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風を追う — オートレーサーを目指す少年  作者: sasaki


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遼は初めて“本物の整備”に触れる

心配

来月のサーキット大会に出る――

その言葉を聞いてから、遼は毎日 MOTO GARAGE に通った。


風見はもう倒れた時の弱々しさはなく、

レーシングスーツを着る日のような“走る目”をしていた。


そしてその日から、

ZX-6Rは 大会仕様へのアップデート が始まった。


風見「遼。大会はタイムアタックだ。

 タイヤは命だぞ」


遼「これ……いつものと違うのか?」


風見「違う。

 これはハイグリップ。

 温まれば“地面に吸い付く”」


遼「吸い付くって……怖ぇよ」


風見「怖いくらいが丁度いいんだよ」


遼は初めて“本気のタイヤ”を触った。

ゴムの硬さ、溝の浅さ、表面の粘り――

全部が“走るための道具”だった。


風見「遼、トルク管理は絶対ミスるなよ。

 大会仕様は1ミスで死ぬ」


遼「……わかってる」


遼の手は震えていたが、

風見はその震えを見てニヤッと笑った。


風見「震えてるのは悪くねぇ。

 それだけ本気ってことだ」


風見「速く走るために必要なのは“止まる力”だ」


遼「止まる力……?」


風見「そうだ。

 ブレーキが弱いと攻められねぇ。

 攻められなきゃタイムは出ねぇ」


遼はキャリパーを外し、

ブレーキパッドの残量を確認し、

ピストンの動きをチェックした。


風見「大会は1周ごとに勝負が決まる。

 ブレーキが甘いと死ぬぞ」


遼「……風見さん、死ぬとか言うなよ」


風見「大会前はいつも言うんだよ。

 “死ぬ気で走る”ってな」


遼「……ほんとに走りたいんだな」


風見「当たり前だろ」


風見「遼。

 ZX-6Rは“足”で走るバイクだ」


遼「足……?」


風見「サスの硬さで全部変わる。

 倒し込み、立ち上がり、ブレーキング……

 全部だ」


遼はダイヤルを回しながら、

風見の説明を必死に頭に入れた。


風見「大会は路面温度も高い。

 だから少し硬めにする」


遼「こんな細かい調整で変わるのかよ」


風見「変わるどころか“別のバイク”になるぞ」


遼はその言葉にゾクッとした。


風見「大会は加速勝負だ。

 スプロケ変えてショートにする」


遼「ショートって……?」


風見「簡単に言うと“加速寄り”。

 最高速より、立ち上がりを強くする」


遼「風見さんの走りって……

 立ち上がり速いもんな」


風見「お、分かってきたじゃねぇか」


遼はチェーンを張りながら、

風見の走りを思い出していた。


(……あの倒し込みからの立ち上がり……

 あれがもっと速くなるのか……)


風見「大会はエンジンが熱を持つ。

 冷却系は絶対に万全にしろ」


遼「ラジエーター液ってこんなに重要なんだな」


風見「重要どころか“命”だ。

 オーバーヒートしたら終わりだぞ」


遼「……風見さん、ほんとに出るんだな」


風見「出るよ。

 遼が整備してくれたZX-6Rでな」


遼「……俺が整備したって言うなよ。

 プレッシャーで死ぬ」


風見は笑った。


風見「プレッシャーは走りの友達だぞ」


遼「友達いらねぇよ」


遼は毎日汗だくになりながら、

風見と一緒にZX-6Rを仕上げた。


風見は最後にバイクを見て、

静かに言った。


風見「……遼。

 これで戦える」


遼「……風見さん」


風見「大会当日、見に来いよ。

 お前が整備したバイクで走るからな」


遼の胸が熱くなる。


遼(心の中)

(……風見さん……絶対勝ってくれ……)

熱帯びる

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