遼の帰る場所
夕方の公園
玄関を開けると、
母の「おかえり」の声が響く。
母「遼、試験終わったんだって?
頑張ったねぇ」
遼「……まぁ、なんとか」
母は嬉しそうに話しかけてくるが、
遼はどこか落ち着かない。
家の匂い。
静けさ。
変わらない家具。
(……なんか、居心地悪いな)
養成所の“緊張した空気”に慣れすぎて、
家の穏やかさが逆に落ち着かない。
遼は荷物を置き、
そっと外へ出た。
夕方の公園。
遼は家の居心地の悪さから逃げるように、
近所の公園のベンチに座っていた。
(……なんか落ち着かねぇな)
養成所の緊張した空気に慣れすぎて、
家の静けさが逆に息苦しい。
風が少し吹いたその時――
背後から、
聞き慣れた声が飛んできた。
遼「……え?」
振り返ると、
そこに立っていたのは 藤沢ほのか。
ほのかは息を弾ませ、
頬を少し膨らませていた。
そして――
開口一番。
遼「……は?」
ほのかは腕を組んで、
ぷいっと顔をそむける。
ほのか「試験終わったんでしょ?
帰ってきてるなら言いなさいよ……!」
遼「いや……別に言うほどのことでも……」
ほのか「あるよ!!」
遼「……」
ほのかは続ける。
ほのか「だって……
遼が帰ってきてるなら、
“おかえり”って言いたかったし……」
遼は少しだけ目を伏せた。
(……ほのかは昔からこうだ。
俺が言わなくても気持ちを察してくる)
ほのか「それにね……
遼、最近全然連絡くれないじゃん」
遼「養成所忙しいし……」
ほのか「忙しくても“ひと言”くらいできるでしょ!」
遼「……まぁ、そうだけど」
ほのかはじっと遼を見る。
ほのか「……遼。
私、心配してたんだよ」
遼「……心配?」
ほのか「当たり前でしょ。
遼が深夜に練習してた時だって……
無免許で走ってた時だって……
私、ずっと気にしてたんだから」
遼は言葉を失う。
ほのかは少しだけ声を落とした。
ほのか「……遼が頑張ってるの、知ってるよ。
でもね……
遼は昔から“頑張りすぎる”から……
放っておけないの」
遼「……」
ほのか「だから……
連絡くらいしてよ。
遼がどこで何してるか分からないと……
私、落ち着かないんだよ」
遼は胸が少し熱くなる。
(……ほのか。
やっぱり……俺のこと見てくれてるんだな)
遼「……悪かったよ。
連絡しなくて」
ほのかはふっと笑った。
ほのか「うん。
それでいいの」
遼「……怒ってんのか?」
ほのか「怒ってるよ。
でも……会えて嬉しい」
遼は顔が熱くなるのを感じた。
ほのか「遼。
また養成所戻るんでしょ?」
遼「あぁ」
ほのかは少しだけ寂しそうに笑った。
ほのか「……頑張ってね。
遼のこと、応援してるから」
遼はその言葉を聞いて、
胸の奥がじんわり温かくなる。
(……ほのか。
やっぱり……俺の帰る場所なんだな)
風が静かに吹いた。
じんわり温かくなる




