まどかの目標
窓の外を流れる景色
中間試験を終えた翌日。
まどかは小さなキャリーケースを引きながら、
長崎行きの飛行機に乗った。
窓の外を流れる景色を見ながら、
胸の奥が少しだけ軽くなる。
(……帰るの、久しぶり……
お父さん、元気かな……)
養成所では毎日緊張で手が震え、
走行試験ではギリギリ合格。
まどかは自分に自信が持てずにいた。
玄関を開けると、
母が笑顔で迎えてくれた。
母「まどか、おかえり。
試験、頑張ったんだってね」
まどか「……うん。
ギリギリだったけど……なんとか」
母はまどかの手を握る。
母「ギリギリでも合格は合格。
まどかは、ちゃんと前に進んでるよ」
その言葉に、まどかの胸が少し温かくなる。
父は現役のボートレーサー。
まどかが小さい頃から、
家族でよく大村のレース場に行っていた。
まどかは母と一緒にスタンドへ向かう。
風の匂い。
水面のきらめき。
エンジン音。
(……懐かしい……)
父の名前がアナウンスされる。
「6号艇、桐生健吾選手!」
まどかの胸がぎゅっとなる。
スタート展示が終わり、
本番レースが始まる。
父は6号艇。
外枠で不利な位置。
まどか(……お父さん……大丈夫かな……)
スタート――
父は一瞬遅れた。
観客がざわつく。
まどか「……!」
しかし父は焦らない。
水面を読むように、
丁寧にターンを重ねていく。
まどか(……落ち着いてる……
いつもみたいに……)
2周目。
父はじわじわと順位を上げていく。
まどかは息を呑む。
(……すごい……
お父さん……怖くないの……?)
母が静かに言う。
母「健吾はね……
怖いからこそ丁寧に走るのよ」
まどかはその言葉にハッとする。
(……怖いからこそ……丁寧に……
私と同じ……)
最終ターン。
父は外から鋭く差し込み、
3着に食い込んだ。
スタンドが沸く。
まどかは涙をこぼした。
自宅帰りの中。
まどかは窓の外の海を見ながら思う。
まどか
「負けてられないな…」
まどかの目は、
休暇前よりずっと強くなっていた。
水面のきらめき




