もつ煮
胃袋
チェッカーが振られた瞬間
レースが終わり、
観客席から拍手が起きる。
遼はまだ立ち上がれなかった。
興奮で足が震えていた。
遼「……風見さん……
俺……」
風見「言えよ」
遼「……俺も……
あそこで走りたい……!!」
風見はニッと笑った。
風見「よし。
じゃあ遼。
“走り方”教えてやるよ」
遼の人生は、
この瞬間に決まった。
5レースを見終わったあと。
遼はまだ胸がドクドクしていた。
遼「……やべぇ……まだ心臓バクバクしてる……」
風見は腕を組んで、
遼の興奮を見てニヤッとした。
風見「よし遼。
お前、ちょっと飯食ってこい」
遼「……飯?」
風見「俺はちょっと電話してくる。
お前はひとりで“オート場メシ”デビューしてこい。
レース見た後の飯は格別だからな」
遼「……ひとりで?」
風見「ひとりで食うから味が分かるんだよ。
風を掴んだ直後の胃袋は正直だからな」
遼「……またその口癖かよ」
風見「一生言うぞ」
遼は苦笑しながら、
スタンド下のフードコーナーへ向かった。
階段を降りた瞬間、
遼の鼻を刺激する香りが広がった。
看板には「小原屋」と書いてあった。
甘辛いタレの焼きそば
出汁の香りが強いもつ煮
揚げたての唐揚げ
カレーのスパイス
フランクフルトの焼ける匂い
遼「……うわ……めっちゃ腹減る……」
レースの興奮で胃が動き出していた。
遼「すみません、もつ煮と焼きそばください」
店のお姉さんが笑顔で言う。
店員「はいよー! レース見た後はこれが一番だよ!」
遼「……そうなんすか」
店員「そうよ。
みんな興奮して腹減ってるからねぇ」
遼は受け取ったトレーを持って、
空いているテーブルに座った。
まずは、もつ煮。
遼「……うまっ……!」
柔らかいもつ。
濃いめの味噌。
生姜の香り。
レース場のざわめきと混ざって、
妙に沁みる。
次に焼きそば。
遼「……これも……やべぇ……」
甘辛いソースが濃厚で、
レースの熱気と相性が良すぎる。
遼(心の中)
(なんだよこれ……
普通の焼きそばよりうまく感じる……
レース見た後だからか……?
いや……本当にうまい……)
遼(心の中)
(……俺、今日……
本当に“走りたい”って思ったんだな)
(あのスタート……あの倒し込み……
全部……全部忘れられねぇ……)
(俺も……あそこで走りたい……)
もつ煮を口に運びながら、
遼の胸はまだ熱かった。
食べすぎ




