてるもん」
遼は胸が少し熱くなる。
ほのかはベンチの上で、
遼の方へ少しだけ身体を寄せる。
ほのか「ねぇ遼。
養成所って……大変なんでしょ?」
遼「まぁ……大変だな。
でも、面白いよ」
ほのか「遼が“面白い”って言うなら、
きっと本気でやってるんだね」
遼「……まぁな」
ほのかは遼の横顔をじっと見つめる。
ほのか「……なんかさ。
遼、前よりかっこよくなったよ」
遼「は!?
急に何言ってんだよ」
ほのか「だってほんとだもん。
目がね……昔よりずっと“前”を見てる」
遼は照れくさくて顔をそむける。
ほのかはその反応を見て、
ふっと笑った。
ほのか「……遼。
無理しないでね」
遼「……」
ほのか「頑張るのはいいけど……
遼は昔から、頑張りすぎるから。
私、そういう遼を見ると……ちょっと苦しくなる」
遼「……なんで苦しくなるんだよ」
ほのかは少しだけ目を伏せて言う。
ほのか「……だって、遼のこと……
ずっと見てきたから」
遼は言葉を失う。
距離はたった数センチ。
でも――
その距離が、今までで一番近く感じた。
ほのか「ねぇ遼……覚えてる?」
遼「何をだよ」
ほのか「小学校の頃さ。
遼が毎朝、私の家の前で待ってたこと」
遼「……あぁ。
あったな、そんなの」
ほのかはくすっと笑う。
ほのか「遼ってさ、私が家から出るまで絶対に動かないんだよ。
“早くしろよ”って言いながら、
結局ずっと待ってるの」
遼「……お前が遅いんだよ」
ほのか「はいはい。
でもね……あれ、私すごく嬉しかったんだよ」
遼は少しだけ顔をそむける。
(……そんなこと、言われたの初めてだ)
ほのか「中学の時もさ。
私、部活で帰りが遅くなった日があって……
真っ暗な校門の前で遼が立ってたことあったよね」
遼「……あぁ。
なんか心配で」
ほのか「そう。
“心配で”って言ってくれたんだよね」
ほのかはその時のことを思い出すように、
少しだけ遠くを見る。
ほのか「私、あの日……
すごく怖いことがあってさ。
でも遼がいてくれたから、泣かなかったんだよ」
遼「……そうだったのか」
ほのか「遼は覚えてないかもしれないけど……
私、あの時からずっと思ってることがあるんだ」
遼「……何だよ」
ほのかは遼の方へ、
ほんの少しだけ身体を寄せた。
ほのか「遼ってね……
私が困ってる時、絶対に気づくんだよ。
何も言わなくても、来てくれる」
遼「……そんなことねぇよ」
ほのか「あるよ。
だって、昔からずっとそうだったもん」
遼は言葉を失う。
ほのかは続ける。
ほのか「だからね……
遼が養成所で頑張ってるって聞いた時、
嬉しかったんだよ」
遼「……嬉しい?」
ほのか「うん。
遼が“自分の道”を見つけたんだって思ったから」
遼は胸が少し熱くなる。
ほのかは遼の横顔を見つめながら、
少し照れたように笑った。
ほのか「……でもね。
遼が頑張りすぎて倒れたら嫌だから……
ちゃんと連絡してよ」
遼「……分かったよ」
ほのか「約束ね」
遼「……あぁ」
ほのかは満足そうに微笑む。
その笑顔は、
遼が昔から守りたかった笑顔だった。
ラブコメ♡




