ありがとう
見てるか?
発作。
風見「くっここでか…」
いつもよりも全然苦しくない
いける…
実際たいしたことない発作だった
視界がほんの一瞬だけ揺れる。
呼吸が乱れる。
心臓が暴れる。
でも――
俺は止まらない。
(倒し込み……行ける)
少し滑る
でも立て直せる。
身体が勝手に反応する。
ハンドルを戻し、
荷重を移し、
バイクを起こす。
(よし……戻った)
その瞬間――
前のバイクが大きく揺れた。
(……え?)
前走者がラインを外し、
リアが滑っている。
前方のバイクが火花を打ち上げながら転倒
距離が近い。
避けるスペースがない。
発作で遅れた“半拍”が、
そのまま致命的な距離になった。
前方のバイクと接触―
体が飛ばされる
世界が静かになる。
エンジン音も、
タイヤの悲鳴も、
観客の声も、
全部消える。
ただ、
自分の身体が浮く感覚だけがある。
(……ああ……)
空が曇っている。
灰色の雲がゆっくり流れている。
その下で、
俺は宙にいる。
(……遼……)
昨日、
「見てろよ」
と言った。
あいつは見てる。
俺の走りを。
俺の生き方を。
(……風……掴めたな……)
胸の痛みはもう感じない。
身体の感覚も薄れていく。
ただ――
風だけが、
最後まで俺の周りにあった。
(……遼……
ありがとう)
そして世界は、
灰色のまま静かに途切れた。
世界




