― 走りたいなら、まずはバイクを理解しろ―
サーキット
遼がバイク屋 GARAGE に行くと、
いつもと違う光景があった。
店の奥で、風見が レーシングスーツ を着ていた。
黒と青のツートン。
肩と肘にプロテクター。
普段の飄々とした雰囲気とは違い、
“走る男”の顔になっていた。
そしてその横には――
Kawasaki ZX-6R
サーキット仕様のミドルSSが、静かに佇んでいた。
遼「……風見さん、それ……」
風見「今日の相棒だ。
ZX-6R。サーキット専用機だ」
遼「……MT-09じゃないんだ?」
風見「本気で走る日はこっちだ。排気量が高い方がイイと思っている奴は素人だ!
ミドルの方がコントロールしやすいし、“走りの基礎”を見せるには最適なんだよ」
風見はヘルメットを二つ持って、遼に言った。
風見「遼。
今日は“走りの授業”だ。
サーキット行くぞ」
遼の胸が一気に熱くなる。
遼「……行く」
風見はニッと笑った。
風見「よし、乗れ。
今日はお前に“本物”を見せる」
ZX-6Rのエンジンがかかる。
キュルル……バァァァァン!!
遼「っ……!!
MT-09とは違う……
なんか……鋭い……!」
風見「こいつは獣じゃねぇ。
“刃物”だ。
切るように走るバイクだぞ」
遼「刃物って……怖ぇよ」
風見「怖いくらいが丁度いいんだよ。
しっかり掴まれ」
高速に入ると、
ZX-6Rは一気に加速した。
MT-09の暴力的なトルクとは違い、
鋭く、滑らかで、
“線”のように伸びる加速。
遼(心の中)
(……これが……SSの加速……
身体が空気に押しつぶされそうだ……)
風見が選んだのは、
プロも練習に使う本格的な筑波サーキット。
エンジン音が響き、
レーサーたちが走っている。
遼「……すげぇ……
オートとは違うけど……
これも“走り”だ……」
風見「そうだ。
ここは純粋に“速さ”だけを追う場所だ」
風見はZX-6Rをピットに入り、ヘルメットをかぶった。
レーシングスーツを着た風見は、
普段の軽い雰囲気とは別人だった。
遼「……風見さん、なんか怖ぇよ」
風見「走る前は誰でもこうなる。
集中すると“戦う顔”になるんだよ」
遼「戦う顔……」
風見「遼。
よく見てろ。
これが“風を掴む走り”だ」
ドォォォォン!!
スタートした瞬間、
遼は息を呑んだ。
遼「……速っ……!!」
風見はコーナーに入ると、
信じられない角度で倒し込む。
タイヤが悲鳴を上げる。
火花が散る。
それでも倒れない。
遼「……なんだよこれ……
人間がこんな走りできんのかよ……!」
ストレートでは一気に加速し、
次のコーナーでは流れるように曲がる。
遼の心臓はずっとバクバクしていた。
遼(心の中)
(……これが……風見さんの走り……
オートとは違うけど……
“走りたい”って気持ちがまた強くなる……)
風見はヘルメットを外し、
汗を拭きながら遼に言った。
風見「どうだ遼。
これが俺の走りだ」
遼「……すげぇ……
マジで……すげぇ……
言葉出ねぇ……」
風見「言葉いらねぇよ。
その顔が答えだ」
遼「……俺も……
走りたい……!」
風見はニッと笑った。
風見「よし。
じゃあ遼。
次は“お前が走る番”だ」
遼の胸が熱くなる。
遼(心の中)
(……俺、本当に走るんだ……
ここから始まるんだ……)
Kawasaki




