17秒
切れっ!
曇り空のコース。
榊教官が候補生たちを前に立つ。
榊「基礎走行試験は 6周回。
最終周回――を 17秒未満 にできなければ不合格だ」
空気が一気に張り詰める。
高梨がニヤッと笑う。
高梨「遼、17秒切れなかったら終わりだぞ?」
颯斗は淡々と準備しながら言う。
颯斗「……別に。
俺は落ちない」
遼は風見の工具袋を握りしめ、
静かに言った。
遼「俺も落ちねぇよ」
榊が旗を上げる。
スタート展示の大時計がスタートを示したー
榊「――行け」
高梨が飛び出す。
高梨「遼!ついて来いよ!」
颯斗は無駄のない加速で高梨の後ろにつく。
颯斗「……雑だな、高梨」
遼は落ち着いて走る。
(……焦るな。
上がりが勝負だ)
高梨が攻めの倒し込みでコーナーに入る。
高梨「遼!ここで差をつける!」
遼は風見の言葉を思い出す。
“怖さを知ってるやつは強い”
遼は高梨のラインに食らいつく。
高梨「……マジかよ!」
榊の目が光る。
榊「相馬……
怖さを知ってる走りだ」
颯斗は少し前を走りながら、
二人を見て呟く。
颯斗「……努力型が本気出すと面倒だな」
榊「ここからが本番だ。
最終周回を17秒未満にできなければ不合格だぞ」
高梨がアクセルを開ける。
高梨「遼!ここで勝負だ!」
颯斗は滑らかに加速し、
二人の前へ出る。
颯斗「……邪魔だよ」
遼は風を感じた。
アクセルをほんの少しだけ開ける。
身体が自然に倒し込みへ入る。
ひかりが息を呑む。
ひかり「……遼、速い」
高梨「……っ!?
遼……お前……!」
榊の目が鋭くなる。
榊「相馬……
覚醒したな」
榊「……神谷、上がり 15.7秒」
颯斗は淡々とヘルメットを外す。
颯斗「当然です」
榊「高梨、上がり 16.4秒」
高梨はニッと笑う。
高梨「よし……!」
榊は最後に遼を見る。
遼は息を呑む。
榊「相馬……
上がり 16.5秒」
遼「……っ!」
ひかりが小さく笑う。
ひかり「……遼、やったね」
高梨は悔しそうに笑う。
高梨「お前……本当に速くなったな」
颯斗は遼を見て、
初めて少しだけ笑った。
颯斗「……生意気な努力型だな。
でも……悪くない」
遼は空を見上げた。
風が、少しだけ吹いた。
覚醒




