曇天
薄暗い
遼は目覚ましより少し早く目を覚ました。
布団から起き上がり、ぼんやりと窓の外を見る。
外は薄い灰色の空。
雲が低く垂れ込めていて、太陽はまだ姿を見せていない。
遼「……曇りか……」
曇り空は嫌いじゃない。
静かで、落ち着いていて、
どこか“戦いの前”みたいな空気がある。
(……風見さん、もう行ってるんだよな)
昨日の夜、風見は言っていた。
風見「大会当日は早めに行く。
ピットの準備もあるし、身体も慣らしたい」
遼「じゃあ俺は後から行くわ」
風見「おう。
遼が来る頃には、ZX-6Rも準備万端だ」
その言葉を思い出しながら、
遼はゆっくりと服を着替えた。
玄関を出ると、
曇り空の下、空気がひんやりしていた。
遼「……今日、風見さん走るんだよな」
胸の奥が少しだけざわつく。
風見は病気を抱えている。
倒れたばかりだ。
それでも大会に出ると言った。
(……ほんとに走るんだよな)
遼は歩きながら、
風見の“走る目”を思い出していた。
あの目は、
病気とか不安とか全部吹き飛ばして、
ただ“走りたい”だけを見ている目だった。
遼「……絶対見届ける」
遼は小さくつぶやいた。
筑波サーキットへ向かう電車。
遼は窓の外を見ながら、
静かに揺れる車内で風見のことを考えていた。
(……風見さん、もうピットで準備してるんだろうな)
タイヤウォーマーを巻いて
サスの最終チェックをして
レーシングスーツを着て
呼吸を整えて
走る準備をしている
遼はその姿を想像して、
胸が熱くなる。
(……俺が整備したZX-6Rで走るんだよな)
曇り空は、
まるで今日の緊張を吸い込んでいるようだった。
駅を降りて、
サーキットへ向かう道を歩く。
遠くから聞こえるエンジン音。
まだウォームアップ走行の時間だ。
遼「……風見さん、いるな」
曇り空の下、
筑波サーキットの空気はいつもより重く、
でもどこか熱かった。
遼は胸の奥で静かに思った。
(……風見さん。
今日、絶対に風を掴んでくれ)
そして遼は歩き出した。
風見のいるピットへ向かって。
興奮と緊張




